各国の電力概要

マレーシア(2023)

2023-05-31

主要指標

首 都クアラルンプール
面 積33万0,621km2
人 口3,394万人(2022年推定)
G D P3,727億米ドル(2022年)
企業形態民営(TNB、SESB、SEB)
発電設備容量3,612万kW(2020年)
発電電力量1,658億kWh(2021年)
販売電力量1,440億kWh(2020年)
電 化 率100%(マレー半島推定)

 

 

電気事業の企業形態

 以下の3事業者が地域ごとに発電(一部)、送配電、小売を担当。
 - マレー半島全域:Tenaga National Bhd. (TNB)
 - サバ州(ボルネオ島東部):Sabah Electricity Sdn. Bhd. (SESB)
 - サラワク州(ボルネオ島西部):Sarawak Energy Bhd. (SEB)

電力需給

発電設備(2020年)

 TNBSESBSEBIPPその他合 計
水 力255.78.3345.82.07.2619.0
天然ガス223.011.258.41,005.3142.51,440.3
石 炭0.00.0110.41,218.00.01,328.4
石 油0.022.19.86.419.457.7
バイオマス0.00.00.00.044.144.1
太陽光0.02.30.00.097.399.6
バイオガス0.00.00.00.014.614.6
その他0.00.00.00.08.48.4
合 計478.743.9524.32,231.7333.53,612.1

単位:万kW

 

 

発電電力量 (2021年)

発電電力量
(億kWh)
(%)
石炭ガス水力再エネその他
1,658.5356241640.1

 

 

販売電力量 (2020年)

販売電力量
(億kWh)
(%)
家庭商業工業その他
1,439.9224.028.245.02.8

 

 

国際電力取引

  •  TNBはEGAT(タイ)と電力取引を実施。SEBはPLN(インドネシア)に9億7,273万kWhを輸出(2021年)。
  • ラオスの発電電力を、タイおよびマレーシアを通してシンガポールに売電するLTMS-PIP構想が進められており、2018年から先行してラオスからマレーシアへの電力取引を実施。2022年6月には、シンガポールとラオス間でシンガポールに10万kWの水力発電電力を輸入する協定が結ばれた。TNBはラオス電力公社(EDL)およびタイ発電公社(EGAT)と託送契約を締結し、EDLから託送料金の支払いを受ける。
  • 2023年1月、シンガポールYTL PowerSeraya社と、TNBの完全子会社TNB Power Generation(TNB Genco)は、マレーシアからシンガポールに10万kWの電力を輸出することを合意したと共同発表。これまでは緊急時の融通に限られていたため、商業ベースとしての輸出は初となる。

 

電源開発

マレー半島部の電源開発計画

  •  2021年3月、エネルギー委員会(EC)がマレー半島部の電源開発計画(2021~2039年)を発表。ただし、「2050年カーボンニュートラル」宣言(後述)前に公表された計画であり、石炭火力発電所の新設等を含む。
  • 同電源開発計画では、2025年に国内発電設備容量の再エネ比率を31%とする目標を掲げており、国家開発の5カ年計画(2021~2025年)である「12th Malaysia Plan」でも同じ目標が掲げられている。
  • 国全体の目標達成には、マレー半島部の再エネ比率を26%とする必要がある。これには、既存設備を含めた再エネ発電設備容量が計853万1,000kW必要である。そのため、2021年以降に117万8,000kWの新規再エネ設備導入が必要としており、内訳を太陽光109万8,000kW、太陽光以外8万kWと計画している。

 

マレーシア国全体のエネルギーミックス目標

2021年に持続可能エネルギー庁SEDA(Sustainable Energy Development Authority Malaysia)が公表した「Malaysia Renewable Energy Roadmap(MyRER)」において、NDC目標達成および電力部門のさらなる脱炭素化を目的とし、電源容量における再エネ割合を2025年に31%、2035年に40%とするシナリオが示されている。

TNBのエネルギーミックス目標

  •  企業として目標に掲げている2050年までのネットゼロ達成に向け、国外資産も含めた電源容量における再エネ割合を2035年までに66%とする目標を掲げている(2022年時点8.7%)。
  • 石炭火力については、2035年までに2020年時点の容量7,680MWから半減させ、2050年までに脱石炭とする計画。

 

 

電気事業再編動向

  •  1992年にTNB、1998年にSESB、2005年にSEB(当時はSESCO。2012年に名称変更)が民営化。
  • 政府はマレー半島部の電力市場自由化を1990年代後半に検討したが、米国での電力危機などを受け、2001年に自由化を中止。
  • 2010年頃から再び電力制度改革の検討を開始し、2014年にはTNB内部で会計分離されたシングルバイヤー部門の本格運用が開始され、同時に系統部門も会計分離されGrid System Operator (GSO)の運用が本格開始。
  • この一連の動きをMESI(電力分野制度改革計画)1.0とし、2019年には燃料供給市場の自由化や小売り全面自由化を含めたMESI2.0が開始。この動きを受け、TNBは発電子会社(GenCo)と小売子会社(RetailCo)の分社化を進め、2020年10月にGenCoが正式に分社化。
  • 2022年8月、連邦エネルギー委員会(EC)によって規制されているサバ州の電力供給について、規制権限をサバ州が連邦政府から引き継ぐ計画が開始。州政府によりサバエネルギー委員会(SEC)の設立とサバ電力公社(SESB)の買収を行い、2024年1月から権限が移管予定。

環境問題への取組み等

カーボンニュートラル、脱炭素・低炭素化

  •  2021年9月27日に発表された5ヶ年国家経済開発計画「12th Malaysia Plan」(2021~2025年)で2050年までのカーボンニュートラルの実現を宣言。今後は石炭火力発電所を新設しないことも発表。
  • 国内ではTNBが2021年8月26日付のプレスリリースで2050年までのネットゼロを目標とすることを表明したほか、国営石油会社ペトロナスも2020年10月に2050年までのカーボンニュートラルを宣言している。
  • 2016年に国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局にINDCを提出し、同年パリ協定を批准(INDC→NDC)した。2030年のGHG排出原単位を、2005年比35%削減(先進国など国際支援がある場合45%削減)としていたが、2021年7月に提出されたNDC改定版では、無条件で45%削減に目標が引き上げられた。

 

再エネ導入

  •  12th Malaysia Planでは、2025年に国全体の電源構成における再エネ比率を31%まで高めることや、太陽光や水力等の既存再エネ発電に加え、水素など新規技術の導入も積極的に検討することが謳われている。
  • 国内の再エネ設備容量は2015年の605万9,000kWから、2020年に799万5,000kWに増加し、再エネ比率(水力含む)は22.4%まで増加した。一方で、目標としていた888万5,000kWは下回った。
  • 2011年には再生可能エネルギー法(再エネ法)を制定。実務関係を一元的に担う持続可能エネルギー庁SEDA(Sustainable Energy Development Authority Malaysia)が同時に設立され、エネルギー天然資源省(KeTSA)※の下に置かれた。
    ※現:天然資源・環境・気候変動省(NRECC)
  • 同じく2011年から太陽光、小水力、バイオマス、廃棄物発電所を対象とした固定価格買取制度(FIT)が開始されており、2022年8月開始の入札では11万1,407kWが割り当てられた(バイオガス、バイオマス、小水力)。2023年も7月に18万kWの割り当てで入札開始予定。
  • 加えて、2021年までに計4回の大規模太陽光発電プログラム(LSS: Large Scale Solar)の入札制度、計3回のネットエネルギーメータリング(NEM:Net Energy Metering)制度が実施されている。第4回LSSでは入札の結果8,230.6万kWが、第3回NEM(NEM3.0:2021~2023年)では80万kWが割り当てられている。
  • 2021年12月、SEDAが「Malaysia Renewable Energy Roadmap(MyRER)」を公表。NDC目標達成および電力部門のさらなる脱炭素化を目的として、再エネ比率を2025年までに31%、2035年までに40%とするシナリオが示されている。
  • 2022年9月、政府はエネルギー部門における包括的な政策の方向性を示す国家エネルギー政策2022-2040(DTN)を発表。12の戦略と31のアクションプランが示されるとともに、国家低炭素化計画2040としてEVの利用率38%や、B30(軽油にバイオディーゼルを30%混合した燃料)の大型車両での使用、産業・商業用11%および家庭用10%の省エネなどの目標が挙げられている。

 

TNBの財務状況

2022年の財務状況

 前年比6.0%増となった半島マレーシアの電力需要に支えられ好調

  収 益    :    50,867.7百万リンギット
        (約1兆5,459億円、前年比+5.7%)
  EBITDA  :    20,812.0百万リンギット
        (約6,325億円、前年比+10.9%)
  純利益    :    3,557.4百万リンギット 
        (約1,081億円、前年比+8.0%)
※EBITDAマージン(2021年:40.9%、2021年:39.0%)

 

 

電気料金など財務関連の動向

  •  ロシア・ウクライナ紛争による燃料価格の高騰に伴い、発電用燃料価格を電気料金に反映する「インバランス・コスト・パススルー(ICPT)メカニズム」に基づいて2022年7月1日から電気料金が割増しされる予定であったが、政府はTNBに58億リンギットの補助金を提供することで、電気料金を維持した。
  • ICPTメカニズムに基づき、2023年1月1日から6月30日までの間、多国籍企業および中電圧および高電圧で受電する需要家に対して電気料金1kWh当たり20セントの割増料金を課すと政府が2022年12月に発表。自動車部品協会や鉄鋼産業連盟などから懸念や反対が示される。

 

 

※ 2023年5月時点の情報。
※ 数値の一部に四捨五入等を原因とする不突合がある。
※ 供給体制図はあくまで大まかな様子を表すもので、細部まで正確ではない場合がある。