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2023 年度

海外電力調査会が収集した世界各地の電気事業情報を、エリア別、項目別にフィルタリングできます。各年度毎の表示となります。

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2023年度

2024.02.07
デンマーク:Ørstedが洋上風力のポートフォリオ見直しを発表
デンマークの再生可能エネルギー開発事業者Ørstedは2024年2月7日、アナリスト/メディア向け戦略説明会「Capital Markets Day」で発表された事業計画において、洋上風力のポートフォリオ見直しを示した。Ørstedの洋上風力事業は、インフレ、金利上昇、サプライチェーンの混乱による厳しい事業環境を受け、2023年に米国の洋上風力事業で大幅な減損を計上しており、これらを踏まえてプロジェクトの精査を行い、2030年の発電設備容量を従来の50GWから35~38GWに引下げている。また、米国の洋上風力開発の北東大西洋への集中、ノルウェー、スペイン、ポルトガルを含む一部地域からの撤退、日本での開発の優先順位の引下げ、浮体式洋上風力とP2X(電力を他のエネルギーに変換)計画のスリム化についても示した。さらに、2023年から2025年までの配当支払いを一時停止し、2026年までに全世界で約600~800人の人員削減を行うとしている。Ørstedは、プロジェクト実施において、緊急時対応計画、サプライヤーの監視、インフレ対策、最終投資決定前の精査、プロジェクトスケジュールの柔軟性向上などに注力し、プロジェクトリスクの低減をはかるとしている。
2024.02.06
英国:政府統計、1990~2022年に経済成長を維持しながらGHG50%削減
エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2024年2月6日、英国の温室効果ガス(GHG)の排出削減状況に関する2022年の統計資料を発表した。これによると、英国は1990年から2022年にかけ、経済成長率79%を達成しながらGHG排出量を50%削減した。石炭火力の減少と再エネの増加が主な要因としている。DESNZは、この排出削減のペースは先進国(G7)の中で最も早く、国内法で定める目標値を大きく上回っていることから、(2023年9月のスナク首相の発表の通り)国民負担を軽減する、より現実的な政策を執りながら今後も排出削減していくことが可能であるとした。なお、英国ではGHGの排出削減目標として5年間ごとに排出量の上限枠を設ける「カーボン・バジェット」を導入しており、今回の発表で2018~2022年の排出枠(目安として2020年までに1990年比37%削減する目標)が達成されたことが示された。2008~2012年と2013~2017年に続く3期連続達成となる。次の期間である2023~2027年では、2025年までに同51%減を目安とした設定となっており、2022年時点でこれに近い削減状況となった。その後は2030年までに同57%減、2035年までに同78%減という設定になっている。
2024.02.05
ドイツ:調整電源の新設支援に向けた「発電所戦略」の概要が発表
連邦経済・気候保護省(BMWK)は2024年2月5日、電力システムの脱炭素化と安定供給を実現するための「発電所戦略」の概要を発表した。太陽光・風力などの出力変動に応じて出力を柔軟に調整できる電源を確保するため、「近日中に」入札を実施する。入札は最大4回実施され、調整電源(ガス火力)を合計1,000万kW調達する。これらの電源は脱炭素化の観点から、2035~2040年の間に水素専焼火力に転換することを義務付けられ、具体的な転換時期は2032年以降に順次決定される。また、これらの電源は電力システムの安定性に寄与する立地に建設される。連邦政府はさらに、2028年以降技術中立的な容量市場の運用を開始するとしており、遅くとも2024年夏までに同市場に関する政治的合意を目指す。入札や容量市場開設に係る費用は150億~200億ユーロと見積もられており、気候変革基金(KTF)より拠出される。このほか、連邦政府はエネルギー研究の枠組みで水素専焼火力50万kWの建設を支援するほか、核融合などの新たな技術開発も支援する方針である。炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)に関しては、「炭素管理戦略」の策定により新たな枠組みを整備するとしている。今般公開された「発電所戦略」の概要は、ショルツ首相(社会民主党)、ハーベック連邦経済・気候保護相(緑の党)、リントナー連邦財務相(自由民主党)が協議の末に合意した内容である。連邦政府はまた、水電解装置による水素製造・貯蔵の際に公租公課などが二重に課金される問題を解消し、水電解装置の建設・運用を促進する方針である。
2024.02.04
ニュージーランド:政府、需給ひっ迫の頻発可能性を懸念
2024年2月4日付報道によると、ニュージーランドのビジネス・イノベーション・雇用省は会見で、同国で冬季(6~8月)に電力需給の逼迫が頻発する可能性を示唆した。2030年までにエネルギー消費量に占める再エネ比率を100%にする目標に掲げ、風力や太陽光など間欠性電源の導入と電化を推進している同国では、冬の気温が低い朝方と夕方にピーク需要が高まっている。同省によると、需給ひっ迫が数分から数時間生じる可能性があるが、風速が低く風力発電できない場合、供給電力量の確保が当面の課題になり、ガス火力発電を継続することがしばらくは重要になるとの認識を示した。
2024.02.01
ドイツ:経済・気候保護省、地域熱供給価格の透明性確保を提唱
2024年2月1日付の報道によると、経済・気候保護省のハーベック大臣は地域熱供給について、より公平で透明性の高い価格設定を行うよう求め、ガスや電気と異なり、現行制度において顧客は事実上、地域熱供給事業者を選定不可能であると述べた。なお連邦カルテル庁は、地域熱供給市場は国内で最後の自然独占市場であると述べているとのこと。ハーベック大臣は、今夏~秋に開催予定の地域熱供給サミットで初期政策を提示する方針だという。なお、ドイツでは一般世帯の約15%と、多くの企業が地域熱供給網に接続している。政府は気候中立達成に向けた更なる拡大を計画しており、年間10万棟の地域熱供給接続を目標としている。
2024.02.01
米国:ボーグル4号機の営業運転開始、2024年第2四半期へ再延期
大手電力サザン社の子会社であるジョージア・パワー社は2024年2月1日、ボーグル原子力発電所4号機(AP1000、110万kW)の営業運転開始を同年第2四半期へ再延期すると公表した。延期は、同社が米国証券取引委員会に提出した臨時報告書(Form 8-K)の中で明らかにしたもので、遅延理由は、冷却システム内の配管で発見された振動問題だが、既に解決されており、2023年7月に運開した同3号機の起動試験中に発生したものと同様の問題であったとしている。また、遅れが新スケジュール内にとどまればプロジェクトの総資本費への影響はないが、2024年4月以降、営業運転開始までの間、州規制当局との取り決めにより同社は毎月約3,000万ドルの収益を逸するとしている。同社は、運開時期が7月以降になると毎月最大1,500万ドルの追加資本費が発生すると述べる一方、同プロジェクトは安全で信頼性が高く、運転中に温室効果ガスを出さないエネルギーを最長80年間提供する健全な長期投資であるとしている。
2024.1.31
米国:MIT、BIG WIRES法の停電減少効果などを分析した報告書を発表
マサチューセッツ工科大学(MIT)は2024年1月31日、オーダー1000(2011年制定)により規定された送電計画地域間でピーク電力負荷の30%以上の地域間送電容量確保を義務付ける「BIG WIRES法」の効果を分析した報告書「Evaluating the Impact of the BIG WIRES Act」を発表した。この分析では、法案が実施された場合、2035年までに約56GWの地域間送電容量が新規に追加され、2035年までに中部大西洋岸、南東部などで気象影響に伴う停電が最大58%減少すると推定している。また、この法案により低コストの再エネ電源の導入が増加することで、米国全土で年間3億3,000万ドルの電力コスト削減が見込まれ、炭素排出量も現状比で5.5%削減されることが予測されている。
2024.1.31
米国:EIA、暗号資産マイニング事業者の電力消費に関する調査の開始を発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2024年1月31日、米国内の暗号資産マイニング事業者を対象に、電力消費に関するデータの収集を実施することを発表した。本調査は、マイニング事業が電力分野に与える影響を分析することを目的としており、事業者は2~7月におけるマイニング施設ごとの電力消費量、マイニングの変動率、電力の発電元などの情報提供が義務付けられるとのこと。EIA長官のJoe DeCarolis氏は、ビットコインの価格の上昇に伴いマイニングの電力消費量が増加していることから、マイニング事業が著しいスピードで電気事業に影響を与える可能性があるとし、緊急調査が必要となったと述べている。なお、これに対しマイニング業界団体らは、本調査は規制権限を踏み越え、マイニング事業者の権利を侵害するおそれがあると反発の声を上げている。
2024.1.30
中国:EV大手BYD、ハンガリーの乗用車工場の用地契約を締結
中国の電気自動車(EV)メーカー最大手の比亜迪(BYD)は2024年1月30日、ハンガリーのセゲド市政府と乗用車工場用地の事前購入契約を締結したと発表した。同社の2023年末の発表では乗用車工場に最先端の生産技術と自動化された生産工程を備える持続可能な「エコシステム」の構築を予定している。また、同生産工場の建設により、地元で数千人の雇用が創出され、地域経済の活性化につながると期待されている。BYDは欧州19カ国に230の販売店を展開し新エネ車販売に力をいれている。欧州で生産拠点を設けることで更なるシェア拡大を目指している。
2024.1.30
スロベニア:首相、新たな原発の是非を問う国民投票を2024年内に実施と発表
スロベニアのゴロブ首相は2024年1月30日、2024年後半にクルスコ第2原子力発電所(最大240万kW)の建設の是非を問う国民投票を実施することですべての政党が同意したと発表した。同首相は、同国のエネルギー自給率と原子力の長期利用についての会議を招集し、大統領、国民議会議長、主要5党の党首などが出席し、同第2発電所に関する立法プロセスを促進する方法を検討することにも同意したという。国民投票を早期に実施する背景には、建設関連費用が100億ユーロとされる第2発電所に関し、2027年か2028年に最終投資決定を行い、2030年代には運開を目指していることがある。同国の電力会社 Gen EnergyのCEOは2023年10月、本プロジェクトにはウェスチングハウス社、EDF、韓国水力原子力発電の3社による入札が検討されているが、いずれも強みがあるため、入札決定は簡単ではないと述べた。
2024.1.29
フィリピン:エネルギー省、原子力エネルギー調整委員会を設置
エネルギー省長官ラファエル・ロティージャ氏は2024年1月29日、エネルギー省(DOE)命令DO2024-01-0001を発行し、2032年までに2,400MWの原子力発電設備の導入を目指して、原子力エネルギー調整委員会を設立した。本委員会はDOE次官が委員長を務め、様々な局の代表者が参加する。同国の原子力政策は第二フェーズに入り、原子力発電所建設の準備に重点を置くこととなる。第一フェーズでは原子力発電の評価、原子力利用に関する国家のスタンス、原子力発電を含めたエネルギー計画の懸念事項について議論が行われた。第三フェーズでは運開に至らなかったバターン発電所以来の原子力発電所が建設されることとなる。
2024.1.29
中国:エネルギー産業を未来産業計画に取り組む方針
工業情報化部、科学技術部など7部門は連名で2024年1月29日、未来産業の革新的発展を推進する方針を発表した。それによると、未来産業として製造、情報、材料、エネルギー、宇宙、健康医療の6つを挙げ、技術イノベーションと産業育成など2025年までに産業基盤の強化を推進し、2027年までに総合的な実力を向上させ、一部の分野では世界をリードすることを目標に定めた。そのために技術開発の強化や代表的な製品の育成、ハイレベルな産業集団の育成と特色ある産業チェーンの構築、技術の応用の拡大、支援政策の最適化などの取り組みを進めるとしている。
2024.1.29
欧州:欧州、2023年のPPA調達容量が40%増加
スイスのコンサルティング企業Pexaparkは2024年1月29日、2023年に欧州で電力購入契約(PPA)によって調達された発電容量が1,620万kWに達し、2022年から40%拡大したことを示す報告書を発表した。また契約件数は272件となり、2022年から65%増加した。供給電源別では太陽光発電が最大となっており、160件の契約によって1,050万kWが調達されている。今回のPPA増加の理由として、電力価格の変動が小さくなること、企業によるエネルギー転換への需要が高まっていることの2つが挙げられている。供給契約容量の51%、840万kWはスペインとドイツに集中しており、スペインの大手電力Iberdrolaの供給契約容量が90万8,000kWに達し、容量面でトップの事業者となった。一方、契約件数ではノルウェー最大の発電事業者Statkraftが19件で最多となっている。また同報告書では2024年は契約件数が350件を超え、調達容量が2,000万kWに達すると予測している。
2024.1.29
米国:デューク・エナジー社、EV充電器の月額リースプログラムを開始
電力大手デューク・エナジー社(本社:ノースカロライナ州シャーロット)は2024年1月29日、ノースカロライナ州の住宅用顧客と企業用顧客向けに、EV充電器を低い月額料金でリースするプログラムを開始した。このリースには、ハードウェア、保証、およびメンテナンスが含まれる。顧客は同プログラムを利用することで、初期導入コストを回避することが可能となる。顧客は契約内容を広い選択肢の中から選ぶことが可能であり、住宅用顧客の契約料金については最も安いもので月額14ドル(3年契約、レベル2充電器:EVを8~10時間でフル充電)。企業用顧客については、直流急速充電器(7年契約)も選択肢に含まれる。なお、同州は2030年までにEVを125万台導入することを含む環境目標を掲げており、同社はその取り組みを支援する。
2024.1.25
中国:排出量取引の管理規則を発表
中国国務院(内閣に相当)は2024年1月25日、炭素排出量取引に関する管理規則の暫定版を発表した。同規則は国内における炭素排出量取引市場の取引に関して、政府の指導のもとで市場規制を順守し透明性・公平性の原則に従うこととしている。温室効果ガス排出抑制目標についての国務院による承認や、有償・無償の排出枠の割り当ては、国の定めた要件にしたがって段階的に実施する。また、地方排出権取引市場所(現在7カ所)は今後新たに開設しないことを規定した。
2024.1.26
フィリピン:需給調整市場の運用を開始
2024年1月26日付報道によると、エネルギー省(DOE)は需給調整市場の運用開始を発表した。需給調整市場では、すべての発電事業者は送電事業者NGCPとアンシラリーサービスの契約を締結しなくても、同サービスの取引が可能になる。需給調整市場は卸売電力スポット市場(WESM)の一部として開設され、NGCPが唯一の買い手となる。需給調整市場の運用により、発電容量と予備力、価格を最適化し、効率的な電力供給が期待されている。
2024.1.26
スイス:電力不足解消、再エネ促進に関する包括法は国民投票で審議へ
2024年1月26日付の報道によると、2023年9月にスイス議会で可決された電力不足解消に向けた包括法案について、フランツ・ヴェーバー財団は反対の署名6万3,488票を提出、6万3,277票が有効と判断され、2024年6月に国民投票が実施されることとなった。同法案は2035年までに少なくとも350億kWh、2050年までに450億kWhの電力を再エネ(水力を除く)で賄うことが規定されているが、陸上風力開発による森林伐採や水力開発における生物保護、アルプスへの太陽光設置における景観保護などの問題が指摘されていた。なお国民投票は、法案可決から100日以内に有権者5万人の署名が集まれば実施されることとなっている。
2024.1.25
中国:電力貯蔵設備が前年度から2.6倍以上増加
国家能源局は2024年1月25日、定例記者会見で、2023年末時点のエネルギー貯蔵設備は2022年と比べ2.6倍以上の3,139万kWに達し、平均エネルギー貯蔵時間は約2.1時間であったことを発表した。貯蔵設備保有のトップ3は山東省(399万kW)、内モンゴル自治区(355万kW)、ウェイグル自治区(310万kW)。新規増設のトップは再エネ資源が豊富な華北地域、西北地域となっている。種類別ではリチウムイオン電池が97%と大部分を占めているが、フライホイール、重力、ナトリウムイオンなど新型技術が実証段階に入り、貯蔵技術が多様な展開を見せている。
2024.1.25
EU:欧州委員会がCCSなどの越境事業へ5億9,400万ユーロ拠出
欧州委員会は2024年1月25日、エネルギーシステムの脱炭素化に資する越境事業に5億9,400万ユーロを拠出したと発表した。資金提供を受けたのは、フランスのCO2輸出ハブD'Artagnan、オランダのCO2輸入基地(CO2NEXT)および貯留地への海底パイプライン(Aramis)、ノルウェーのNorthern Lightsなど5件の炭素回収・貯留(CCS)事業、スマートグリッドなど2件の電力事業ならびに1件のガス貯蔵設備である。今回の資金提供は、国境を超えるエネルギー関連インフラ開発を支援しエネルギー供給の安定化を図る枠組みである欧州横断エネルギーネットワーク(TEN-E)規則に基づくもので、2023年11月28日に指定された166件の事業が支援対象となっている。
2024.1.25
欧州:2023年の洋上風力への投資が過去最高に
欧州の風力発電事業者団体WindEuropeは2024年1月18日、2023年の欧州における新規洋上風力への投資額が過去最高の300億ユーロとなったことを発表した。また、2023年に新規稼働した洋上風力発電所の容量も4.2GWで、2022年との比較で40%増加したと述べている。この投資額は合計容量9GWの8プロジェクトに対するもので、2022年の投資額が過去最低の4億ユーロであったことと比較して大幅に増加した。2023年はオランダ、フランス、英国が新規導入の上位であったが、2024年は40GWの洋上風力入札が計画され、ドイツ、デンマーク、英国、フランス、オランダが、今後2年間の入札実施上位5カ国となる。欧州では今後3年間、年間約5GWの洋上風力発電所が建設される予定となっているが、2030年の目標を達成するためには、2027年から2030年の間に年間24GWの洋上風力発電所を建設する必要があり、現状の開発ペースを大幅に引き上げる必要がある。しかしながら、現在の洋上風力発電のサプライチェーンは、毎年7GW程度の生産能力であるため、サプライチェーンへの大幅な投資が必要であるとしている。加えて上限なしのネガティブ入札の改善の必要性についても指摘している。
2024.1.25
米国:バイデン政権、産業部門の脱炭素化などに2億5,400万ドル拠出
バイデン政権は2024年1月25日、米国の産業部門の脱炭素化と製造業活性化のために合計2億5,400万ドルを拠出すると発表した。この資金は米国エネルギー省(DOE)のTIEReDプログラム(産業部門の脱炭素化促進プログラム)から拠出される。その内訳は、脱炭素化技術開発(21州での合計49プロジェクト)に1億7,100万ドル、産業部門でのGHG削減技術の適用に8,300万ドルとなる。技術開発としては産業用プロセス加熱の脱炭素化(10件2,530万ドル)、低炭素燃料の研究開発(6件2,070万ドル)、材料工学との分野横断的な研究開発(5件1,400万ドル)に加え、以下の産業部門での製造プロセスの脱炭素化を対象としている。産業部門ごとの支援額は、化学(6件3,050万ドル)、鉄鋼(7件3,700万ドル)、食品・飲料(5件1,110万ドル)、セメント・コンクリート(5件2,000万ドル)、紙・パルプ(5件1,200万ドル)。これらを含む産業部門でのGHG削減技術の適用支援について、コンセプトペーパーの提出期限は2024年3月19日、最終的な申請書の提出期限は2024年6月11日となっている。
2024.1.24
米国:IEA、米国の電力需要は2026年まで年率1.5%増加と予測
国際エネルギー機関(IEA)は2024年1月24日、各主要国における2026年までの電力需要などの予測をまとめた報告書「Electricity 2024」を発表した。これによると、米国の電力需要は2024年から2026年にかけて年率1.5%増加する見通しである。電力需要増加の主な要因としてIEAは、製造業の生産増や運輸・建物の電化の拡大を挙げている。また、データセンターによる電力需要の増加が著しく、新規需要分の約3分の1を占めると予想している。電力供給側としては、2024年から2026年にかけ、再エネ発電電力量が毎年約10%増加する見通しを立てている。一方、石炭火力発電電力量は、発電所の閉鎖が相次ぐことで毎年10%近く減少し、2024年に初めて風力と太陽光の発電電力量が石炭火力発電電力量を上回ると予測している。
2024.1.22
中国:北京で中国認証排出削減量(CCER)取引市場再開
中国生態環境部は2024年1月22日、北京グリーン取引所で中国認証排出削減量(CCER:中国政府が認証した自主的な排出削減活動によって生じた排出削減量)の取引市場を再開したことを発表した。2013年スタートしたCCER取引は削減量検証方法論の変更などの制度変更と主管省庁の変更などの要因で2017年3月より認証、発行を停止していた。今回の再開は生態環境部が2023年10月に公表した「温室効果ガス自主的排出削減取引管理暫定弁法」に基づき、2012年11月8日以降に開始されたプロジェクトで改めて評価した削減量が対象となっている。初日の取引には、大手事業者に加え、証券会社、銀行など投資機関が参加し、37万tを超える取引実績を残した。
2024.1.19
米国:バイデン政権、ディアブロキャニオン支援に11億ドル提供を正式決定
バイデン政権は2024年1月19日、ディアブロキャニオン原子力発電所の運転継続を支援するため、運転継続支援(CNC)プログラムに基づく11億ドルの資金提供を正式に決定した。同プログラムは、経済的理由で早期停止の危機にある原子炉と認定されれば、所有者または運営者に対し発電電力量に応じたクレジット(支援金)が4年間にわたり支払われるというもの。同発電所は、2022年11月にCNCの第1ラウンドで選定されており、同資金は2023年から4年間にわたり分割で支払われる予定。資金の配分は、発電所の運用コストなどを考慮して調整される。米国エネルギー省(DOE)送電線開発局(Grid Deployment Office)のマリア・ロビンソン局長は、「国内の原子力発電所を維持することは、米国のクリーンエネルギー目標達成にとって重要であり、各家庭や産業用需要家へ信頼性の高いエネルギー供給を確保する上でも不可欠である」と述べている。
2024.1.18
フランス:2023年の電力輸出量が過去最高を更新
フランスの送電系統運用者RTEは2024年1月18日、フランスの2023年の電力輸出量が749億kWhであったことを発表した。これは2018年の741億kWhを上回り過去最高の記録である。輸入量(245億kWh)と相殺した純輸出量は504億kWhとなり、165億kWhの純輸入量を記録した2022年から純輸出国へと再び転換し、2011年から2021年の純輸出平均量と同じ水準まで回復している。また輸出先の内訳はイタリア(200億kWh)、スイス(164億kWh)、英国(133億kWh)、ベルギー/ドイツ(26億kWh)となっている。一方でスペインとの電力取引では19億kWhの純輸入を記録した。これは、2023年のスペインにおける再エネ発電量の増加や同国で発電用ガス燃料価格の上限規制措置が引き続き実施されていたこと、余剰電力の販売先がフランスに限定されるといったスペイン固有の事情が要因として考えられている。
2024.1.17
インドネシア:2025年までの再エネ割合目標23%を下方修正へ
2024年1月17日付報道によると、国家エネルギー審議会(DEN)は、2025年までの一次エネルギー供給量における再エネ割合の目標を23%から17~19%に下方修正することを計画している。エネルギー鉱物資源省(MEMR)のデータによると、2023年の割合は13%であり、2025年の23%達成に向けた中間目標である17.9%に届かなかった。同省のアリフィン・タスリフ大臣は、その原因として石炭火力発電が主要な電源となっている現在の状況にあるとし、目標の下方修正については「我々は現実的であるべきである。約束は守るつもりであるが、今あるものを利用しつつ、努力しなくてはならない」と述べた。
2024.1.17
中国:国家統計局、石炭生産量が3年連続で過去最高を記録と発表
現地紙は2024年1月17日、2023年の石炭生産量が46.6億tとなり、3年連続で過去最高を記録したと国家統計局が発表したと報じた。それによると、2023年の石炭生産量は2023年比で2.9%増加したほか、輸入炭も同比61.8%の大幅増の4億7,000万tを記録した。2023年の石炭価格は、石炭生産能力の向上と輸入炭の増加によって2022年から下落しており、発電向け石炭価格のスポット価格は1t当たり約970元(約2万円)となった。
2024.1.17
ドイツ・米国:Meyer Burger、欧州最大の太陽光モジュール工場を閉鎖
スイスの太陽電池技術メーカーMeyer Burgerは2024年1月17日、米国での製造拠点拡大に注力するため、ドイツ・フライベルクの太陽光モジュール工場を閉鎖する計画であることを明らかにした。欧州大で公正な競争環境を整備するための施策が導入されない限り、2024年2月に最終的な判断を下し、早ければ同年4月に工場を閉鎖するという。欧州の太陽電池市場は、中国における製造能力の急増や米国・インドにおける中国製品の輸入制限の影響を受け、著しい供給過剰に陥っている。Meyer Burgerは現状、360 MWのモジュール在庫を抱え、2023年通期決算では売上高が1億3,500万CHF(スイスフラン、約224億1,000万円)、EBITDAはマイナス1億2,600万CHF(約209億1,600万円)となる見通し。他方、米国はインフレ抑制法(IRA)による税額控除や安定したコスト基盤により魅力的な市場であり、現在の受注状況から2026年には2億5,000万CHF(約415億円)のEBITDA創出が可能であるとしている。同社は2023年7月、米国コロラド州に太陽電池工場(年間製造能力200万kW)を建設する計画を発表している。
2024.1.17
米国:DOE、サイバーセキュリティに関する技術開発に3,000万ドル拠出
米エネルギー省(DOE)は2024年1月17日、次世代のクリーンエネルギー・インフラのサイバーセキュリティ向上に焦点を当てた研究開発や実証プロジェクトに、3,000万ドルの資金を提供すると発表した。この資金は、DOEのサイバーセキュリティ・エネルギーセキュリティ・緊急対応局(CESER)が管理し、約10のプロジェクトに拠出される予定である。対象となる研究開発プロジェクトは、(1)サイバー攻撃の発生源を迅速に特定するフォレンジック分析能力の向上、(2)風力や太陽光などのインバータ資源(IBR)のサイバー脅威の特定・緩和技術、(3)分散型エネルギー資源(DER)およびそのアグリゲーションの通信セキュリティの強化、(4)仮想発電所(VPP)のクラウドベースでの安全な運用・管理 の計4分野。申請書の提出期限は2024年3月18日で、DOEは8月にプロジェクトの選考を行う予定としている。
2024.1.16
フランス・英国:英仏新興企業、第4世代炉に特化した協力関係の構築を発表
先進モジュール炉(AMR)を開発する英国のNewcleo社とフランスのNaarea社は2024年1月16日、第4世代炉の「産業、技術、科学および規制において、すべての関係者を支援する」ことを目的とした戦略・産業パートナーシップを締結したと発表した。Newcleo社は鉛冷却高速炉(電気出力3万kW)、Naarea社は溶融塩高速炉(同4万kW)をそれぞれ開発中。同パートナーシップは、燃料サイクル、同インフラへの資金調達、研究開発および産業基盤開発の4つを協力分野として定め、欧州委員会が2024年に発足させる予定の小型モジュール炉(SMR)産業アライアンスを補完する準備の一環として位置づけられる。両社は既にフランスのイノベーション促進投資計画「フランス2030」における革新的原子炉プロジェクトの初公募で選定・資金援助を受けており、2030年までにそれぞれが開発する炉の商用化の実現を目指している。
2024.1.16
米国:米国各地で冬季嵐による記録的な電力需要増、テネシー州で節電要請
2024年1月16日付報道によると、冬季嵐による大雪と厳しい寒さによって米国各地で記録的な電力需要が発生している。北西部のオレゴン州では樹木などの影響により1月13日時点で20万軒以上の停電が発生している。また、テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)は16日に冬季の過去最大ピーク需要(7万8,138MW)を記録したことを明らかにした。さらに、南東部のテネシー州を管轄するテネシー渓谷開発公社(TVA)は需給ひっ迫から17日午前6時~午前10時(現地時間)の消費電力を削減するよう需要家に呼びかけた。TVAは午前9時頃に過去最大の冬季ピーク需要(3万3,425MW、2022年12月冬季嵐Elliott時)を約7~8%上回ると予測しており、結果として17日に年間を通して過去最大ピークとなる3万4,526MWを記録した。TVA は冬季嵐Elliott襲来時に輪番停電が発生し多額の損失を計上したが、その後は供給信頼度の向上に向けて電力設備凍結を防ぐ技術(ヒートトレースなど)に1億2,000万ドル以上を投資し、天然ガス火力発電所(150万kW)を新たに追加するなど対応してきた。しかし、同州では経験のないレベルの寒波の襲来により電力需要が高まる恐れがあり、停電を回避するためにも電力系統の負荷を軽減し、ピーク需要を下げる必要があると説明していた。
2024.1.14
台湾:民進党頼清徳氏が次期総統に決定、エネルギー政策は継続
現地紙は2024年1月14日、1月13日の総統選挙で次期総統に民進党頼清徳氏が選出され、現・蔡英文政権のエネルギー政策が踏襲されると報じた。それによると、頼氏は得票率40.1%を獲得し、2位の国民党侯友宜氏に6ポイント以上の差をつけ勝利した。頼氏は選挙中に、就任後に2050年ネットゼロエミッション達成に向けた蔡政権の「第1次エネルギー移行」に続く「第2次エネルギー移行」の実行を表明しており、2030年までに9,000億台湾ドル(約4兆500億円)を投資し、2030年に発電電力量ベースで再エネ30%を目標としている。また地元紙によるとエネルギー政策は蔡政権の脱原子力路線を踏襲するため、2025年半ばまでには唯一稼働している第3(馬鞍山)原子力発電所(PWR、95.1万kW×2基)が停止するほか、既に停止している第1(金山)・第2(国聖)原子力発電所の廃炉プロセスが開始される予定である。
2024.1.11
世界:IEAが再エネ導入状況に関する報告書を公表、2030年に現状の2.5倍に
国際エネルギー機関(IEA)は2024年1月11日、再生可能エネルギーに関する報告書(Renewables 2023)を公表した。これによると2023年の世界の再エネ設備追加量は約5億1,000万kWとなり、2022年実績(追加量)から50%伸びた。IEAは現状の政策が継続したシナリオを分析し、2028年時点の再エネ設備量は73億kWとなり、2030年に2022年の2.5倍に達する可能性があるとしている。2023年末に開催されたCOP28では2030年に再エネ設備量を3倍に拡大(設備量で110億kWに相当)することで合意しており、IEAは政府のエネルギー政策により目標達成も可能であるが、大きな課題もあると説明する。これらは(1)不確実なエネルギー政策、(2)電力系統への投資不足、(3)非効率な行政手続き(許認可手続き)、(4)発展途上国などの不十分な資金である。2023~2028年の再エネの追加設備量は37億kWとなり、このうち太陽光と風力発電が95%を占めることになると考えられる。地域別では60%を中国が占め、米国、EU、インド、ブラジルでも過去5年の設置量から倍増することが想定されている。設備量の増加により太陽光と風力発電の発電電力量も増え、2028年に世界の発電電力量の25%に達し、特にEUでは50%を超えることになる。このため一部の国では電力系統の運用に課題を生ずる可能性があると指摘している。
2024.1.11
中国:2023年のEVを含む新エネ車の販売・輸出量が過去最高を記録
中国自動車工業協会(CAAM)は2024年1月11日、2023年の自動車販売データを発表した。それによると、導入促進支援策や販促キャンペーンの実施により、新車の販売台数は前年比12%増の3,009万4,000台となり、過去最高(これまでは2017年2,888万台)となった。その内EVを含む新エネ車(NEV)は前年比37.9%増の949万5,000台で過去最高記録を更新した。内訳はEVが668万5,000台(前年比25%増)、PHEVが280万4,000台(同85%)、FCVが6,000台(同72%)。輸出量は前年比57.9%増の491万台となり、NEVが120万台以上、約24.5%を占めたとされる。国別輸出先はロシアがトップで、2位のメキシコと比べ倍以上の輸出量であった。
2024.1.11
英国:政府、2050年までに原子力発電を最大4倍へ増やすロードマップを発表
英国政府は2024年1月11日、原子力発電を過去70年間で最大規模に拡大する方策を示したロードマップ「Civil Nuclear Roadmap」を発表した。同ロードマップは、2022年のエネルギー安全保障戦略で掲げた「2050年の原子力発電設備出力目標2,400万kW」の実現に向け、中長期の原子力開発に係る重要な決定のタイムラインや政府の方針・役割を明確化し、原子力産業界と投資家に予見性を与えることが目的。具体的には、今会期中にサイズウェルC発電所の最終投資決定(FID)を行うことを強調し、2030~2044年にかけて5年ごとに300万~700万kWの新設について投資決定を目指すことや100万kW級大型炉の新設に取り組む方針を示した。その他にも小型モジュール炉(SMR)のFIDを2029年までに実施することや濃縮度5~20%の低濃縮ウラン(HALEU)の国内生産に向けて3億ポンド(約560億円)を投資する計画を示すなど、1990年半ばをピークに衰退している同国の民生用原子力発電の復活と原子力業界における国際的なリーダーシップの獲得に向けた同国政府の強い意欲を示している。なお、2025年末までに同ロードマップの更新版を発表することも明らかにしている。
2024.1.11
米国:Plus PowerのBESSがハワイの石炭火力発電の代替に貢献
米国のバッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)開発会社のPlus Powerは2024年1月11日、ハワイのオアフ島での送電網の安定性に貢献するBESSの運開を発表した。運開したBESSはTesla社製のリチウムイオン電池158個で構成され、エネルギー容量は185MW/565MWh。その内135MW/540MWhをエネルギー供給、50MW/25MWhを周波数調整に利用する他、仮想慣性、ブラックスタート機能を備えている。同設備は2022年9月に閉鎖したAES石炭火力発電所(定格出力180MW)の発電設備容量を代替し、オアフ島に電力を供給する。ハワイ州最大の電気事業者であるハワイ電力(HECO:Hawaiian Electric Company)の試算によると、BESSの導入によって20年間の契約期間にわたって顧客の電気代を月平均0.28ドル削減できるという。
2024.1.09
英国:政府、長期電力貯蔵設備の導入促進に向けた支援制度の草案を公開
エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2024年1月9日、長期電力貯蔵設備(LDES:long-duration energy storage)の導入促進に向けた支援制度の草案を公開し、3月5日までの意見公募を開始した。DESNZはLDESの対象として、電力を6時間以上貯蔵可能なことを目安に、揚水発電、フロー電池、圧縮空気や液化空気エネルギー貯蔵技術を挙げる一方、他の支援制度が適用される水素発電や現在の市場環境でも開発資金が集まりやすいリチウムイオン電池を対象外とした。LDESの支援制度としては国際連系線に適用されているキャップ&フロアを検討し、事業収入の上限と下限を設定することにより需要家の負担を抑えながら事業者に安定的な収入を保障していく方針を示している。なおDESNZは意見公募資料のほか、コンサル会社LCP Deltaなどが提出した調査報告書も併せて公開している。
2024.1.08
中国:中国企業、民生用「超小型原子力電池」開発に成功
中国のBetavolt New Energy Technology社は2024年1月8日、革新的な民生用原子力電池の開発に成功したと発表した。同電池は硬貨サイズ(15mm×15mm×5mm)であり100マイクロWを出力し、電圧は3Vであるという。同社は2025年に1Wの電池を発売する予定。ニッケル63の放射性同位体と中国初のダイヤモンド半導体(第4世代半導体)モジュールを組み合わせており、原子力電池の小型化、モジュール化、低コスト化が実現されたとしている。ニッケル63は半減期約100年の放射性核種であり、β粒子(電子)を放出する。同社によれば、この電池は50年間安定して発電し、充電やメンテナンスが不要であり、航空宇宙、AI機器、医療機器、小型ドローン、ミニロボットなど、多様な用途で長時間の電力供給が可能であるという。この電池は現在試験段階にあり、今後市場で大量生産される予定としている。
2024.1.07
英国:政府、低濃縮ウランHALEU支援プログラム(3億ポンド)を開始
英国エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2024年1月7日、3億ポンド(約560億円)を投じて濃縮度5~20%の低濃縮ウラン(HALEU)への支援プログラムを開始すると発表した。同投資はHALEUの国内生産を支援するもので、さらに先進的な原子燃料の製造技術や施設の開発にも1,000万ポンド(約19億円)を提供し、国内の長期的燃料供給の確保と国際的な同盟国支援に貢献するとしている。DESNZは、「これは、ウラン転換市場における脱ロシアを図るもので、政府と産業界はこのために、最大2,600万ポンド(約48億円)を投資している」と述べた。英国政府は原子燃料基金(NFF)のもと、これまで8つのプロジェクトに総額2,230万ポンド(約41億円)の資金を給付している。例えば、ウェスチングハウス社への燃料製造における種類の多様化に1,050万ポンド(約20億円)、ウレンコ社へのHALEUも含む濃縮能力強化に950万ポンド(約18億円)、Nuclear Transport Solutions社へのHALEU輸送容器の開発に100万ポンド(約2億円)以上などがある。
2024.01.05
中国:EVと電力システムの統合運用強化実施方針を発表
国家発展改革委員会と工業情報部などは2024年1月5日、新エネ車(EV、FCVなどを含む)と電力システムの統合運用の強化について実施方針を発表した。関係省庁は新エネ車を制御可能な負荷または移動エネルギー貯蔵装置として利用するにより、電力システムの効率的かつ経済的な運用をサポートし、より経済的で高い安全性を確保できるとしている。方針によると、2025年までに実証試験を通じて効率的な充電、利用時間に関する技術を確立し、2030年にはAIや市場化を活用し、数千万kW規模の系統調整用電源として運用することを目標としている。
2024.01.04
ドイツ:2023年の排出量取引による収益は過去最高額の180億ユーロ超
ドイツ連邦環境庁は2024年1月4日、2023年の欧州排出量取引制度(EU-ETS)および国内ETS(熱・運輸部門)による収益が前年比約40%増の184億ユーロと過去最高額となったことを報告した。国内ETSの収益増が主に影響しており、収益は前年比で67%増加し、約107億ユーロとなった。国内ETSは2021年に開始され、当初は主要な燃料であるガソリン、ディーゼル、灯油、LNGのみを対象としていたが、2023年からは他のすべての化石燃料(石炭を含む)が対象となった。対象枠の拡大に伴い、ドイツでは国内排出量の85%以上が排出量取引の対象となっている。なお、収益は気候・変革基金(KTF)に充てられる。
2024.01.04
米国:2023年の天然ガス卸価格、前年比62%下落で2020年以来最低に
米国エネルギー情報局(EIA)は2024年1月4日、米国の天然ガス指標価格であるヘンリーハブのスポット価格について、2023年の平均価格が2.57ドル/MMBtuとなり、2022年の平均価格から約62%下落し、2020年以来の最低水準を記録したことを発表した。EIAはこの原因について、(1)天然ガスの消費量が横ばいとなったこと、(2)天然ガスの生産量が過去最大となったこと、(3)天然ガスの在庫量が平均を上回ったことを挙げた。2023年冬季が穏やかな気候であったため、輸出量の増加と発電用に供される天然ガスのわずかな増加があったものの、家庭用および商業用の消費量が抑制され、天然ガスの需要は前年比3%増にとどまった。一方、生産量は同約4%増であり、生産量の増加が、消費の増加を上回ったことが、2023年の価格下落の主要因としている。また、2023年末時点の天然ガス在庫量は前年比11%、5年平均値を10%高い水準を保っていた。
2024.01.02
米国:DOE、運転継続支援のためのクレジットをディアブロキャニオンに付与
米国エネルギー省(DOE)は2024年1月2日、カリフォルニア州のディアブロキャニオン原子力発電所(PWR、117万kW×2基)の運転継続を支援するためにPG&E社に最大11億ドルのクレジットを付与する条件付き決定を連邦官報にて公表した。クレジットは運転継続支援(CNC)プログラムによるもので、同発電所は2022年11月にCNCの第1ラウンドで選定されていた。同プログラムでは、認定原子炉の所有者または運営者は4年間の認定期間中に原子炉の運転が継続される限り、連邦政府から認定クレジット分の支払いを受ける資格を得る。PG&E社は2023年1月から2026年12月までの助成期間における支払いを受け取る資格を持つが、原子力規制委員会(NRC)から運転ライセンス延長の認可を得ることが条件となる。
2023.12.29
中国:国務院常務会議、4基の原子炉建設計画を承認(2023年合計10基)
李強首相が主催する国務院常務会議(日本の閣議に相当)は2023年12月29日、広東省太平嶺原子力発電所3、4号機および浙江省金七門原子力発電所(新規サイト)1、2号機の2サイト計4基の建設計画を承認した。4基はすべて中国が独自開発した第3世代炉「華龍一号」を採用することとなっている。2023年7月の常務会議で承認した山東省の石島湾原子力発電所、福建省の寧德原子力発電所および遼寧省の徐大堡原子力発電所の3サイト合計6基を合わせると、2023年の新規承認基数は2022年とならぶ10基のハイペースとなっている。
2023.12.22
米国:水素製造へのタックスクレジット規則案が発表、電力業界は懸念
米国財務省と内国歳入庁(IRS)は2023年12月22日、水素製造のタックスクレジットに関する規則案を発表した。クリーン水素(水素1kg 当たり4.0 kg-CO2以下)を製造する事業者に対し、当該水素製造施設の稼働開始から遡ること3年以内に商業運転を開始したクリーン電源から電力を調達する追加性(Additionality)基準を求める他、水素製造施設と同じ場所または同じ系統でクリーン電力を供給する地理的相関性(Deliverability)基準や2028年以降はクリーン電力と水電解装置の稼動が同じ時間帯である時間適合性(Hourly Matching)基準を満たすことを提案している。これに対し、私営電気事業者が加盟する業界団体のエジソン電気協会(EEI)は、水素は電力部門を含む様々な部門で排出量を削減するための信頼性が高く、手頃な価格のツールとなる可能性があり、水素経済を支援するために必要な規模拡大を可能にする十分な柔軟性を提供していないとのコメントを発表した。財務省とIRSは同案が官報に掲示されてから60日間、パブリックコメントを受け付け、2024年3月25日には公聴会を開催する予定。
2023.12.21
中国:国家能源局年次会議、2024年の風力、太陽光で2億kW新設目標
国家能源局は2023年12月21日、エネルギー分野のおける年次会議を開催したと発表した。それによると、2024年のエネルギー関連政策はエネルギー安全保障を踏まえ、石炭・石油の生産量を維持、天然ガスを増産し、エネルギートランジションを推進するため、風力・太陽光の新設を2億kW、原子力は500万kW(4台)を目標にしている。また、エネルギー関連の技術革新、管制、停電削減、国際協力、エネルギー利用のためのインフラ整備(EV用充電インフラを含む)、電化の推進などを重視するという。
2023.12.20
ベラルーシ・ロシア:ベラルーシのSF、2032年から再処理のためロシアへ搬出
ベラルーシのカランケビッチエネルギー大臣は2023年12月20日、同国のベラルシアン原子力発電所(VVER-1200、120万kW×2)で発生した使用済燃料(SF)は、2032年から再処理のためにロシアに輸送され始めると述べた。SFは同発電所の貯蔵プールに8~10年間保管後、ロシア国営原子力企業ロスアトムの子会社TVELにより専用キャスクに入れられ、再処理のためにロシアへ鉄道で輸送されるという。ロシアに到着したSFは、残留熱と放射能を減らすために約20年間保管され、再処理で発生する放射性廃棄物は、2050年代にロシアからベラルーシに返還が開始される予定。2023年2月に設立されたベラルーシ放射性廃棄物管理機構は同年10月、TVELと放射性廃棄物の最終処分のインフラ構築と開発、人材育成などに関する長期協力協定を締結。同機構は現在、2030年までの一部運開を目指す国立放射性廃棄物貯蔵施設の建設場所を選定中だという。
2023.12.19
中国:初の広域電力スポット取引、登録者が16万を超える
大手紙は2023年12月19日、12月13日から4日間の南方広域電力スポット市場の試験運用で市場への参加登録者数が16万に達したと報じた。その内、広東省と広西チワン族自治区の7つの実証試験では、新エネルギー発電所、雲南省の金沙川と瀾滄江流域の18の水力発電所が広域需給一次調整力として参加した。電力市場の運営委託者である南方電力有限責任公司(送配電事業者)は市場での取引価格は入札時の提示価格と比べ、雲南省の水力発電は低下するものの、海南省の火力発電の価格が上昇し、平均約定価格は地域市場における電源種別のコストに近づいたと説明している。
2023.12.19
ウクライナ・米国:ウクライナ、使用済燃料集中貯蔵施設へのSF輸送開始
米国のホルテック社は2023年12月19日、ウクライナ国営原子力公社エネルゴアトムが同国内で稼働中の原子炉から、新設された使用済燃料集中貯蔵施設(CSFSF)への使用済燃料(SF)の輸送を開始したと発表した。同施設により、自国のSFをロシアに輸送・保管するためにロシアへ支払っていた年間約2億ドルを節約し、かつSF貯蔵容量不足による発電所の運転中断リスクを回避することができるという。チョルノービリ立入禁止区域に位置するCSFSFは、フメルニツキー、リウネおよび南ウクライナの各原子力発電所の計9基のSFを貯蔵する乾式貯蔵施設である。ホルテック社との契約は2005年に締結され、2017年の建設開始後、2022年4月に試運転許可を取得した。2023年初めに試運転が始まったCSFSFには、既に13基のSF保管容器が置かれており、次の目標は、試運転中に実施すべき作業に取り組み、セキュリティ分析を行い、実運用への移行を申請することだという。
2023.12.19
EU:南西欧州3カ国の系統相互接続に関する覚書に署名
欧州委員会は2023年12月19日、フランス、スペイン、ポルトガル各国のエネルギー担当大臣と3国間のエネルギーインフラ分野での協力の強化に合意し、覚書に署名した。この合意では南西欧州における国際連系線や洋上風力発電施設との系統接続、水素輸送ネットワークの整備推進を対象事項としている。系統連系に関しては、イベリア半島地域の欧州電力市場への統合を推進するために、EUの共通利益プロジェクト(PIC)の実現と更なる国際連系線の強化に資するプロジェクトなどの実施を図るとしている。また洋上風力との系統接続分野では、優先すべきプロジェクトの特定や海洋空間計画の調整に関する協力を強化する。そして水素分野では、国際水素パイプライン建設プロジェクト「H2Med」に続き、スペイン・ポルトガル地域におけるグリーン水素製造能力の調査や必要になると想定される国家間インフラの評価を実施することが定められた。
2023.12.19
米国:テスラEV充電規格の標準化に向けた業界の動きを支持
輸送機関の専門家を会員とする米国非営利団体のSAE Internationalは2023年12月19日、テスラが開発したEV充電規格であるNACS(North American Charging Standard)の標準化に向けた技術情報報告書(TIR:Technical Information Report)を発表した。SAEはNACSの標準規格をJ3400と名付け、本報告書は、開発者がNACSの展開・商用化を進めるうえで重要な技術的パラメーターを規定するものであるとしている。これに対し、エネルギー・運輸合同事務局(The Joint Office of Energy and Transportation)は、バイデン政権および同局がSAEによるTIRの発表を歓迎する旨の声明を発信した。同局は、「バイデン・ハリス政権が信頼性の高い充電ネットワークの構築を支援する中で、すべてのEVがどの充電ステーションでも充電できるようにするためには、オープンスタンダードの確立が極めて重要である」と、NACS標準化の動きを支持する姿勢を示している。
2023.12.14
英国:第1回水素製造入札の落札結果を発表、11件125MWが落札
英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2023年12月14日、2022年7月に始まった第1回水素製造入札(HAR1)の落札結果を発表した。落札者はScottish PowerやEDF などによる11件のプロジェクト(合計125MW)で、応札総容量の約半分が落札するという結果となった。落札者は、2025年にプロジェクトを運開する予定で、低炭素水素契約(LCHA)に基づき補助金受領の契約を締結した後、プロジェクトの運開時から15年間、行使価格(241ポンド/MWh、約4万4,000円)と指標価格(天然ガス価格を基準に変動)との差額の補助(ポンド/MWh)を受ける(合計20億ポンド、約3,600億円)。同省は同日発表した「水素製造供給ロードマップ」などで、第2回入札(HAR2)の募集容量が875MWで2025年に落札結果を公表する予定としており、同日第3回入札(HAR3、2025年開催、2026年落札)と第4回入札(HAR4、2026年開催、2027年落札)の募集容量を最大750MWとすることも発表した。
2023.12.14
EU:EU理事会と欧州議会、電力市場改革案について暫定合意
EU理事会と欧州議会は2023年12月14日、電力市場改革案について暫定合意に達したことを発表した。欧州委員会が同年3月に発表した当初案では、再エネ(太陽光、風力、貯水池のない水力、地熱)と原子力発電所の新設および既設発電所の増強工事に対する政府支援の形態について、双方向の差額決済契約(CfD)を義務付けることが提案されており、EU理事会と欧州議会における議論では、支援対象に既設原子力発電所に対する設備投資を含めるかが争点となっていた。今回暫定合意された内容では、新設には双方向CfDかそれと同等のモデルを義務付ける一方、既設に対しては双方向CfDを義務ではなく、オプションとして選択することが認められた。今後、両機関が合意内容を正式に採択した後、改革案は法制化される。
2023.12.14
米国:VPPパイロットの拡大に前向きな姿勢
テキサス州公益事業委員会(PUCT)は2023年12月14日、公開会議を開催した。同会議にてWill McAdams委員の退任が発表されるとともに、同氏は州内VPPプロジェクトの重要性について強調した。PUCTは2022年11月、テキサス州ERCOT管内にて80MW規模のVPPパイロットプロジェクト(ADER pilot)を実施することを承認し、McAdams委員がプロジェクトの主導者として携わってきた。同氏は、VPPパイロットは「テキサス州で大きな成功を収めている」と述べたほか、積極的な取り組みの継続を望む発言を残した。また、同パイロットの監督を引き継ぐJimmy Glotfelty委員も、今後プログラムを拡大していく必要があると主張した。
2023.12.13
世界:COP28合意文書、気候変動の解決策としての原子力の価値を初めて明記
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)は2023年12月13日、参加した約200カ国が化石燃料からの脱却と原子力を含むゼロ・エミッションおよび低排出技術の加速に合意し閉幕した。「UAEコンセンサス」と呼ばれる合意文書は、エネルギーシステムにおける化石燃料からの脱却を求め、「公正、秩序ある、公平な方法で、この重要な10年間に行動を加速させ、科学に沿った形で2050年までにネットゼロを達成する」とし、「特に、再生可能エネルギー、原子力、炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)のような炭素排出量の削減・除去技術、低炭素水素製造を含む、ゼロ・エミッションおよび低排出技術の加速が必要」としている。世界原子力協会は、京都メカニズム(COP3)から唯一除外されていた原子力が、今回の合意文書で初めて気候変動に対する解決策の一つとして明記された、としている。
2023.12.13
中国:国家能源局、グリーン電力証書の発給を再開
国家能源局は2023年12月13日、同年7月のグリーン電力証書規定改正にもとづき、再生可能エネルギー由来の電力の証明書であるグリーン電力証書の発給を再開すると発表した。発給に際し7月の規定改定で、国家能源局が中国唯一のグリーン電力証書の発行機関であると明記された。国家能源局の発表では、再開した第一回発給では、再認定を含む755社の1,168のプロジェクトを対象に、約1,191万枚のグリーン証明書を発行した。
2023.12.13
中国:明陽智能、単機容量世界最大となる20MWの風車タービンを出荷
現地紙は2023年12月13日、風力発電機メーカーの明陽智慧能源集団(明陽智能)が開発した、単機容量世界最大の20MWの風車タービンを出荷したと報じた。それによると、同タービンは明陽智能が自主開発し、ローター径は260~292mに達する。明陽智能によると、同発電機は単機で年間8,000万kWhの発電が可能であり、これは約9万2,000人の年間電力消費量に匹敵する。
2023.12.13
中国:2024年重要経済方針で新型エネルギーシステム構築を加速
大手紙は2023年12月13日、北京で11~12日に開催された「中央経済工作会議」で決定された次年度の経済運営方針の重要施策に、新型エネルギーシステム構築の加速が含まれていると報じた。2024年は高品質な発展を推進する方針の下で、重要施策を2023年度の5件から9件に増やしており、新型エネルギーシステム構築の加速が組み込まれた。また、エネルギー分野の方針では、エコ文明の建設とグリーン・低炭素化の推進のほか、カーボンピークアウト・カーボンニュートラルの推進、グリーン・低炭素サプライチェーンの構築を挙げている。
2023.12.13
欧州:欧州投資銀行が風力開発に対する再保証の提供を発表
欧州投資銀行(EIB:European Investment Bank)は2023年12月13日、風力発電設備製造企業を支援するための50億ユーロの再保証(counter-guarantee)が理事会において承認されたことを発表した。この再保証は、欧州委員会が2023年10月24日に発表した政策パッケージ「欧州風力発電行動計画」に示されている行動計画に対応するものであり、欧州全域の風力タービンメーカーや風力発電のサプライチェーン企業を支援する各国の取り組みを補完する。風力発電セクター企業による投資に対する銀行保証の提供を強化することにより、風力発電に対する新規投資が最大で800億ユーロ支援され、新規に設置される風力発電の容量が32GW増加すると期待されている。理事会はまた、欧州全域および世界各地のエネルギー、運輸、教育、水資源、地域開発への投資に対する総額204億ユーロの新規融資にも合意している。
2023.12.12
米国:国内ピーク需要は今後5年間で38GW増加の見込、製造業・DCが牽引
米国電力セクターのコンサルティング会社であるGrid Strategies社(本社:ワシントンD.C.)は2023年12月12日、2028年における国内電力のピーク需要見込みを発表した。本レポートで同社は5年後のピーク需要について、2023年の814GWから38GW増加し、852GW(+4.7%)に達するとの分析結果を示している。分析にあたっては、50州およびワシントンD.C.の需給調整機関が毎年連邦エネルギー規制委員会(FERC)に提出する年次計画報告書の数値やデータが活用されており、同社によれば需要予測を全国規模でまとめた初めてのものであるという。需要増加の主な要因としては、2022年8月に成立した国内半導体製造促進のための法律(CHIPS and Science Act)やAIへの関心の高まりなどにより、製造業やデータセンターへの投資が進んでいることを挙げた。
2023.12.07
中国:国務院、大気汚染を持続的に改善する行動計画を発表
中国国務院(内閣府に相当)は2023年12月7日、大気汚染を持続的に改善する行動計画を発表した。計画は2025年までに、地方都市を含む大気中の微小粒子状物質(PM2.5)を2020年時点から10%削減するとともに、重度汚染・厳重汚染状態(大気質指数Air Quality Indexによる区分で、指数が201以上)の日数を年間の1%以下に抑える目標を打ち出した。化石エネルギー利用比率を80%以下に抑え、最終エネルギー消費に占める電力の割合を30%以上に引き上げる。また、石炭利用比率の削減を京津冀(北京市・天津市・河北省)地域とその周辺地域において2020年比で10%程度削減、長江デルタ地域では5%程度削減を目標としている。生態環境部は目標を明確化したうえで、産業、エネルギー、交通の構造調整、特に交通分野の低炭素でグリーンな方式への転換・発展と、窒素酸化物とVOCsなどの複合汚染物質の排出削減の施策方針を強調した。
2023.12.08
スリランカ:セイロン電力庁(CEB)の発送電分離を定めた法案を公表
2023年12月8日付の報道によると、スリランカの電気事業再編を定めた法案(Sri Lanka Electricity Bill)が官報に掲載された。同国では現在、主にセイロン電力庁(CEB)により一貫体制で電力供給が行われている。法案では、電気事業を発電、送電、配電、電力取引、小売供給部門ごとに分け、段階的に競争を促すこと、卸電力市場を設立すること、再生可能エネルギー発電への民間投資を促すためRPS制度を導入し、再エネ証書取引を実施できるようにすること、既存の公益事業委員会(PUCSL)を電気事業の規制機関と位置付け機能を強化すること、CEBの送電部門はCEBから分離し、系統運用会社と送電会社にそれぞれの機能を移管すること、電力・エネルギー省の電力再編遂行をサポートするため、電力セクター改革事務局を設置することなどが盛り込まれた。
2023.12.07
世界:原子燃料サプライェーン強化に42億ドルの投資計画を公表
米国エネルギー省(DOE)は2023年12月7日、日本、米国、英国、フランスおよびカナダが、安定したグローバルな原子燃料供給網の確立に向け、5カ国のウランの転換・濃縮能力を増強するため、今後3年間に政府主導で42億ドル投資する計画だと公表した。同計画は、アラブ首長国連邦で開催されている気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のサイドイベント「ネット・ゼロ・ニュークリア・サミット」において公表されたもので、同月1日の22カ国による2050年までに原子力発電容量を世界全体で3倍にするという宣言に続く動き。同投資により、ロシアの影響を受けない強靭な世界ウラン供給市場を確立することを目指す。同5カ国は「札幌5」と呼ばれ、同年4月に札幌で開催されたG7閣僚会議に併せて実施された「国際原子力フォーラム」で発足したもので、志を同じくするすべての国々に、世界のウラン供給網の確保に参加するよう呼びかけるとしている。
2023.12.06
中国:試運転から商業運転へ切り替え
国家能源局は2023年12月6日、発電大手中国華能集団有限公司、原子力事業者中国核工業集団有限公司および清華大学の3者が共同で建設したペブルベッド型モジュール式(PM)高温ガス炉(山東省栄成市)が、同日付で試運転から商業運転に切り替えたと発表した。同局よれば、同高温ガス・パワーモジュール実証炉(HTR-PM、電気出力21万kW)は、中国が独立した知財権を持つ主要科学技術プロジェクトの画期的な成果の一つであり、2012年12月の着工後、2021年12月に初めて系統連系し、168時間の連続運転試験などを経て今回の商業運転に至った。同実証プロジェクトでは、設計・研究開発、土木建設、設備製造、業務管理などに500以上の企業、研究機関などが参加し、2,200以上の設備機器で構築され、国産化率は93.4%とされる。HTR-PMの運開により中国は、第4世代原子力技術の研究開発と応用で世界をリードするレベルに達したと評価される、としている。
2023.12.05
中国:広域天然ガス託送料金を発表
国家発展改革員会(NDRC)は2023年12月5日、天然ガスパイプラインの託送料金について、4つの広域託送料金単価を発表した。託送料金は省・自治区単位を跨ぐ場合、1km当たり1,000m3、税金(増値税9%)を含み、西北地区は0.1262元(約2.55円)、東北地区は0.1828元(約3.7円)、中東地区は0.2783元(約5.63円)、西南地区は0.3411元(約6.9円)となった。2019 年 12 月に発足した中国国有パイプライン会社国家石油天然気管網公司(PipeChina)によるパイプラインの運営が始まったことから、同パイプライン託送料金が発表された。なお、PipeChinaは、中国の国有3大石油会社(CNPC、SINPEC、CNOOC)が運営しているパイプライン網を統合し、輸送・貯蔵を一元管理する公営事業者である。
2023.12.05
米国:水素製造コストの現状と将来見通しなどに関する調査報告書を発表
米国エネルギー省(DOE)は2023年12月5日、水素製造コストの現状と将来見通しなどに関する調査報告書「Hydrogen Shot Technology Assessment」を発表した。これはバイデン政権のHydrogen Shot(2031年までにクリーン水素のコストを80%削減し、1kg当たり1ドルを目指す)の一環であり、同省が管轄する国立エネルギー技術研究所(NETL)が取りまとめた。同省は報告書の中で、(1)現状、再エネから製造されるクリーン水素は1kg当たり5ドル以上のコストがかかること、(2)水素コストは技術の進歩により、1kg当たり1.30~1.40ドルまで低減できる可能性があること、(3)産業界はCO2排出量削減のためにクリーン水素を導入し始めているが、大規模な導入にはまだ多くの課題が残っていることなどの認識を示した。
2023.12.04
豪州:2023年11月の月間ルーフトップ太陽光導入量が33万kWと史上最大
エネルギー情報誌は2023年12月4日、コンサルタントの調査結果を報じて、2023年11月のルーフトップ太陽光発電の月間導入量が33万kWを超え、最大となったと伝えた。SunWizの調査結果を基にしたもの。これまでの記録は2020年12月の31.4万kWで、平均的なシステムの出力は9.9kWに拡大した。年間導入量でも2023年は2022年を超え、330万kWを記録した2021年に迫る勢いである。太陽光発電の導入増加は昼間の需要や卸電力価格形成に大きな影響を与え、国内では蓄電池導入促進につながっており、石炭火力などの運営には大きな圧力となっている。
2023.12.04
英国:世界初のアンモニアクラッキング技術の実証試験が開始
2023年12月4日付報道によると、英国のグリーン水素技術開発会社AFC Energyはアンモニアを分解(クラッキング)して水素を取り出す世界最大のアンモニア分解実証装置を運開させた。オランダの水素供給会社OCI Globalからロッテルダム港経由で輸入したグレーアンモニア(米国、中東、北アフリカ産)を水素に変換する。同社によると、1日当たり400kgの水素を供給可能で、輸入アンモニアをクラッキングする方が、英国内で水素を製造するよりも低コストになる可能性がある。
2023.12.04
米国:ホルテック社、パリセード発電所敷地内にSMR2基の設置を目指す
ホルテック社は2023年12月4日、ミシガン州のパリセード原子力発電所の敷地内に同社が開発する小型モジュール炉(SMR)「SMR-300」(PWR、電気出力30万kW、熱出力105万kW)の最初の2基を設置する計画であると発表した。同発電所は2022年に当時の所有者であったエンタジー社によって廃止されたが、現在所有権を有しているホルテック社が2025年末までに再稼働することを目指している。同社によると、SMR-300については2026年に建設許可を申請し、2030年半ばの運用開始を目標としている。同社はSMR-300を既存の原子力発電所に併設する理由について、発電所建設に伴う遅延をなくし、インフラや運転に関する専門知識の共有、送電網の安定性の向上、経営資源の最適化などの多くの相乗効果が得られると説明している。
2023.12.01
英国・ドイツ:Octopus、Shellの家庭向け電力・ガス小売事業の買収完了
英国の主要新電力Octopus Energyは2023年12月1日、同年9月に発表していた英国の石油大手Shellの英国とドイツにおける家庭向け電力・ガス小売事業の買収が完了したことを発表した。Octopus Energyによると、同日から英国とドイツで130万軒の家庭用顧客を同社のシステムに移行する手続きを開始し、2024年半ばに完了する見通しという。また、今回の買収により、英国内における同社の顧客数は660万軒に達することも発表されており、同国シェア首位のBritish Gasに並ぶものとみられる。
2023.12.01
EU・ロシア:VVER操業5カ国、2年続けてロシア燃料輸入量を増やす見込み
ユーラトム供給機関(ESA)代表代行のチッカレロ氏は2023年12月1日、欧州連合(EU)でロシア型加圧水原子炉(VVER)を運転する5カ国による2022年のロシアからの原子燃料輸入量は前年より多く、23年も21年より増える可能性が高いと述べた。2023年10月のESA年次報告書によると、2022年のEU全体のロシアからの天然ウラン輸入量は21年から16%減少(カザフスタンとウズベキスタンからの輸入増で代替)した。しかし、VVERを運転するブルガリア、チェコ、フィンランド、ハンガリーおよびスロバキアの5カ国は、22年に対前年比でロシアから転換役務を30%、濃縮燃料を22%、それぞれ多く購入した。同氏によると、ロシアの燃料に完全に依存している電力会社は、代替燃料が認可される前に供給が途絶えた場合の備えとして燃料の在庫を増やしており、同認可には10年程度は必要で、VVER代替燃料への広範な切り替えには何年もかかるという。
2023.11.30
中国:産業報告書、中国の洋上風力産業シェアは世界の7割と報告
大手メディアは2023年11月30日、広東省汕頭市で開催された風力技術イノベーション会議の報告書によると、中国の洋上風力のサプライチェーンの規模は世界の7割を占めると報じた。同報告書によると、世界の洋上風力分野における中国メーカーの生産能力は、タービンが60%、ブレードは64%、ギアボックスは80%、発電機80%、基礎関連は73%とそれぞれ大きなシェアを占めているほか、設置、保守のための専用船舶の受注シェアも8割以上に達しているとしている。また、建設中の汕頭国際風力発電イノベーションポートは洋上風力設備の研究開発と設計、プロセスフロー、製造、試験、認証を一カ所に集め、サプライチェーンの効率をこれまでの3倍に向上し、オーダーメイドと量産体制を両立し、製品のコスト低減につながるとされている。
2023.11.29
欧州:水素パイプラインへの投資無しではコストとCO2排出量が増加との試算
オランダとスペインの大学は2023年11月29日、欧州の水素インフラの投資対象の最適な選択(電解槽、水素貯蔵、水素パイプライン、送電系統)に関して、コスト面とCO2排出量の観点から分析した学術研究結果を発表した。その結果、総コストはこれら4つすべてに投資した場合が最も低コストとなり、それに比べ水素貯蔵に投資しない場合が最もコストが高く約103億ユーロのコスト増加となった。またこれらすべてに投資した場合に比べて、水素パイプラインに投資しない場合は総コストが1.2%(約36億ユーロ)増加して需要家に数10億ユーロの追加負担をもたらすことになり、さらにCO2も約20%増加する結果となった。水素貯蔵とパイプラインへの投資により、28GWの送電系統への新規投資は必要なくなる。以上から、4つすべての投資バランスが大事であり、特に水素パイプラインへの投資が必要と同論文は結論づけている。
2023.11.28
フランス:政府、2025年に大規模洋上風力発電の入札実施を予告
マクロン大統領は2023年11月28日にナントで開催された海洋経済会議において、政府が1,000万kW規模の洋上風力開発の入札公告を2025年に行うことを公表した。この発電容量は約1,000万世帯の年間電力消費量に相当し、2030年から2035年に運転開始するプロジェクトを入札対象にしている。現在フランスの洋上風力発電容量は計画中のものも含めて800万kWとなっており、2050年までに4,500万kWまで増設し、原子力に次ぐ2番目の規模の電源とする目標を掲げている。同目標に関して大統領は、2035年までに1,800万kWを稼働させると明言し、フランスを浮体式洋上風力分野のトップに成長させるため2億ユーロの投資を行う方針を示した。また洋上風力開発が2023年から2035年までの間に25億ユーロの収益をもたらし、漁業関係者に7億ユーロが還元されるとする試算にも言及した。
2023.11.28
ドイツ:憲法裁判所判決により水素導入・気候変動対策の見通しが不透明に
2023年11月28日付の報道によると、「2021年に新型コロナ対策のため発行されたクレジットを『気候・変革基金』(KTF)に振り替えることは憲法違反」とした連邦憲法裁判所の判決により、ドイツの水素支援計画の不透明性が増している。現地メディアによると、連邦経済・気候保護省はドイツの水素輸入支援策である「H2Global」への影響について、「連邦政府は現在判決の詳細を精査中であり、具体的な影響については回答できない」とコメントした。連邦政府は2024~2027年に、KTFから水素支援と産業の脱炭素化支援に186億ユーロを拠出する計画だったが、新たな財源の確保を迫られている。また、連邦政府は違憲判決の影響で年内に発表予定であった「発電所戦略」の策定が遅れるとしている。同戦略は、2028年までに最大2,380万kWの水素発電所を確保するための入札制度について定めるものである。
2023.11.28
米国:ミシガン州知事、100%クリーンエネルギー法案に署名
ミシガン州のホイットマー知事(民主党)は2023年11月28日、包括的なクリーンエネルギーと気候変動対策パッケージ法案に署名した。同法の成立に伴い、ミシガン州は電気事業者に対し、2030年までにエネルギーの50%、2035年までに60%を再エネとし、2040年にはすべてのエネルギーをクリーンエネルギー(原子力、CCS含む)より調達することを義務化する。ミシガン州での成立を受けて、米国で100%クリーンエネルギーへの移行を義務付ける法律を成立させた州は合計12州となった。
2023.11.27
米国:普通自動車販売台数、ハイブリッド車とEVの合計が全体の約18%を占める
米国エネルギー情報局(EIA)は2023年11月27日、普通自動車の新車販売台数において、ハイブリッド車とEVの合計が全体の約18%を占めたことを報告した。2023年第1四半期から第3四半期の累積では同割合は約16%となり、2022年同期の約12%、2021年同期の約9%から増加した。EIAはこの増加の理由として、人気のあるEVモデルの価格が全体的に低下したことなどを挙げた。2023年第3四半期におけるEVの平均取引価格は5万283ドルであり、価格ピーク時の2022年第2四半期から24%減少した。
2023.11.23
EU:11月23日に初のグリーン水素支援の入札を開始
エネルギー情報誌は2023年11月23日、EUで初めてとなるグリーン水素支援に向けた入札が開始されたと報じた。EUは2030年に2,000万tのグリーン水素供給(域内製造1,000万tと輸入1,000万t)を目標としており、これまでも補助プログラムを通じた支援を実施しているが、今回は初めてとなる競争入札により支援事業を募集するもの。域内のグリーン水素製造を支援するもので、製造する水素1kg当たりの固定金額(上限は4.5ユーロ)を10年間にわたり補助することになる。入札は安価な事業から落札して補助金合計が8億ユーロに達するまでで終了となる。入札は2024年2月4日に締め切られる。欧州委員会は今回の入札により、グリーン水素の製造コストや事業開発状況、競争の実態などの市場に関する情報を収集し、2回目以降の入札に生かす方針である。2回目の入札は2024年春に実施される予定であるが、固定金額を支援する方式をとるか否かは明らかではない。
2023.11.21
インドネシア:政府、国際パートナーシップ投資・政策計画を正式に発表
インドネシア政府は2023年11月21日、再エネ移行を目指す「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」に基づいた投資・政策計画(CIPP:Comprehensive Investment and Policy Plan)を正式に発表した。CIPPでは公表されていた草案の通り、2030年までに発電電力量に占める再エネ比率を44%にし、電力部門における系統電源からの温室効果ガス排出量を2億5,000万t(二酸化炭素換算)とする目標を設定し、それに向けた脱炭素化シナリオが描かれている。エネルギー鉱物資源省(MEMR)のアリフィン・タスリフ大臣によると、CIPPのもとで優先するプロジェクトとして第一に西ジャワ州のCirebon-1石炭火力発電所を早期に廃止し、次にジャワ島の電力供給過剰を解消するためにジャワ-スマトラ間の系統を連系する予定である。なお、JETPは日・北米・欧州が主導する国際支援の枠組みで、そのうちインドネシアに対しては、200億ドルの公的および民間資金を気候変動対策に割り当てる計画であり、そのもとで作成されたCIPPは政策立案や方針決定に用いられるが、法的拘束力はない。
2023.11.20
米国:NYISO、2025年以降の供給力不足のためガス火力発電所の廃止を延期
ニューヨーク州独立系統運用者(NYISO)は2023年11月20日、2025年に予定されていたピーク対応発電所(高い電力需要がある時間にのみ稼働する発電所、「ピーカー」とも呼ばれる)の廃止を延期すると発表した。対象はゴワナスガス火力発電所2、3号機とナローズガス火力発電所1、2号機であり、合計発電設備容量は546.92MW。NYISOによると、電力需要の伸びと窒素酸化物(NOx)排出を抑制する州規則「peaker rule」により2025年後半から最大446MWの供給力不足が見込まれており、上記の発電所を運転延長することで供給力を確保するという。延長期間は2年間であり、その間に供給信頼度確保の手段が見つからない場合は、さらに2年間の追加延長が検討されている。
2023.11.20
中国:分散型太陽光発電設備1億kW超え
大手紙は2023年11月20日、国家能源局の統計データによると、分散型太陽光の設備容量が1億kWを超えたと報じた。屋上型太陽光発電を含む、10kV以下の電力系統に接続する6MW以下の分散型太陽光発電設備は、農村地域での促進政策により、これまで500万世帯で設置された。国家能源局は農村地域の開発可能屋上面積は推定で約273億m2、8,000万世帯分があり、持続的に開発可能と見込んでいる。
2023.11.20
香港:香港初の商業用水素ステーション着工
中国石化集団公司(シノペック)は2023年11月20日、香港特別行政区新界元朗区に香港初となる商業型マルチ水素ステーション(ガソリン、ガス充填、充電など併設)の着工を発表した。同ステーションは水素バス、タクシーなど公共交通機関向けのほか、民間の燃料電池自動車(FCV)などもサービス対象であり、供給能力は1日当たり最大1,000kgとなっている。今後、シノペックは太陽光発電による水素製造や水素による発電など同ステーションの機能を拡大する予定である。
2023.11.17
米国:財務省とIRS、クリーンエネルギーへのITC適用ガイダンスを発表
米国財務省、内国歳入庁(IRS)は2023年11月17日、インフレ抑制法(IRA)のクリーンエネルギープロジェクトに対する投資タックスクレジット(ITC)についてガイダンスを発表した。ガイダンスでは洋上風力プロジェクトに対するITCの適用について、海底ケーブルや陸側変電所の構成部品など関連設備の適格性を明確にしている。クリーンエネルギーイノベーション・導入担当の大統領顧問であるポデスタ氏は、IRAによって民間企業が1,240億ドル以上のクリーンエネルギー投資を発表しているとし、金利上昇やサプライチェーンの課題など、洋上風力発電事業者が直面している状況を認めつつも、先行きに明るい見通しがあると発言している。
2023.11.17
中国:南方電網、2025年まで新規1億kW新エネルギー系統接続能力を具備
地元メディアは2023年11月17日、中国南部5地域の電力供給事業者である南方電網公司が深セン市のエネルギー関連フォーラムで、2025年までの供給側の太陽光、風力、エネルギー貯蔵など新型エネルギーの受け入れ能力は1億kW以上であることを示した。同社によると電力系統のデジタル化構築や電力市場のグリーン電力取引を推進し、地域内、広域を含むモデル取引の運用経験を、今後全エリアの電力市場で適用することを目標にしている。
2023.11.16
米国:米国太陽光業界団体、蓄電池製造の課題に関する報告書を発表
太陽エネルギー産業協会(SEIA)は2023年11月16日、米国における蓄電池製造の課題について取り上げた報告書を発表した。同報告書にてSEIAは、インフレ抑制法(IRA)などの政策によって米国の蓄電池製造の競争力が高まっている一方で、戦略的な対策を講じなければ、早ければ2025年に蓄電池の供給力は需要を下回る可能性があると予想している。特に、蓄電池製造における最大の課題は原料のコストと調達であるとし、リンおよびリチウムは十分な供給量を確保できる見込みがあるものの、黒鉛については現状の供給力では2030年の国内需要を満たすことができないと指摘する。SEIAは、米国の蓄電池産業を強化するために、原料や部品の新たな調達先の検討や、労働者の訓練、州による効果的な支援策などが講じられる必要があるとしている。また、蓄電池製造者が合理的なコストで原料を調達し、生産効率を十分に高められた場合、IRAの後押しにより、中国製品とのコスト競争力を持つことができるとの期待を示している。
2023.11.16
ポルトガル:政府の入札に10カ国から50社が参加を表明
エネルギー情報誌は2023年11月16日、ポルトガルで初となる洋上風力発電の入札に10カ国から50社が参加と報じた。同国政府は2030年までに200万kWの稼働を目標として3つの海域を洋上風力発電事業用に指定し、事業者から参加の意思表示(Expressions of Interest)を求めていた。50社の中にはポルトガル、スペインの事業者(石油・ガス開発事業者のGalp、Repsol、電力・ガス供給事業のAcciona、Naturgy、Iberdrolaなど)が多いが、国際的な事業者であるEquinor(ノルウェー)、RWE(ドイツ)、住友商事、丸紅(日本)が含まれる。2024年1月以降、政府はこれらの事業者と「対話フェーズ」と呼ぶ段階に移行し、入札への参加資格や入札の詳細内容を協議することになる。ポルトガルは着床式事業に適した海域が少なく、浮体式事業への期待が高い。2019年から浮体式のデモ事業WindFloat Atlantic(発電出力:2万5,000kW)が稼働しており、平均的な稼働率は35%となっている。
2023.11.16
スウェーデン:政府、原子力を大きく拡大する新しいロードマップを発表
スウェーデン政府は2023年11月16日、2035年までに大型原子炉を2基相当以上新設し、さらに2045年までに同10基相当の拡大を図るという新しいロードマップを発表した。同ロードマップでは以下の4つのポイントが提示された。第一に、原子力発電を推進するコーディネーターを任命すること、第二に、投資インセンティブ付与のためのリスク分担と融資モデルを提案すること、第三に、2035年までに少なくとも総出力250万kWの原子力発電を新設すること、第四に、2045年までに新たな10基の大型原子炉に相当する出力の拡大を図ること。ブッシュ エネルギー・ビジネス・産業大臣は「スウェーデンは、再び原子力発電の先進国となり、西側諸国のグリーン転換の原動力となる基礎を築きつつある」と述べた。また、スヴァンテソン財務大臣は、「国が財政的役割を果たさなければならない。ここ数年、原子力の建設のないことがいかに高くつくかが明らかになった」と語った。
2023.11.16
フィリピン・米国:二国間原子力協定締結、米国のSMR輸出が法的に可能へ
米国務省(DOS)のブリンケン長官とフィリピンのエネルギー省(DOE)のロティージャ長官は2023年11月16日、民生用原子力協力協定に署名した。同協定が発効すれば、米国からフィリピンへの原子力資機材の移転が可能となる。DOSは、フィリピンが小型モジュール炉(SMR)を含む先進的な原子力技術を米国から導入すれば、エネルギー安全保障やベースロード電力需要のほか、気候変動目標の達成を支援できるとしている。マニラ・エレクトリック社、アボイティス・パワー社などがSMRに関心を示す中、DOEはこれらの企業が米国のニュースケール社、USNCなどのSMRへのアクセスを可能にする同協定の重要性を強調した。カールソン駐フィリピン米国大使は同年10月、フィリピンへの投資に興味を持つ米国の原子力企業は多いが、原子力協定がないために躊躇していると述べていた。フィリピン政府は、2032年までに120万kWの原子力発電を導入し、2040年までに240万kW、2050年までに480万kWへの増量を検討中とされる。
2023.11.15
英国:規制機関、地域単位のエネルギーシステム監督機関の設置方針を発表
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2023年11月15日、グレートブリテン島の各地域単位でエネルギーシステムの計画や運用を監督する新たな機関「Regional Energy Strategic Planners(RESPs)」を設置する方針を固めたと発表した。ネットゼロに向けたエネルギーシステムの計画は、国家単位では独立機関「Future System Operator(FSO)」が2024年から担うことになっているが、OFGEMはネットゼロへの取り組みを効率的に進めるため地域レベルで戦略的な計画を立てられる機関の必要性について2022年4月に検討を開始し、その後意見公募を経て今回RESPsの設置を決定した。発表によるとグレートブリテン島で最大13のRESPsを設置し、これらをFSOが統括する。RESPsは地域単位のシステム計画策定に向け地域のエネルギーネットワーク事業者や自治体政府と連携するほか、今後拡大が想定されるローカルフレキシビリティ市場のファシリテーター的役割(市場の導入、監視など)を担うとしている。なお、配電系統のリアルタイム運用は、これまで通り既存の配電事業者(DNO)が担うとしている。
2023.11.15
ドイツ:ドイツ政府がSiemens Energyに信用保証を提供
ドイツの大手エネルギー企業Siemens Energyは2023年11月15日の年次記者会見で、75億ユーロの政府保証を得たことを発表した。Siemens Energyの受注残高は約1,120億ユーロに達しているが、エネルギーセクターのプロジェクト期間は長期となるため、保証が必要になる。保証額は120億ユーロとなり、そのうち110億ユーロは民間銀行団から、残りの10億ユーロはドイツ銀行が率いる銀行団から提供される予定である。風力発電部門であるSeimens Gamesaの業績悪化により、Seimens Energyは2023年度に46億ユーロの純損失を計上して経営状況の悪化が懸念されることから、銀行団との協議が難航していた。この状況を受け、Seimens Energyはドイツ政府に保証を求めており、今回ドイツ政府が120億ユーロの保証額に対して75億ユーロの裏保証(counter-guarantee)を行うことで合意したものである。ドイツ政府の発表では、この措置により、従業員に対する賞与および株主への配当が一定期間停止されるとされている。また報道によれば、Seimens Energyはこの保証に加えてデンマークやスペインの利害関係者から30億ユーロの保証を追加することを検討していることが伝えられている。Seiemens EnergyはSeimens Gamesaの立て直しを検討しており、11月21日に詳細を発表する予定としている。
2023.11.15
イタリア:一方的な料金変更の強制により大手含む小売事業者6社に制裁
イタリアの競争・市場保護委員会(AGCM)は2023年11月15日、Enel、Eni Plenitude社などの電力・ガス小売事業者6社に対し、現行法に反した濫用的商法を理由に罰金を科したと発表した。EnelとEni Plenitude社の罰金はそれぞれ1,000万ユーロと500万ユーロに上り、イタリアのエネルギー事業者Acea Energia社をはじめとする他4社に対しても5,000~56万ユーロの罰金が科される。制裁の対象となった事業者は、料金の変更やその時期を事業者に委ねる契約条項を根拠に、およそ400万人以上の顧客を対象に一方的にエネルギー料金の変更を行ったとして今回の措置が講じられた。Enelは今回の処分を不服として法的措置をとる意向を示している。
2023.11.15
韓国:韓国、クリーン水素認証制度を導入
現地メディアは2023年11月15日、クリーン水素認証制度の導入のための「水素経済育成および水素安全管理に関する法律(水素法)」の一部改正案が議決され、11月30日から施行されると報じた。水素法は2021年2月に施行され、水素充填ステーションおよび燃料電池の設置要請制度や水素特化団地のモデル事業などに関して規定している。今回の改正案ではクリーン水素の認証基準や手順、認証後の管理、認証機関の指定などについての規定が設けられ、認証基準が5つに区分された。また、クリーン水素認証を受けた生産者やユーザーに対して政府による行政的・財政的支援を可能とすることも規定された。
2023.11.13
米国:イリノイ州、2026年からのSMR建設を可能とする新法案成立へ
2023年11月13日付の報道によれば、イリノイ州のJ.B.プリツカー知事(民主党)は、州内での原子力発電所の建設禁止(モラトリアム)を解除する新法案に署名する意向を表明した。同法案(HB2473)は、2026年以降に30万kWまでの小型モジュール炉(SMR)の建設を可能とするもので、州議会の上院で44対7、下院で98対8の賛成多数で可決された。同州では、2023年5月にモラトリアムを解除し、大型原子炉を含む先進型原子炉の建設を可能とする法案が州議会の上下両院で可決されていたが、同年8月にプリツカー知事が「先進型原子炉の広すぎる定義など、法案中の曖昧な定義は、建設費が非常に高くつく大型原子炉の拡散への扉を開くことになる」として、拒否権を行使していた。
2023.11.10
中国:再エネ電源の拡大を見据え、石炭火力の容量料金制に向け方針発表
国家発展改革委員会(NDRC)は2023年11月10日、拡大が続く新エネ(風力、太陽光、水素など含む)電源への対応のため、石炭火力の容量料金制を発表した。これまで石炭火力の導入コストは卸電力料金の一部を充当するかたちで、発電実績にもとづき回収していたが、2024年からはコストの約3割程度、2026年には5割までを託送料金に算入する方針となっている。NDRCは従来の制度によって石炭など燃料費高騰による石炭発電事業者の発電意欲が低下していたことを改善し、供給の安定化を図れると見込んでいる。
2023.11.10
中国:中国東方電気、世界初18MWの風車タービンを出荷
現地紙は2023年11月10日、発電機器メーカーの中国東方電気集団公司と国有発電大手の華能集団公司が共同で開発し、中国東方電気傘下の東方電気風電公司が製造した世界初の18MWの風車タービンが出荷されたと報じた。それによると、同タービンは中国メーカーが完全に独立した知的財産権を有し、ブレードの長さは126m、ローター径は260mに達する。同発電機は単機で年間7,200万kWhの発電が可能であり約4万世帯の1年間の電力を賄うことができるという。
2023.11.09
英国:小売事業者6社、設置目標未達により1,080万ポンドを基金に拠出
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2023年11月9日、British Gas、OVOなど英国小売事業者大手6社が、社会的弱者救済を目的としたOFGEMの基金に総額1,080万ポンド(約20億円)を自発的に拠出することに合意したと公表した。英国では2022年1月から開始された2025年12月まで4年間でのスマートメーター設置目標の枠組みにおいて、毎年、OFGEMが小売事業者ごとに設置台数義務を課すことになっており、上記6社は初年である2022年、各社合計で設置台数が約100万台足りなかったことに基づき、今回の拠出を行うこととなった。OFGEMはこの拠出を受けて6社に対して未達要因の調査は行わないこととしている。なお、英国では2023年6月時点で、全メーターの約58%に相当する3,300万台超のスマートメーターが家庭および小規模企業に設置されている。
2023.11.08
韓国:韓国電力、大企業向けの電気料金を値上げ
現地メディアは2023年11月8日、韓国電力公社が産業用電気料金を9日から1kWh当たり平均で10.6ウォン(約1円)値上げすると報じた。一方で、住宅用や小規模事業者、中小企業向けの電気料金は経済状況から据え置きとなった。国際的エネルギー価格の高騰の電気料金転嫁が十分に出来ていないことから、韓国電力公社が大幅な赤字を計上しており、2023年上半期時点での累積赤字が47兆ウォン(約4.7兆円)に達している。
2023.11.07
中国:内モンゴル、2025年までに新エネ設備量倍増計画
内モンゴル自治区政府は2023年11月7日、2022年末を基準年として、2025年末までの3年間で、水素、風力、太陽光など新エネルギーの設備容量を倍増する計画を発表した。計画によると、2022年末時点の新エネ設備容量6,182万kWを2025年末までに1億5,000万kW以上、2030年には3億kW以上とする目標である。さらに、揚水発電や、蓄電池などの調整電源の設置も推進し、2025年で1,500万kW、2030年には3,000万kWとする目標を掲げた。同計画は、目標達成のためには1兆5,000億元(約30兆円相当)以上の投資が必要と推定している。
2023.11.07
イタリア:Enel、2023年1~9月期決算を発表、好決算により業績予想を上方修正
イタリアのエネルギー大手Enelは2023年11月7日、2023年1~9月期決算を発表した。火力発電電力量の減少に伴う売電収入の減少などにより、売上高は前年同期比34%減の695億ユーロと減収になった一方、水力発電電力量の増加や小売価格の適正化に伴う小売事業の利益拡大などに伴い、特殊要因を除いた調整後EBITDAは前年同期比29%増の163億ユーロ、調整後純利益は同65%増の50億ユーロと増益を計上した。また、当期の好決算を受けて2023年通期の業績予想に関して、調整後EBITDAは215億~225億ユーロ(前回予想:204億~210億ユーロ)、調整後純利益は64億~67億ユーロ(同:61億~63億ユーロ)と上方修正したことを発表した。なお、同社は2023年11月22日に新しい戦略計画の発表を予定している。
2023.11.07
米国:NERCが2023年冬季信頼性評価を発表、広範囲で電力不足リスク有
北米電力信頼度協議会(NERC)は2023年11月7日、2023年の冬季信頼性評価(2023-2024 Winter Reliability Assessment)を発表した。大寒波などの異常気象が発生した場合、発電機停止やガス供給支障、需要の増加により、米国の広範囲で予備力が不足する可能性があるという。電力不足のリスク有と評価された地域は、MISO、SPP、ERCOT、PJM、SERC(東部・中部)、NPCC-NE。NERCは、PJMとSERCの発電資源は昨冬とほぼ変わらない一方、冬季嵐Elliottで被害を受けた地域のピーク需要予測が増加していることを特筆した。またSPPは多くの風力資源を持っており、予備力マージンも38.8%と試算されているが、風況によっては需給ひっ迫に至る可能性がある。NERCは本報告書で、信頼度調整機関(RC)や需給調整機関(BA)に対して燃料調査の実施と供給不足に備えた運転計画の作成、発電事業者に対しては発電所の耐候性向上を勧告している。さらに、州や規制当局に対しては、電力・ガス節約の呼び掛けなどによる系統運用者の支援を推奨している。
2023.11.07
米国:PG&E社、ディアブロキャニオンの運転ライセンスの延長をNRCに申請
PG&E社は2023年11月7日、ディアブロキャニオン原子力発電所(PWR、117万kW×2基)の運転を20年延長するためのライセンス更新を原子力規制委員会(NRC)に申請したことを発表した。州法および州知事の指示に従った措置であると説明している。同発電所は運転期間を2030年まで延長する州法が2022年9月に成立しているが、運転ライセンスは2024年と2025年で期限を迎えるため、ライセンスの更新申請が必要となっていた。今回の申請が認められれば、2030年以降もライセンス上は運転が可能となる点について、同社はNRCでの申請の標準が20年であると説明している。NRCは今後、申請書が審査に十分であるかどうかを判断した後、数年にわたる評価プロセスを開始する。なお、審査期間中は、現在の運転期限を越えてもライセンスは有効であり、NRCが本申請に係る最終決定を下すまで、同発電所は運転を継続することが可能となっている。
2023.11.03
ドイツ:BSHが海洋空間計画案に関する公聴会を実施
エネルギー情報誌は2023年11月3日、ドイツ連邦海事水路庁(Federal Maritime and Hydrographic Agency:BSH)が2023年9月1日に発表した海洋空間計画案(FEP2024)に関する公聴会を11月2日に開催したことを伝えた。この計画案はドイツ政府の洋上風力開発目標(2035年までに40GW)に基づくものであり、北海およびバルト海のドイツの排他的経済水域における開発海域と開発規模、入札および系統接続の時期などが示されている。FEP2024に対して各機関から意見が出されており、例えば、連邦洋上風力エネルギー協会(Fedral Association Wind Energy Offshore eV:BWO)は、2つの開発海域について、風力タービンの風下側の風速減衰を考慮した上限開発規模の縮小(2GWから1GWへ変更しタービン基数を削減)と、開発時期の先送りを提案する一方、ドイツの送電系統運用者(50Hertz、Amprion、TenneT、Transnet BW)は上記の開発規模の維持を提案するとともに北海における開発可能エリアの不足に対する懸念も示しており、各機関で意見の相違が見られる。BSHは出された意見をもとにして、2024年にFEP2024の修正案を発表する予定である。
2023.11.01
インドネシア:政府、国際パートナーシップ投資計画案を発表
2023年11月1日付報道によると、インドネシア政府は、「公正なエネルギー転換パートナーシップ(JETP)」に基づく投資・政策計画(CIPP:Comprehensive Investment and Policy Plan)案を発表した。JETPでは、主導する日・北米・欧州の10カ国・地域が200億ドルの公的および民間資金をインドネシアの気候変動対策に割り当てることとなっており、エネルギー・鉱物資源省(MEMR)内に設置されたインドネシア政府のJETP事務局が包括的な投資計画を作成していた。発表された計画案では、2030年における発電電力量における再エネ割合目標が昨年合意した共同目標の34%から44%に上方修正され、CO2排出量は同じく共同目標の2億9,000万tから2億5,000万tに下方修正された。一方で工業団地等が運営する石炭火力発電所等のオフグリッドの電力システムは計画から除外された。この措置について関係者は、低廉な電力を大量に必要とするニッケル製錬部門の保護策を検討する時間を確保するため、と説明している。今回発表された計画案は2週間パブリックコメントに付され、11月30日から12月12日までドバイで開催されるCOP28の前に正式発表される予定である。
2023.11.01
チェコ:チェコ政府、同国のSMR開発ロードマップを承認
チェコ産業貿易省は2023年11月1日、作業部会が作成した報告書「チェコSMRロードマップ:適用可能性と経済への貢献」を同国政府が承認したことを明らかにした。同報告書は、同国における小型モジュール炉(SMR)の可能性を示し、立地、投資家モデルおよび法改正を提案している。具体的には、様々な設計オプションの情報も盛り込み、2030年代前半の建設開始を求めており、チェコのSMRプロジェクトはまだ開発の極初期段階にあるとして、政府による同開発の支援継続を示唆している。また、立地候補としては、既存発電所のテメリンとドコバニも含む合計45カ所を挙げ、現在の石炭火力発電所サイトも有望としている。シケラ産業貿易大臣は、「SMRは、電力システムに、発電と熱供給で大きな付加価値をもたらし、2030~2040年代以降、大型炉を補完する。ロードマップによりチェコ企業は、国内外のプロジェクトに参加し、同分野の発展に重要な役割を果たすことができる」と述べた。
2023.10.31
米国:Ørsted、ニュージャージー州沖の2つの洋上風力プロジェクトを中止
デンマークの電気事業者Ørstedは2023年10月31日、ニュージャージー州沖の2カ所の洋上風力プロジェクト(Ocean Wind1:1,100MW、Ocean Wind2:1,1248MW)開発を中止することを発表した。同社は開発中止の理由として、インフレや金利上昇によるプロジェクトコストの増加や、Ocean Wind1の建設に用いる船舶の調達が遅延していたことなどを挙げている。Ocean Wind1については、2023年内に陸側の工事を開始する段階まで進んでいたため、中止に伴い約28億ドルの減損が発生すると発表している。ニュージャージー州のマーフィー知事(民主党)はこれに対し、「Ørstedのニュージャージー州へのコミットメント放棄の決定は言語道断であり、同社の信頼性と能力に疑問を投げかけるものである」とのコメントを発表している。
2023.10.30
中国:江蘇省電力、国内最大規模のV2G実証センターを稼働
中国送電大手の国家電網有限公司傘下の国網江蘇省電力は2023年10月30日、電気自動車(EV)の蓄電池を電力インフラとして活用する「V2G(ビークル・トゥ・グリッド)」で全国最大規模となる実証センターを同省無錫市で稼働させた。EV50台を接続して電力需給バランスの維持、電力網の運営効率向上、分散型再生可能エネルギーの確実な接続などに重要な意義を持つとしている。EV所有者には補助金が付与される。江蘇省電力は、「V2Gは再エネ利用を支え、蓄電池のモデル転換・高度化を促す重要な手段」としている。同実証センターは敷地面積1.45万m2、太陽光発電設備、エネルギー貯蔵設備、EV充電、給電制御など多くの機能を備える。計画中の第2期プロジェクトでは急速充電や移動式の充電・電池交換などの機能を追加し、接続EV数を144台に拡大する予定。
2023.10.25
米国:ロサンゼルス地域自治体らが2028年に向けたGHG削減計画を発表
カリフォルニア州ロサンゼルス市によって設立されたクリーンテック事業支援団体のLos Angeles Cleantech Incubator(LACI)は2023年10月25日、2028年ロサンゼルスオリンピック開催までのロサンゼルス地域における脱炭素化の加速を目的とした官民パートナーシップ「Clean Energy Partnership」を立ち上げるとともに、同パートナーシップによるGHG削減ロードマップを発表した。ロードマップでは、建物の電化、分散型クリーンエネルギーの導入拡大、系統のレジリエンスの向上を3つの柱とし、160万台の家庭用ヒートポンプ導入、1,298MWのDRが可能な分散型エネルギー資源の導入など、2028年に向けた具体的な目標が示されている。パートナーシップの主要メンバーとしては、ロサンゼルス地域の市・郡政府機関の他、カリフォルニア州エネルギー委員会、州系統運用者のCAISO、地元電力会社のサザン・カリフォルニア・エジソン(SCE)およびロサンゼルス市水道電力局(LADWP)などが参加している。
2023.10.30
中国:石油国際取引決済でデジタル人民元初利用
大手紙は2023年10月30日、上海石油天然ガス取引所(SHPGX)で27日、中国石油天然気傘下のペトロチャイナ・インターナショナル(PetroChina International Corp Ltd)が開設した大手銀行中国交通銀行のデジタル口座を利用した、約100万バレルの原油取引で初めてデジタル人民元(e-CNY)が決済に利用されたことを明らかにした。ペトロチャイナはデジタル決済を利用した原油資源調達の促進は、国際企業にとって新たな取引手段の構築、原油取引の多様化、人民元の国際化促進に役立つと表明している。また、同類の決済を推薦している上海市政府は、国内取引の利用に加え、国際石油ガス貿易取引の利用拡大により、迅速で安定的・効率的な取引・決済手段を提供し、国内外の市場の多様なニーズを満たすとしている。
2023.10.29
フィリピン:エネルギー省、国家総電化ロードマップを公表
2023年10月29日付報道によると、エネルギー省(DOE)は、2023~2032年の国家総電化ロードマップ(NTER:National Total Electrification Roadmap)を公表した。NTERは政府が定めた2028年までに電化率100%を達成するという目標に沿っている。NTERでは、民間セクターの投資を優先的に行うオフグリッド地域を特定しており、DOEはマイクログリッド・システム法に基づき、競争的選定プロセス(CSP)を通じてこれらの地域で民間によるマイクログリッドを進めることとしている。2020年国勢調査によると、フィリピンでは130万世帯が送配電システムに接続されていないオフグリッド地域に住んでいる。
2023.10.27
米国:デューク社、フロリダ州でグリーン水素実証プロジェクトを計画
ノースカロライナ(NC)州に本拠を置く電力大手Duke Energy社(以下、デューク社)は2023年10月27日、フロリダ州でクリーン水素を製造や貯蔵、燃焼するシステムの実証プロジェクトを開始することを発表した。既存のデバリー太陽光発電所で発電した電力を電解装置に供給することでグリーン水素を製造し、貯蔵する。貯蔵した水素は燃料とし、25%混焼から専焼まで幅広い混焼率で発電に用いる。同社によると、水素専焼で稼働する燃焼タービンは国内初であり、発電・送電戦略担当上級副社長レジス・レプコ氏は「水素がクリーンエネルギーの将来において大きな役割を果たす可能性があると予想している」と述べた。このプロジェクトは2023年後半に建設を開始し、2024年に完成する見込み。なお、2023年10月13日時点で、バイデン政権が選定したクリーン水素ハブ(H2Hub)プロジェクトには選出されていない。
2023.10.26
欧州:2023年のPPAの新規契約量が7.8GWに到達
欧州のPPA(電力購入契約)事業団体RE-Source Platformは2023年10月26日、2023年の欧州におけるコーポレートPPAの新規契約量が10月時点で7.8GWに達したことを報告した。これは、2021年に記録された7.6GWを上回る成果となる。欧州のPPA市場をリードしている主要業界は、IT(2023年の契約量は2GW)、重工業(同1.8GW)、電気通信(同650MW)であり、2023年の新規契約量の60%以上を占めている。近年では、小売業、運輸業、自動車産業などでも契約量が増加している。同団体の政策担当ディレクターであるスキャンラン氏は「企業が脱炭素化の目標を達成し、EUの2030年までの目標である再エネ45%を達成するためには、PPA市場の規模を拡大する取り組みが必要だ」と協調した。また、「PPAのポテンシャルを最大限に引き出すためには、電力市場改革が迅速かつ賢明な形で可決される必要がある」と述べた。同団体は他にも価格リスクを管理するための支援や、企業の調達担当者への教育支援を求めている。
2023.10.25
韓国・サウジアラビア:尹大統領、サウジ皇太子とエネルギー協力共同声明
有力紙は2023年10月25日、サウジアラビア訪問中の尹大統領とモハンマド・ビン・サルマン皇太子・首相が共同声明を発表し、エネルギー分野などで相互の投資を拡大することで一致したことを伝えた。両国は、水素経済、スマートシティ建設、新しいモビリティ技術、原子力開発、再エネ開発などの分野で相互投資を拡大し、またサウジから韓国へのクリーン水素輸出などでも協力することを確認した。
2023.10.24
英国:セントリカ、系統接続待ちプロジェクト計62GWが実現不透明
英国のエネルギー大手Centricaは2023年10月24日、同国で近年問題となっている系統接続待ち発電プロジェクトの増加に関するレポートを発表した。これによると、送電系統への接続待ちとなっているプロジェクトの総容量は約371GWに上り、うち約114GWは2029年までの接続見通しが立っている一方、約62GWは資金未調達や土地使用権および計画承認が未取得であるなど、実現性が不透明なまま申請が行われている状態となっている。現行のルールでは系統接続の審査は申請順に進められていることから、報告書は、審査プロセスを滞らせている実現性が不透明なプロジェクトが順番から除外される必要があると指摘している。一方、規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は、接続審査ルールの変更案(CMP376)を検討中であり、11月10日までに検討結果を発表すると見られている。同変更案では、接続申請中のプロジェクトが土地使用権の取得などのマイルストーンを達成できなかった場合に、接続審査を行っているNational Grid ESOがプロジェクトを順番から除外することを可能にすることが検討されているが、このルール変更を新規申請分だけでなく既存のプロジェクトにも適用するかが焦点となっている。同レポートは、既存のプロジェクトにも適用された場合には、短期間で約12GW分の空きが発生し、実現可能性の高いプロジェクトの順番が繰り上げられることになるとしている。
2023.10.21
中国:「一帯一路」国際フォーラム、質の高い発展に向けた8項目を発表
大手紙は2023年10月21日、北京で開催された「一帯一路」第4回の国際フォーラムで習近平国家主席は質の高い発展のための8項目政策を発表したことを伝えた。中国は国家間、地域間の立体的相互接続ネットワークの構築、グリーン発展の促進、科学技術革新の推進などの支援に重点を置き、実務協力の展開、民間交流の支援を行うとしている。また金融支援として、新たに国有銀行から4,300億元(1元:約20円)の融資、2030年までにパートナー国10万人の人材育成を図るとしている。
2023.10.20
中国:中国の風力発電設備容量、8月末で4億kWを超過
2023年10月20日の地元紙報道によると、中国の風力発電設備容量が8月末で4億kWを超えた。中国の風力発電設備容量はここ数年、年間5,000万kWのハイペースで拡大している。政策による推進と、産業界全体の努力により、中国では技術と製品のイノベーションが加速しており、国家能源局は、中国が大容量ユニットの研究開発、大型のブレードやタワーの開発で世界のトップレベルに立つと評価している。また8月末の洋上風力発電設備容量も3,171万kWとなった。中国再生可能エネルギー学会によれば、中国の洋上風力発電設備容量は2030年には2億kWを超える見込みであるとしている。
2023.10.10
米国:ノースカロライナ州議会、原子力をクリーンエネルギーとする法案を可決
米下院エネルギー・商業委員会は2023年9月28日、同年8月8日にハワイ州マウイ島で発生した山火事に関する公聴会を開催した。本公聴会には、ハワイアン・エレクトリック(HECO)の社長兼CEOであるShelee Kimura氏をはじめ、同州公益事業委員会の委員長であるLeodoloff Asuncion Jr.氏、同州エネルギー局の最高責任者であるMark Glick氏などが参加した。公聴会では下院議員らから、山火事に至った原因や送配電線の維持・管理状況などについて多くの質問があったが、現在も州当局による原因調査が行われていることもあり、関係者から明確な回答はほとんど出されなかった。当日の火災に関して、午前に発生した1回目の発火事象はHECOの配電設備に起因するものであるとKimura氏は認めたものの、消防による鎮火活動により広範な山火事には至らなかったと述べている。一方で、午後に発生し広範な山火事に繋がったとされる2回目の発火事象については、依然として原因不明であるとしている。HECOは、電線断線後における再通電禁止処置をどの時点で決定していたかなど、詳細な情報を引き続き収集していくとのこと。
2023.10.20
米国:Navigator社、CO2パイプラインプロジェクトから撤退
Navigator CO2 Ventures社(Navigator社)は2023年10月20日、米国中西部で複数の州にまたがるCO2パイプラインネットワークを構築するプロジェクトから撤退することを発表した。同社は、主な理由としてサウスダコタ州とアイオワ州における規制プロセスが予測できないことを挙げている。サウスダコタ州は2023年9月、同プロジェクトが住民に影響を及ぼさないことを証明できなかったとし、Navigator社の申請を却下しており、その後アイオワ州への申請を一時停止していた。また、サウスダコタ州は2023年9月、Summit Carbon Solutions社(Summit社)のパイプラインプロジェクトを却下したが、Summit社は開始時期を2024年から2026年に延期し、プロジェクトを継続する意向を示している。
2023.10.19
中国:世界の地熱資源の6分の1を占める中国で開発が加速
大手紙は2023年10月19日、中国で地熱資源の開発が加速していると報じた。2021年年末時点で、中国の地熱の空調、温泉、農業分野での利用推定規模は世界首位となっているが、カーボンニュートラル目標の達成に向けて発展の余地が大きいとされている。政府は2025年までに地熱の冷暖房面積を2020年比で50%増やし、資源条件の良い地域で地熱発電のモデルプロジェクトを建設し、全国の地熱発電設備容量を2020年比で2倍にする目標を掲げている。今後、FIT(固定価格買取制度)などの政策的な支援が期待されている。なお、大半の地熱資源は中低温資源であり、いわゆる「地熱発電」資源は中国では極めて限定的で、チベット等に小規模な地熱発電所があるのみで、潜在的な発電能力も174万kWと見積もられている。
2023.10.18
ノルウェー:ノルウェー最初の洋上風力入札が延期へ
エネルギー情報誌は2023年10月18日、ノルウェーエネルギー省がノルウェー最初の洋上風力入札の延期を発表したことを伝えた。同省は2023年3月に、ノルウェー最初の洋上風力入札としてUtsira NordとSørlige Nordsjø IIの2海域の入札を実施することを公表しており、それぞれ2023年9月1日、8月4日を入札期限としていた。Utsira Nordは3エリアで構成され、それぞれ500MW、3エリア合計1.5GWの発電設備容量で、浮体式洋上風力の適用が計画されている。Sørlige Nordsjø IIは1エリアで容量1.5GW、着床式洋上風力が適用される計画である。Utsira Nordについては、価格以外の評価基準でリース権入札が実施された後、国家補助の入札が実施されることとなっており、一方Sørlige Nordsjø IIについては、リース権と国家補助が同時に入札されることになっている。今回の入札延期は、国家補助の方法に対して、欧州自由貿易連合(EFTA:European Free Trade Association)の監視機関であるEFTA Surveillance Authority(ESA)からの承認取得が遅れたことによるものである。Sørlige Nordsjø IIについては2023年11月15日に延期され、Utsira Nordについては時期未定で、少なくとも2024年まで延期されることになっている。
2023.10.18
米国:DOE、電力系統のレジリエンス強化などを目的に約35億ドル拠出
米国エネルギー省(DOE)は2023年10月18日、米国全土の電力系統のレジリエンスと供給信頼性を強化するため、44州にわたる58件のプロジェクトに34億6000万ドルを拠出することを発表した。これはインフラ投資・雇用法(IIJA)に基づく資金提供であり、いずれも不利な立場にある地域社会を支援するバイデン政権の取り組み「Justice40イニシアティブ」の一環である。一例として、ジョージア州環境金融局が関与するプロジェクト(投資額5億700万ドル以上)では、蓄電池、マイクログリッド、電力系統の信頼性、送電線の新設への投資を通じて、スマートグリッドインフラを包括的に更新する。これにより停電の頻度と時間が減少し、低所得世帯のエネルギー料金負担を軽減し、140人以上の建設雇用が創出されるという。
2023.10.17
EU:EU理事会、電力市場改革案に合意 既存発電所へのCfD適用を認める
EU理事会は2023年10月17日に開催したエネルギー閣僚理事会においてEU電力市場改革案について合意した。争点となっていた既存の脱炭素電源(太陽光、風力、地熱、流れ込み式水力、原子力)の運転延長に向けた設備投資への双方向の差額決済契約(CfD)の適用については、EUの国家補助規則を逸脱しないことを条件に、適用を認めることで合意がなされた。なお、既設電源への双方向CfDの適用が任意である一方、新設電源については原則として双方向CfDを適用することが義務となる。今後はEU理事会と欧州議会による交渉が開始される予定であり、報道によると2023年内での政治合意を目指して議論が開始されるものとみられる。
2023.10.16
中国:2023年9月の電力需要、対前年比9.9%の大幅増
国家能源局は2023年10月16日、2023年9月の電力消費実績を公表した。それによると、2023年9月の電力消費量は7,811億kWhとなり、前年比9.9%の大幅な増加となった。分野別では、第1次、第2次、第3次産業は、それぞれ前年同月比8.6%、8.7%、16.9%増加し、第3次産業が電力需要全体の増加をけん引した。また、家庭用も前年比6.6%増加した。
2023.10.16
ドイツ:ガスパイプラインを水素輸送用に転換する作業が開始、ドイツ初の試み
ドイツの長距離ガス導管事業者OGEおよびNowegaは2023年10月16日、天然ガスパイプラインを水素輸送用に転換するための作業を開始した。同国北西部のEmsbürenコンプレッサーステーションで天然ガスの抽出が行われ、その後Emsbüren-Bad BentheimおよびBad Bentheim-Legdenの全長約46kmの区間が天然ガス網から切り離された。パイプラインの改良工事は、2025年に開始する予定である。本プロジェクトは、ドイツ北西部~中部のグリーン水素製造拠点、水素貯蔵設備、産業需要家を接続する”GET H2 Nukleus”の一環であり、「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト」(IPCEI:Important Project of Common European Interest)に選定されているため連邦の補助を受けて実施される。
2023.10.16
米国:2023年の天然ガス火力新設容量は860万kW、2年連続増加の見通し
米国エネルギー情報局(EIA)は2023年10月16日、米国において2023年1~9月までに、10基の天然ガス火力発電所が新規に稼働し(合計680万kW)、同年末までにはさらに6基、180万kWが稼動、2023年の新設容量は合計860万kWになる見込みであることを公表した。増設される設備は、「シンプルサイクル・ガスタービン(SCGT)」と「コンバインドサイクル・ガスタービン(CCGT)」の両方が含まれている。また、ガス火力が新設されるエリアは、メキシコ湾沿岸、アパラチア地域の天然ガス生産地域周辺およびフロリダ州に集中している。なお2022年は、天然ガス火力発電所11基が新規に稼動し、新設容量は合計560万kWであった。天然ガス火力発電所の総増設容量は、2018年以降3年間連続して減少した後、2022年から2年連続で増加した。
2023.10.13
アフリカ・ロシア:ロシア、ブルキナファソおよびマリと原子力協力覚書を締結
ロシア国営原子力企業ロスアトムは2023年10月13日、アフリカ西部の内陸国であるブルキナファソおよびマリと、原子力の平和利用分野における協力覚書をそれぞれ締結した。同分野で初めて締結したロシア-ブルキナファソ間の覚書では、原子力発電プロジェクトへの取り組み、産業・農業・医療における原子力利用、原子力インフラの開発、原子力技術に対する国民の意識向上など、幅広い分野で協力するとしている。一方、ロシア-マリ間の覚書では、優先課題と協力手段、および共同作業の関心分野が記載され、具体的には、原子力インフラの開発、原子力技術に対する国民の意識向上、基礎・応用研究、放射性同位元素の利用、原子力・放射線の安全とセキュリティ、人材育成、原子力研究施設、原子力発電だとしている。なお、マリとは、技術視察団の交換を行うことでも合意した。
2023.10.13
フランス:HYFLEXPOWER、世界初のグリーン水素100%によるガスタービン専焼
ドイツの大手発電設備メーカーSiemens Energyは2023年10月13日、大手製紙会社Smurfit Kappaのフランス中西部Saillat-sur-Vienneの工場敷地内で開発を進めていたHYFLEXPOWERプロジェクトにて、世界初のグリーン水素100%によるガスタービン専焼を成功させたと発表した。同プロジェクトはSiemens Energy、ENGIE Solutionsおよび4つの大学が参画しており、EUの研究・イノベーション枠組計画である「Horizon2020」から資金援助を受けている。工場敷地内に水電解装置(設備容量1,000kW)、水素貯蔵設備(設備容量1t)、Siemens EnergyのSGT-400ガスタービン(発電設備容量1万2,000kW)を設置し、2022年には天然ガスに水素30%を混ぜた混焼を実施、今般水素100%の専焼を成功させた。なお、燃料となる水素については、送配電系統から再エネ電力を受電し、その電力を利用し水電解装置からグリーン水素を製造するもの。
2023.10.13
米国:バイデン政権、7カ所のクリーン水素ハブプロジェクトを選定
バイデン政権は2023年10月13日、エネルギー省(DOE)がインフラ投資・雇用法(IIJA、2021年)に基づき合計70億ドルを拠出するクリーン水素ハブ(H2Hub)プロジェクト7件を選出した。対象となったのは、再エネとバイオマス由来の水素の活用を目指すカリフォルニア州のプロジェクト、豊富な天然ガスや風力資源から低コストで水素を生成し、国際的な水素輸出ハブの確立を目指すテキサス州のプロジェクト、アパラチア地域の豊富な天然ガスを活用したブルー水素を用いるウエストバージニア州のプロジェクト、原子力水素の活用を含むイリノイ州のプロジェクトなど。DOEはクリーン水素ハブの設立によって、合計で2万人以上の新規雇用を創出し、400億ドル以上の民間投資を呼び込むことに加え、毎年2,500万tのCO2排出量を削減できると試算している。
2023.10.12
中国:国家能源局、EUエネルギー委員会と対話会議を開催
国家能源局は2023年10月12日、北京でEUエネルギー委員会と第11回目となる対話会議を開催したことを明らかにした。局長の張建華氏とEUエネルギー委員のサイモン・シムソン氏が共同議長を務めた同会議は、エネルギー安全保障と変革、再生可能エネルギー、電力市場改革、グリーン電力の認証関連、グリーン水素などのテーマについて意見を交換し、これまでの実績と課題を確認しながら、協力プラットフォームについて、協力の焦点と方向性について合意した。「中国とEUの包括的戦略的パートナーシップが確実な成果を達成し、世界のクリーンエネルギー変革と気候変動への対応にさらに大きく貢献する」との張健華氏のコメントに対し、シムソン氏は「EUは中国とのグリーン開発協力を非常に重視しており、今回の対話を機会としてクリーンエネルギー分野での中国との協力を積極的に拡大し、より実質的な成果を達成するための協力を推進する意向である」とした。
2023.10.11
中国:1~9月の自動車新規登録台数の28.6%が新エネ車
2023年10月11日付報道によると、中国公安部は10月10日に2023年1~9月の自動車新規登録台数を発表し、電気自動車を含む新エネ車の新規登録が519万8,000台となり、前年同期比40%増、新規登録車全体の28.6%を占めた。9月末時点の新エネ車保有台数は1,821万台で、全体の5.5%を占め、そのうちの電気自動車は1,401万台である。
2023.10.10
スイス:世論調査、68%が電力供給に既設炉は必須、42%が新設の検討に前向き
スイス原子力フォーラムは2023年10月10日、スイス国民の68%が同国の電力供給に既設炉が不可欠とし、73%が安全である限り既設炉を稼働させるべきとする世論調査の結果を発表した。同フォーラムの委託を受けた調査会社デモスコープ社が同年9月に15歳以上の2,239人を対象に実施した世論調査の結果によると、スイスの電力供給には、再生可能エネルギーと組み合わせて原子力への依存を続けるべきと考える人が54%と過半数を占め、技術的な進歩があれば、同国での原子力発電所の新設を再検討することは正しいと考える国民が42%であった。さらに80%以上が、近年、スイスの国民と経済は原子力発電の恩恵を受けていると考えており、その理由として、安定供給と電気料金の低下を挙げた。
2023.10.09
EU:EU理事会、改正再エネ指令などで水素の利用を義務付け
EU理事会は2023年10月9日、改正再エネ指令案と、航空会社などに持続可能な航空燃料(SAF)の導入を義務付ける規則案(ReFuel EU)を可決し、両法が成立した。両法とも水素の利用が規定されている。改正再エネ指令に規定されたグリーン水素導入目標は、産業部門で使用する水素のうち2030年までに42%、2035年までに60%をグリーン水素(バイオマス由来を除く)とすることとなった。ただし例外規定が設けられており、化石燃料起源の水素の割合が一定程度(2030年に23%、2035年に20%)以下であることなど、特定の条件を満たせばグリーン水素導入目標を20%削減することが可能となる。またReFuel EUの成立により、航空燃料供給会社は、EU域内の空港で航空会社に提供する全燃料に占めるSAF(廃食油やバイオエタノール、水素とCO2などを原料とする燃料)の比率増加が義務付けられる。SAFの比率は2025年2%、2030年6%、2050年に70%に、また合成燃料の比率は2030年の1.2%から2050年の35%に段階的に引き上げられる。エネルギー情報誌は、EUで現在、主に肥料や化学品の生産、石油精製で年間約970万tのグレー水素が消費されているが、改正再エネ指令により、10年後に約400万tのグリーン水素の需要が生み出されることになると報じている。
2023.10.08
フィリピン:エネルギー市場、2040年には20兆円規模に達する見込み
2023年10月8日付報道によると、エネルギー規制委員会(ERC)は、フィリピンのエネルギー市場が2023年の6,300億ペソ(約1兆6,000億円)から2040年には7兆6,000億ペソ(約20兆円)規模に達する、との見通しを発表した。この中には、再エネ分野への投資として5兆8,000億ペソ(約15兆円)が含まれる。エネルギー省(DOE)が策定したエネルギー計画(PEP2020-2040)のクリーンエネルギーシナリオでは、再エネ割合を2030年までに35%、2040年までに50%に設定しており、この目標が実現されることが前提となっている。
2023.10.06
米国:ホルテック社、恒久停止したパリセード発電所の再稼働をNRCに申請
ホルテック社は2023年10月6日、一旦恒久停止されたパリセード原子力発電所(PWR、85万7,000kW)の再稼働を原子力規制委員会(NRC)に求めるプロセスを正式に開始したと発表した。今回NRCスタッフとの一連の公開会合の後に提出された申請書は、NRCの既存の規制枠内で同発電所の再稼働許認可を得るための道筋を示すもので、再稼働させるための一連の申請の最初のものとなる。同社は2022年5月に恒久停止された同発電所の廃炉を目的として取得したが、その後再稼働させる意向を示していた。同社は「パリセードの再稼働はミシガン州のカーボンフリーエネルギー発電と地域の送電網の信頼性を大幅に向上させ、高価なエネルギー輸入への地域の依存度を低減させる」と説明している。
2023.10.04
米国:コンシューマーズ・エナジー社、石炭火力発電所跡地に太陽光を建設へ
ミシガン州の大手エネルギー企業のコンシューマーズ・エナジー社は2023年10月4日、同年6月に閉鎖されたカーン石炭火力発電所(1、2号機)跡地に8万5,000kWの太陽光発電設備を建設する新たな計画を発表した。同社は2025年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖する計画で、カーン石炭火力発電所は当初の予定よりも15年前倒して閉鎖された。同社は、「サステナブル目標に向かってさらに前進しつつ、土地の良き管理者であり続け、地域社会に貴重な税金を納めるための最良の選択肢として、太陽光発電の設置があがった」とコメントした。なお、同社は2040年までに事業規模の太陽光発電を800万kW導入する計画である。
2023.10.02
韓国:新ハヌル2号機、試運転を開始
2023年10月2日付の報道によると、韓国水力原子力発電(KHNP)は、建設中の新ハヌル原子力発電所2号機(APR1400、140万kW)が試運転を開始したことを発表した。同号機は6カ月間の試運転を経て2024年3月に稼働する予定。なお、これに続く新ハヌル3・4号機(APR1400、140万kW×2)の建設は原子力安全委員会の建設許可を待っている。
2023.10.01
EU:EU加盟国中16カ国がヒートポンプ設置時の付加価値税を軽減
欧州ヒートポンプ協会(EHPA)は2023年10月2日、欧州諸国でのヒートポンプ設置に係る付加価値税(VAT)に関するレポートを公表した。これによると、EU加盟国27カ国のうち16カ国が、国によっては一定の条件を設定しながらもヒートポンプ設置時のVATを一般の税率より軽減する税制措置を採用している。例えば、ベルギーでは一般のVAT税率21%のところ、グリーン投資促進策の一環として築10年未満の個人住宅用ヒートポンプについて一定条件を満たしたものは6%に引き下げている。またフランスではVAT税率20%であるが、建物リノベーションの一部としてヒートポンプを導入する場合、5.5%となる。EHPAは、このような措置の採用は暖房などの低炭素化に資することになると評価している。
2023.10.01
EU:炭素国境調整措置(CBAM)の経過措置期間が開始
EUにおいて2023年10月1日から炭素国境調整措置(CBAM)の経過措置期間が開始された。CBAMは、鉄、鉄鋼、セメント、肥料、アルミニウム、水素、電力などの分野において、EU域外からの輸入製品に対し、域内で製造した場合にEU排出量取引制度(EU-ETS)に基づいて課される炭素価格に応じた支払いを輸入事業者に義務付けるもの。2025年末までを予定している経過措置期間においては、輸入事業者は輸入品の総量や炭素含有量などを四半期ごとに報告する必要がある。報告にあたっては、サプライチェーン全体にわたって関税データなどを収集する必要があるため、手続きの煩雑さもあって特に中小企業などにとっては対応が難しいという声があがっている。更に、欧州委員会がCBAMの実施規則の採択やガイドラインを発表したのは2023年8月17日であり、エネルギー情報誌は、準備する時間がほとんどないとの不満が企業から噴出していると報じている。
2023.09.29
米国:DOE、住宅用ガス炉に関する効率化基準を30年ぶりに更新
米国エネルギー省(DOE)は2023年9月29日、住宅用ガス炉(ファーネス、ガスを熱源とする暖房専用室内機)のエネルギー効率化基準を30年ぶりに更新することを発表した。新基準は2028年末までに施行される予定で、住宅用ガス炉は高いエネルギー効率(95%)が求められる。DOEは新基準が年間15億ドルの光熱費の節約に寄与するとし、30年間で248億ドルの節約を見込んでいる。また、30年間でCO2排出量を3億3,200万t削減し、メタン排出量を430万t削減する見通しである。報道によれば、米国ガス協会(AGA)は、ガス事業者に与える影響を十分に検証していないと新基準に反対しており、料金支払者の料金を高騰させる可能性があると懸念を表明している。
2023.09.28
フランス:2024年に政府が再エネ/原子力の水素製造を目的に7億ユーロを拠出
エネルギー情報誌は2023年9月28日、フランス政府がグリーンあるいはピンク(原子力)水素製造を支援するため2024年に7億ユーロ(約1,050億円)を拠出すると報じた。同政府は2030年までに650万kWの水電解装置を設置する目標を持ち、2026年までの3年間で100万kW分を新設する計画である。このため政府は2023年9月に、3年間の設置計画(2024年に15万kW、2025年に25万kW、2026年に60万kWを設置)と40億ユーロを拠出する方針を示していた。支援する事業者は競争入札で選定する方針で、政府の発表では手続きは開始されたとされているが、詳細は明らかになっていない。対象となるのは再生可能エネルギーあるいは原子力と、水電解装置により製造する水素製造事業である。
2023.09.28
米国:マウイ島山火事に関して下院公聴会が開催、発火原因の調査は継続中
米下院エネルギー・商業委員会は2023年9月28日、同年8月8日にハワイ州マウイ島で発生した山火事に関する公聴会を開催した。本公聴会には、ハワイアン・エレクトリック(HECO)の社長兼CEOであるShelee Kimura氏をはじめ、同州公益事業委員会の委員長であるLeodoloff Asuncion Jr.氏、同州エネルギー局の最高責任者であるMark Glick氏などが参加した。公聴会では下院議員らから、山火事に至った原因や送配電線の維持・管理状況などについて多くの質問があったが、現在も州当局による原因調査が行われていることもあり、関係者から明確な回答はほとんど出されなかった。当日の火災に関して、午前に発生した1回目の発火事象はHECOの配電設備に起因するものであるとKimura氏は認めたものの、消防による鎮火活動により広範な山火事には至らなかったと述べている。一方で、午後に発生し広範な山火事に繋がったとされる2回目の発火事象については、依然として原因不明であるとしている。HECOは、電線断線後における再通電禁止処置をどの時点で決定していたかなど、詳細な情報を引き続き収集していくとのこと。
2023.09.27
中国:政府、電力負荷管理措置として各地に予備率30%以上を求める
国家発展委員会、国家能源局は2023年9月27日、「電力負荷管理措置(2023年版)」を発表し、電力需給の逼迫に対応する措置として、予備率30%以上の供給能力の構築を求めた。それによると、近年、経済発展に伴い電力需給の傾向が夏と冬の「ダブルピーク」となっていることで、予測した最大電力をもとに、電源調達、デマンドレスポンス(DR)、電力取引を通じ、30%以上の供給予備力を備えることを求めた。さらに、需給管理の組織、責任所在を明確化し、日常の訓練、緊急時の広報、事後の評価など管理要件を提起している。
2023.09.27
中国:国家電力投資集団、広東省の廉江原子力1号機着工
国家電力投資集団有限公司(国家電投、SPIC)が開発する広東省の廉江原子力発電所1号機(CAP1000、125万kW)は2023年9月27日、着工した。中国核能協会(日本の原子力産業協会に相当)によると、同発電所は米国ウェスチングハウス社製の「AP1000」をベースに改良した「CAP」シリーズ6基(総設備容量862万kW)を開発する計画で、同1、2号機から成る1期プロジェクト(CAP1000、125万kW×2基)は2028年に運開する予定である。また、同発電所は従来のように廃熱を海へ放出せずに、中国で初めて海水による二次冷却循環技術を採用し、巨大な冷却塔の使用が特徴となっている。水資源が乏しい内陸部への原子力発電所の立地の可能性に影響を与えるものとされている。
2023.09.27
英国:スコットランド陸上風力プロジェクトがコスト増加により停止
イングランドの風力開発企業Community Windpowerは2023年9月27日、同社がスコットランドのSanquhar村で計画中のSanquhar2ウインドファームの開発を停止することを発表した。Sanquhar2ウインドファームは、44基の風力タービンで構成される設備容量308MWのウインドファームで、英国で4番目の規模の陸上風力プロジェクトであり、2023年8月にスコットランド政府からの計画許可を得ている。同社によれば、計画当初の2019年にはプロジェクトコストを3億ポンド(約540億円)と想定していたが、高インフレ、金利上昇およびポンド安の要因により、現時点では5億ポンド(約900億円)を超えるまで上昇していると想定し、銀行融資に必要な資本利益率が確保できない状況となっている。Community Windpowerは英国政府に対し、(1)新規プロジェクトをWindfall Tax(超過利潤課税)の対象外とすること、(2)石油・ガス事業と同様に投資支出額控除(投資支出額の80%を利益から控除できる)を導入すること、(3)Windfall Taxに適用期限を定めること、の3点を要求するとしている。
2023.09.26
欧州:NGO、欧州へのブルー水素輸入コスト試算でEU水素目標の再考を主張
非営利団体のClean Air Task Force(CATF)は2023年9月26日、ブルー水素生産予定国(ノルウェー、米国、アルゼンチン、アルジェリア、カタール、サウジアラビア)からロッテルダム港までのブルー水素輸送コストを試算した報告書を発表し、ノルウェーとアルジェリアからパイプラインで水素ガスを輸入するか、中東から船でアンモニアを輸入する方法が低コスト(2030年3.1ドル/kgH2、2040年2.5ドル/kgH2、2050年1.8ドル/kgH2)になると結論づけた。同書では、6カ国から水素ガス、液化水素、アンモニア、メチルシクロヘキサンで2030年25万t、2040年100万t、2050年1,000万tを輸入した場合のコストを比較していた。試算では、水素の船舶輸送はエネルギー効率、CO2排出、コストが非効率的で課題が多く、また輸入アンモニアから欧州で水素を取り出すと水素の製造コストが50%高くなるなどの課題が指摘された。以上からCATFは、欧州の水素利用を鉄鋼、石油精製、化学など他の脱炭素化手段が無い分野に絞る必要があり、これらの優先分野で必要な利用量と、欧州で可能な水素製造量と輸入量を明確化することが、効果的な水素利用政策に必要だと述べ、EUの水素需要目標(2030年までに2,000万t)は根拠に欠けており、現実的な予測に基づいた数値にするよう再検討するべきだと主張している。
2023.09.12
中国:バッテリーのリサイクルビジネス拡大の兆し
地元メディアは2023年9月12日、中国の研究機関のEVTankと伊維経済研究院がこのほど発表した「中国リチウム電池リサイクル産業発展白書」によると、蓄電池のリサイクル産業の能力は2028年に800万tに達する見込みと報じた。同白書によると事業者88社の2023年7月までの処理能力は250万t弱であるものの、2022年の年間事績は41万5,000t止まっている現状に対し、収益向上モデルの構築が急務であると指摘した。ただ、国内企業のESGへの意識向上に加え、欧米の「米国インフレ抑制法」、「EUバッテリーおよび廃バッテリー規制」、「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)移行」などの施行により、中国の業界でも今後の事業拡大が期待されると分析している。
2023.09.20
英国:政府、国民負担軽減のためネットゼロ政策を一部見直し
英国のスナク首相は2023年9月20日、2050年ネットゼロ達成に向けた政策について、現実に即したアプローチをとるよう見直し、生活費の上昇に苦しむ国民の負担を軽減すると表明した。具体的には、ガソリン・ディーゼル車の新車販売禁止時期を2030年から2035年に延期すること、化石燃料を使用する暖房器具の設置について2026年以降フェーズアウトという当初目標から2035年以降禁止に延期すること、賃貸物件を所有する大家に対する物件の断熱基準の義務付けを撤廃することを発表したほか、自動車の共有(カーシェア)推進や航空機利用に対する追加課税、肉類・乳製品の摂取減、リサイクルの種類の細分化など国民生活に干渉する政策を検討しないことも掲げた。これらにより生活費の上昇に苦しむ多くの国民にゆとりを与えるとしている。またスナク首相は、政策を転換する理由として、英国がこれまで先進国の中でも率先して目標を上回るペースで排出量の削減に貢献してきた一方、英国の排出量は全世界の1%にも満たないことも挙げている。なお、パリ協定など国際公約自体は今後も順守し、国内で設定している排出削減目標(カーボンバジェット)達成に向け国会で継続して議論を進めていくことを表明している。
2023.09.19
マレーシア:サバ・エネルギーロードマップ・マスタープラン発表
サバ州エネルギー委員会(ECoS)は2023年9月19日、サバ・エネルギーロードマップ・マスタープラン2040(SE-RAMP 2040:The Sabah Energy Roadmap and Master Plan 2040)を発表した。SE-RAMP 2040は、サバ州がエネルギーの安全保障、手頃な価格、持続可能性を確保するための方針を示すもの。SE-RAMP 2040では7つの目標を達成年ごとに設定しており、まず2030年までの目標として、(1)需要家一軒当たりの平均停電時間(SAIDI)100分未満、(2)農村部の電化率100%、(3)持続可能な電力料金、を掲げている。また2035年までに、(4)バランスの取れた発電燃料ミックス(燃料の多様性指標(HHI:The Herfindhal-Hirschman Index)0.5未満)、(5)再エネ割合の容量ベース50%以上、電力量ベース30%以上を達成する目標。さらに、国家公約に沿って2040年までに(6)国家エネルギー政策2022-2040の目標達成、2050年までに(7)カーボンニュートラルの達成を目指す。SE-RAMP 2040では、十分な供給予備率の確保や新しいエネルギー源・技術の特定など、目標達成に向けた16の主要戦略も策定されている。
2023.09.19
米国:米国財務省、金融機関によるネットゼロに関わる9つの原則を公表
米国財務省は2023年9月19日、金融機関によるネットゼロファイナンスと投資のための9つの原則「Principles for Net-Zero Financing & Investment」を公表した。同原則は、スコープ3(主に製品の使用や製品の破棄)の炭素排出量に焦点をあて、ネットゼロのコミットメントを示す金融機関が定めるべき計画や、投資相手とのネットゼロに向けた計画や戦略などについて一貫性と信頼性を促進することを意図している。なお、同原則の利用は任意であり、強制力を持つものではない。財務省は同指針の公表に併せて、慈善団体であるブルームバーグ・フィランソロピーズやベゾス・アース・ファンドなどが、今後3年間で3億4,000万ドルを拠出し、金融機関がネットゼロを実行するためのリソースを強化するなど外部からのコミットメントがあることを強調した。
2023.09.18
中国:2022年度地域別再エネ電力利用義務実績を発表
国家能源局は2023年9月18日、地域別の再生可能エネルギー(水力を含む)発電電力量の利用義務の実績を発表した。それによると、2022年の発電電力量のうち、再エネは30.8%を占め、2兆7,000万億kWh、消費電力量総量のうち31.6%、2兆6,810億kWh相当であった。全国(チベット自治区を除く)30地域の利用義務目標(RPS)評価では、新疆ウイグル自治区、上海市、重慶市、陝西省の4地域が未達成となり、次年度への繰り越しで達成するか、電力市場でのグリーン電力の購入で数値目標の達成義務を果たす必要がある。なお、気候変動要素を考慮し、一部減免策も講じられている。
2023.09.15
世界:ウラン価格、2022年ピークを上回る60ドル台後半で12年振りの高値
2023年9月15日付の報道によると、UxCが発表するウラン精鉱のスポット価格が65.5ドル/lbU3O8となり、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後のピークを突破して過去12年間で最も高い水準まで急騰した。同侵攻後のガス価格の高騰を受け、ウラン需要は、既設炉の運転延長と新設炉でエネルギーの自立を目指す各国の政策により増加し、世界的な原子力ルネッサンスを浮き彫りにした形。ウラン生産大手のカメコのアイザック最高財務責任者は、「エネルギー安全保障とクリーンエネルギーが注目の的になり、40ドルのウランを買う時代は終わった」と語った。同社は2023年9月3日、供給制約などを理由に同年のU3O8生産量の見積もりを270万lb引き下げ、フランスのオラノは同月8日、化学薬品不足でニジェールでのウラン製錬の中断を発表しており、生産者も市場から調達している模様。福島事故後のウラン需要と価格の後退は、新たなプロジェクトの開発不足を招き、現在の価格上昇の下地作りに一役買っているという。
2023.09.15
中国:電力スポット市場の基本原則の暫定案公表
国家発展改革委員会と国家能源局は2023年9月15日、電力市場におけるスポット取引(リアルタイム~1日前)に関する原則(基本ルール)を公表した。2016年から電力の市場化改革で、各地域の電力市場のスポット取引実証実験を経て、市場化の構築を加速し、スポット市場の運営・管理の標準化を図るとされている。暫定案は定義、取引価格、カウント、精算など全13章、129項が定められ、2023年10月15日から2026年10月15日までを適用期間とするとしている。
2023.09.15
中国:工業・情報化部、新型電池の技術開発強化方針を発表
大手紙は2023年9月15日、工業・情報化部が新型エネルギー貯蔵電池の産業化に必要な技術の開発を強化し大規模な応用を推進する方針を明らかにしたと報じた。世界的なグリーン・低炭素化の加速に伴い、新型エネルギー貯蔵は新型電池などに、電源管理半導体、電子モジュール、エネルギー制御システム、熱管理システム、機械部品などで構成され、関連産業が急成長している。一方、2022年の中国の新型エネルギー貯蔵システムの新規導入量は前年の3倍に増え、100MW規模のプロジェクトも20件を超え、2021年の5倍となっている。また、大手EVメーカーなども、地方政府と連携しエネルギー貯蔵への投資を拡大すると相次ぎ表明している。
2023.09.15
ドイツ:産業需要家に対する電気料金補助を気候・転換基金から拠出する方針
ドイツの日刊経済紙は2023年9月15日、政府筋の情報として、産業用電力価格の上限設定に関する合意が政権内で成立しつつあると報じた。ハーベック連邦経済・気候保護相(緑の党)は2023年5月、電力多消費産業やバッテリー、太陽光パネル、半導体などの重要産業を対象に、2030年まで消費電力量の80%に対して6ユーロ・セント/kWhの上限を設定することを提案していた。しかし、この措置に必要な費用は総額250億~300億ユーロとされ、財源の確保が不透明なことから、ショルツ首相(SPD)とリントナ-連邦財務相(FDP)は反対していた。報道によると、3者はこのほど上限設定のための補助金の一部を気候・エネルギー転換基金(KTF:Klima- und Transformationsfonds)から拠出することで合意した。KTFは、欧州排出量取引制度(EU-ETS)や運輸・暖房部門を対象とした国内ETSの収益などを原資として、環境保護に関する研究・イノベーションや建物改修・再エネ拡大・EV推進のためのプロジェクトに資金を提供している。
2023.09.15
米国:SPP、RTOとしての西部地域進出に向けて加盟企業を追加
米国中西部の系統運用事業者であるサウスウェスト・パワー・プール(SPP)は2023年9月15日、西部地域の7電力会社が新たに加盟することを発表した。7社にはBasin Electric Power Cooperative社(ノースダコタ州の電力協同組合)やColorado Springs Utilities社(コロラド州の市営電力会社)、WARA社(米国エネルギー省下部組織であり西部15州で水力発電事業を展開しているが、今回は管轄内の3地域のみ参加予定)などが含まれる。SPPは米国東部の地域送電機関(RTO)であるが、2026年をめどに西部地域への領域拡大を計画しており、実現すれば米国で唯一東部・西部両方に管轄地域を持つRTOになる。この7社の参加も2026年初頭に予定されており、電力市場取引や送電計画を参加地域全体で行うことで低廉な電力の広域融通や送電計画の効率化を図る。
2023.09.14
フランス:TotalEnergiesが水素調達入札を計画
フランスの石油メジャーTotalEnergiesは2023年9月14日、同社の欧州における製油所の脱炭素化の一環として、年間50万tのグリーン水素の入札を開始することを発表した。50万tのグリーン水素により、2030年までに年間約500万tのCO2排出削減が可能となる見込みである。TotalEnergiesは、欧州にアントワープ(ベルギー)、ロイナ(ドイツ)、ゼーラント(オランダ)、ノルマンディー、ドンジェ、フェイザン(フランス)の6つの製油所と、ラ・メードとグランピュイ(フランス)の2つのバイオ燃料製造所を所有しており、2030年までにこれら施設で使用される水素のうち、年間50万tをグリーン水素に置換する。同社は、フランスの電気・ガス事業者Engie、フランスの産業ガスメーカーAir Liquideおよびドイツのガス供給事業者VNGとグリーン水素供給および共同開発に関する契約を締結している。TotalEnergiesは同社の石油ガス事業(スコープ1および2)における温室効果ガス排出量を2030年までに2015年比で40%削減するという目標を掲げている。
2023.09.14
EU:欧州議会が電力市場改革修正案を本会議で正式採択、三者協議に移行
欧州議会は2023年9月14日に本会議を開催し、同年7月19日に産業・研究・エネルギー委員会(ITRE)が提案した欧州電力市場改革案の修正案について採決を行った。結果、賛成366票、反対186票、棄権18票により修正案は採択され、今後、EU理事会と欧州委員会との三者協議に移行することが決定した。同修正案では、低炭素電源開発の政府支援策に関して、既設の原子力発電所の運転延長を目的とした設備投資の支援を双方向の差額決済契約(CfD)の適用対象外としたため、原子力推進派の欧州議会議員が反対意見を表明していた。フランスのChristophe Grudler議員は、「反対票186票は無視できる数字ではなく、今後の三者協議において欧州議会は既設原子力の支援に関して譲歩せざるを得ないだろう」と述べたと報じられている。
2023.09.13
EU:欧州議会が再エネ指令の変更を可決、2030年目標は42.5%に引上げ
エネルギー情報誌は2023年9月13日、欧州議会が2030年の再エネ導入目標の引き上げなどを含む再エネ指令の改定案を可決したと報じた。EUは気候変動対策として温室効果ガスの排出削減に加えて再エネ導入量とエネルギー効率化について目標を設定している。再エネ導入目標(最終エネルギー消費に占める再エネ比率)については32%から42.5%に引き上げることで欧州委員会、欧州議会、加盟国で合意しており、今回は手続きを進めたもの。2021年の再エネ比率は21.8%となっており、2030年までに倍増することになる。今回可決された再エネ指令は許認可手続きの迅速化を含んでおり、加盟国は太陽光や風力発電の新設に際して、促進地域に立地する事業は12カ月、促進地域外の事業は24カ月以内に許認可手続きを終了する必要がある。さらに、許認可手続き中に一定期間内に規制当局から明確な応答がない場合は、事業を進めることを可能とする原則が採用され、再エネ事業手続きが迅速に進むことが期待されている。
2023.09.13
米国:Petra Nova CCUSプロジェクト、3年ぶりに運転再開
ENEOS傘下のJX石油開発は2023年9月13日、テキサス州ヒューストン近郊にあるペトラノバ(Petra Nova)のPetra Nova CCUSプロジェクトが、同月5日に運転再開したことを発表した。Petra Nova CCUSプロジェクトは、石炭火力発電所から排出するCO2を回収してパイプラインで輸送し、原油増進回収(EOR)に利用する米国で唯一、商業的に運営する実証プロジェクトである。2020年7月以降、採算性を理由に運転を停止していたが、インフレ抑制法(IRA)のタックスクレジットにより油田・ガス田に貯留したCO2が1t当たり35ドルから60ドル請求可能になったことや原油価格など経済性が改善されたことから運転再開となった。同社によると、同プロジェクトは世界最大規模の年間約140万tのCO2回収を見込んでいる。
2023.09.12
中国:国務院、福建・台湾間の融合発展計画を発表
国務院(日本内閣府に相当)は2023年9月12日、福建省と台湾の間の「海峡両岸」地域の発展方針として、融合発展モデル地域の建設を支援する発展計画を発表した。それによると「台湾海峡の両岸は一つの家族」という概念を掲げ、台湾の産業、経済を福建省の沿海部と経済融合する発展方針を打ち出した。海峡両岸総合開発モデル区の建設、住民の移動・交流を便利にし、貿易を円滑にできるように政策支援、制度構築する。工業分野では、新たな工業化産業の実証基地を建設し、世界的に競争力のある産業基盤と高度な製造クラスターを構築することとして、古雷石油化学産業基地と寧徳動力電池クラスターの名前を掲げた。企業間協力提携を構築することを支援することとしている。
2023.09.12
米国:ホルテック社、恒久停止したパリセード発電所の再稼働に向けPPA締結
ホルテック社は2023年9月12日、一度は恒久停止されたパリセード原子力発電所(ミシガン州、PWR、85万7,000kW)に関し、再稼働を果たした場合の長期電力売買契約(PPA)を同州全域に電力を供給するウルヴァリン・パワー協同組合(ウルヴァリン)と締結したと発表した。同発電所は、当時の所有者が2022年5月に恒久停止させた後、ホルテック社が廃止措置を行う目的で取得したが、州政府の後押しもあり現在は再稼働を目指している。今回の契約締結をホルテック社幹部は「再稼働に向けた私たちの工程における重要なマイルストーン」であるとしている。契約期間は「数十年」とされ、発電電力量の最大3分の2をウルヴァリンが、残りをウルヴァリンの提携企業が購入する。また同契約には、ホルテック社が同発電所での建設を検討する最大2基の小型モジュール炉(SMR)からの電力購入を含むとした拡大条項もあるという。
2023.09.11
ドイツ:TenneTが南北を連系する直流送電線SuedLinkの建設を開始
送電系統運用者(TSO)のTenneTは2023年9月11日、ドイツ南北を連系する525kV直流送電線SuedLink(南北送電線)の建設工事を開始した。SuedLinkは総亘長が約700kmで、2028年の運用開始を予定している。今回着工したのはWewelsfleth(シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州)-Wischhafen(ニーダーザクセン州)の区間(約8.5km)で、エルベ河の下を掘削し地下ケーブルを敷設する。2030年に電力消費に占める再エネの割合を80%以上に引き上げることを目指すドイツでは、風力電源の導入が進んでいる北部と需要地の南部を連系する送電線の建設遅延が大きな問題となっている。
2023.09.09
インド:インド、G20サミットで国際バイオ燃料同盟を発足
インドのモディ首相は2023年9月9日、ニューデリーで開催されたG20サミットにおいて、よりクリーンな燃料の使用を促進するための国際バイオ燃料同盟(GBA:Global Biofuel Alliance)の立ち上げを発表した。GBA設立を主導したのはインド、米国、ブラジルの3カ国で、発足の宣言にはシンガポール、バングラデシュ、イタリア、米国、ブラジル、アルゼンチン、モーリシャス、アラブ首長国連邦の首脳らが立ち合った。これまで19カ国、12国際機関がGBAへの参加に合意している。
2023.09.08
ドイツ:暖房法案が下院で可決、ヒートポンプの普及進むか
連邦議会(下院)は2023年9月8日、改正建築物エネルギー法(GEG、いわゆる暖房法)案を承認した。同法案では、2024年以降に新規設置する暖房設備に65%以上の再エネ利用を義務付けており、暖房使用者は地域熱供給に接続するか、基準を満たす次のような暖房設備を設置しなければならない:ヒートポンプ、電気暖房、再エネおよびガス・石油のハイブリッド暖房、太陽熱暖房、H-Ready(100%水素利用へ転換可能な)暖房、バイオマス暖房、ペレット暖房。ただし、熱計画法に従い、地域により条件は異なる。既存の石油・ガス暖房設備は引き続き使用できるが、2045年以降の使用は禁止される。故障した場合は5年以内に上記の設備へ交換しなければならない。なお、同法案は同年9月末に参議院(上院)で審議される見通しである。
2023.09.07
米国:DOE、先進型原子炉がDACのコスト削減に寄与する可能性を報告
米国エネルギー省(DOE)は2023年9月7日、先進型原子炉が大気中のCO2を直接回収する技術(DAC)のコストを削減できる可能性があるとの調査報告書「Assessment of Nuclear Energy to Support Negative Emission Technologies」を公表した。同報告書は、DOE傘下のアルゴンヌ(ANL)およびアイダホ(INL)国立研究所、ならびに国立エネルギー技術研究所(NETL)の調査に基づいている。先進型原子炉を用いたDACシステムは、原子力を使用しない場合と比較してDACの均等化コストを最大13%削減する可能性があるとしている。同報告書の主執筆者であるANLのニコラス・スタウフ氏は、「同報告書は、原子力がDACをより安価にできることを示している。このような新しい用途は、原子力の市場機会を電力、輸送、その他の産業以外にも拡大し、気候変動対策における原子力の役割を増大させるものである」と述べた。
2023.09.06
米国:ERCOT、需給逼迫によりEEA2を発令
テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)は2023年9月6日、需給逼迫により現地時間19時30分にエネルギー緊急警報レベル2(EEA2:Energy Emergency Alert Level 2)を発令した。EEA2は運転予備力が1,750MWを下回り、30分以内に回復する見込みがない場合に発令される。ERCOTはEEA2の発令に伴い、利用可能な発電機の稼働、デマンドレスポンス活用や州外のISO(独立系統運用事業者)からの電源調達、テキサス州環境品質委員会(TCEQ:Texas Commission on Environmental Quality)からGHG排出上限を超過した発電機運転許可の取得などを行なった。最終的に輪番停電までは至らず、現地時間21時47分にEEA2は解除された。需給逼迫の原因としては、太陽光や風力発電量の低下、火力発電設備停止の増加、過負荷による送電制約の発生などが挙げられている。
2023.09.04
ドイツ:研究所、気体でスペイン、液体でブラジルなどからの輸入が最安と試算
欧州最大の太陽光研究機関であるドイツのFraunhofer ISEは2023年9月4日、北アフリカなど12カ国を対象に、2030年にどの国からドイツにグリーン水素・アンモニアや合成燃料を安く輸入できるのかを分析した報告書を発表した。ドイツでは2030年までに、重工業や航空産業で数10億kWhの水素や合成燃料の需要が生じ、国内製造と輸入で賄うことになると予想されている。対象国12カ国は、グリーン水素の欧州域外での製造と欧州への輸入を推進するH2Global財団が選定した国(ウクライナ、スペイン、アルジェリア、モロッコ、チュニジア、南アフリカ、ナミビア、メキシコ、ブラジル、コロンビア、インド、豪州)で、これらの国で水素などを製造しドイツに輸入した場合の供給コストが算出された。その結果グリーン水素を気体でドイツに輸入する場合は、2030年までにドイツへのパイプラインが建設されれば、アルジェリア、チュニジア、スペインが最安で137ユーロ/MWhとなる。液体水素またはアンモニアを船舶でドイツに輸入する場合は、ブラジル、コロンビア、豪州が最安で171ユーロ/MWhとなる。供給コストの大部分は風力と太陽光の発電コストで、輸送コストは安いため、豪州はドイツへの輸送コストが最もかかるが、風力と太陽光の発電コストが安いため、液体水素などを安く輸入できる国と分析している。
2023.09.01
韓国:韓国電力の次期社長に金東喆氏を選出
現地紙は2023年9月1日、韓国電力公社が同日に開催した臨時理事会で、同社の新社長に元国会議員の金東喆(キム・ドンチョル)氏を選出し、臨時株主総会の開催を議決したと報じた。同社は、株主総会は9月18日にも本社(全羅南道・羅州市)で行われる予定で、株主総会招集公告を公示した。同氏は1961年の韓国電力株式会社が発足して以来、初の政治家出身者の社長となる。
2023.08.31
英国:英国政府、新たなヒートポンプの補助金施策を発表
エネルギー安全保障・ネットゼロ省は2023年8月31日、ヒートポンプをより安価で容易に設置できるようにする新たな施策を発表した。2021年10月に開始した補助金制度「ボイラーアップグレードスキーム」を見直し、顧客の物件タイプや既存の燃料源に応じて、利用可能な補助金のレベルを調整するもの。新たな施策では、ヒートポンプ補助金の受給条件を簡素化し、これまで必要としていたロフトや中空壁などの断熱材の設置を不要とした。最大6,000ポンド(約100万円)の割引を提供するとしており、既に8,100万ポンド(約15億円)以上の割引券が発行されている。新提案の中には、オーブンとしても機能する新しいバイオマスボイラーの設置を支援する追加オプションも含まれている。
2023.08.30
ドイツ:半数以上の企業がエネルギー移行による競争力への悪影響を懸念
2023年8月30日付の報道によると、ドイツ商工会議所(DIHK)は国内の3,500社以上を対象に行ったエネルギー移行に関する調査結果を報告した。回答企業の52%が、エネルギー移行が事業にマイナスまたは非常にマイナスの影響を与えるとし、プラスまたは非常にプラスの影響となると回答した企業は13%であった。また、32%の企業が生産能力の海外移転を検討していると回答した。このうち5.2%は既に対策を実施済、10.5%は進行中、16%は計画中だという。DIHKのAchim Dercks氏は、「以前は企業がエネルギー移行を好機ととらえていたが、現在は経済全体の評価においてリスクが上回っている。経済界の大部分が中長期的なエネルギー供給不足を懸念している。政治指導者はドイツ国内事業に展望を与えるため、可能な限り迅速に対策を講じなければならない」と述べた。
2023.08.30
EU:11月23日にグリーン水素の入札を開始、補助金額は4.5ユーロ/kgを上限
欧州委員会(EC)は2023年8月30日、グリーン水素購入のための初めての入札の条件を発表した。EUはロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにグリーン水素市場の利用を加速する方針で、2030年に2,000万t(域内製造:1,000万t、輸入:1,000万t)を活用する計画である。この実現に向けてECはグリーン水素購入を支援する「欧州水素銀行(European Hydrogen Bank)」を設立することを明らかにしており、今回入札の条件を発表したもの。ECの発表では、EC予算の8億ユーロを限度として入札を行う。対象の事業は欧州経済領域(European Economic Area、EU加盟27カ国とリヒテンシュタイン、アイスランドおよびノルウェーが加盟)内のグリーン水素製造事業で、事業者は必要な補助金額(グリーン水素製造1kgに必要な金額、上限4.5ユーロ)、10年間に製造する平均的な製造量などを提示する。選定された事業はECと契約を締結し、5年以内に事業の開始が求められる。入札は2023年11月23日に開始される予定である。
2023.08.29
マレーシア:政府、国家エネルギー移行ロードマップの第二部を発表
マレーシア政府は2023年8月29日、国家エネルギー移行ロードマップ(NETR:National Energy Transition Roadmap)の第二部を発表した。7月27日に発表された第一部に続く第二部では、第一部で挙げた各重点分野(エネルギー効率化、再エネ、水素、バイオエネルギー、グリーン・モビリティ、炭素回収・有効利用・貯留(CCUS))について数値目標と行動計画を示すとともに、それらを実行するための分野横断課題(資金調達・投資、政策・規制、人的資本と公正な移行、技術・インフラ開発、ガバナンスと実行面)を設定した。行動計画には、国際的な再エネ電力取引市場の設立や、政府庁舎の改修計画と民間ESCO(Energy Service Company)事業者をつなぐプラットフォームの構築、送配電投資を加速化させる計画の策定等が挙げられている。
2023.08.29
米国:EIA、太陽光発電パネルの出荷量が2022年に過去最高を記録したと発表
米国エネルギー情報局(EIA)は2023年8月29日、2022年の太陽光発電パネルの出荷量(輸入、輸出、国内製造などを含む)が2021年実績から10%増加し、過去最高の3,170万kWを記録したと発表した。輸入量は2,783万kWであり、輸入元の内訳は中国・シンガポール・ベトナム:39%、マレーシア:15%、韓国・タイ・アラブ首長国連邦:22%、その他:25%であった。米国で2022年に新規導入された大規模(1,000kW以上)の太陽光発電容量は1,090万kWであり、これは2021年の1,350万kWに次ぐ記録であった。
2023.08.29
米国:米国初のメキシコ湾における洋上風力リースは一部入札者なし
米国の内務省(DOI)は2023年8月29日、米国初となるメキシコ湾沖における洋上風力リース入札の結果を発表した。対象となるリースはテキサス州沖が2カ所、ルイジアナ州沖が1カ所。ドイツのエネルギー大手RWEがルイジアナ州沖1カ所(約10万エーカー)を落札、他2カ所は入札者なしという結果になった。過去4回の洋上風力リースにおける平均落札価格は1エーカー当たり1,000ドルを超えていたが、今回の価格は1エーカー当たり約55ドルであった(入札者は2社のみ)。今回の入札を見送ったフランス大手のトタルエナジーの広報担当者は「風速、他の再エネ電源との競合、電力市場の状況を考慮した結果、入札を見送った」と発言している。一方で、唯一の落札者となったRWEはホームページにてルイジアナ州の2035年までに5GWの洋上風力を導入するというLousiana Action Planに言及しており、同社がテキサス州沖に入札しなかった一因が洋上風力導入目標の有無にあると報じられている。なお、DOIは今回落札に至らなかった2エリアの今後について、コメントを公表していない。
2023.08.23
中国:青島LNG受け入れステーション、中国で最大の27万㎘タンクが完工
中国石油化工股份有限公司(シノペック)は2023年8月23日、建設中の青島(山東省)LNG受入基地で国内最大27万㎘容積のタンクを完工させたことを伝えた。同タンクは直径100.6mでサッカーコート1面分の広さであり、高さは55m。2021年8月の着工開始から2年間で完成し、建設期間が最短記録としている。シノペックは年内の受入基地の全面稼働に向けて作業を急いでおり、稼働後の受け入れ能力は1,100万tに達し、中国最大の受入基地となる。
2023.08.23
中国:休廃止再エネ設備のリサイクル促進指針を発表
国家発展改革委員会は2023年8月23日、今後増加する休廃止の風力、太陽光発電設備のリサイクル利用に関する促進指針を発表した。それによると使用しなくなった再エネ設備の増加に対応するため、2025年までに集中型の発電所の処理責任制度を構築し、設備のリサイクル利用の基準整備、技術開発を行う。2030年には基本的な全プロセスリサイクル技術システムを整備し、休廃止設備の発生量に対応するリサイクル処置能力を構築する目標を掲げた。これに対して相応の技術支援、資金提供、規制整備などに着手し、環境部門や、商務部門など省庁間の連携も強化する方針となっている。
2023.08.25
中国:当局、グリーン電力消費促進に関する通達を発表
現地紙は2023年8月4日、国家発展改革委員会、財政部、国家能源局は連名でグリーン電力消費促進、グリーン電力証書に関する通達を発表したと報じた。同通達はグリーン電力証書のカバー範囲および認証機関など明確したうえ、海外企業を含む、国有企業など幅広くの活用促進を社会貢献として奨励している。グリーン電力証書は1,000kWhを1単位として、全国の風力、太陽光、通常水力(2023年1月1日以後)、バイオマス、地熱、海洋、その他再エネによって認証されるが、今後海外との相互認証も推進されることになっている。
2023.08.25
ドイツ:脱石炭の最終入札の結果が公表される
連邦系統規制庁(BNetzA)は2023年8月25日、第7回脱石炭入札(2023年6月1日実施)の結果を公表した。脱石炭入札は今回が最後となる。募集容量54万2,000kWに対して6件(総容量28万kW)の応札があり、すべて落札された。個別の落札額は公表されていないが、最低額が4万5,000ユーロ/MW、最高額が8万5,200ユーロ/MWとなった。今回落札に至った対象設備は2026年3月に停止される。脱石炭入札は早期閉鎖する設備を対象に2020年から実施され、全7回の入札で合計41設備(1,070万kW)が補償対象となった。これまで落札対象とならなかった設備(26万2,000kW)は、補償なしの閉鎖が命じられる。
2023.08.24
ASEAN:エネルギー大臣会合、送電線の相互接続の取組みを再確認
第41回ASEANエネルギー大臣会合(AMEM)が2023年8月24、25日の日程でインドネシアのバリ島で開催された。インドネシアのアリフィン・タスリフエネルギー・鉱物資源大臣が議長を務めた。会議では「相互接続を通じた持続可能なエネルギー安全保障に関する共同宣言」が共同閣僚声明として作成された。会議後の記者会見でアリフィン大臣は、インドネシアが議長国を務める期間中にASEAN域内のエネルギーの相互接続について取り組みを推進する、と述べた。同会議ではブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン電力相互接続プロジェクト(BIMP-PIP)に関する共同声明も採択されている。
2023.08.24
中国:南方電網、海南島の50万V基幹送電系統をデジタル化
南方電網有限責任公司は2023年8月24日、海南省の自由貿易試験区(Free Trade Zone)の開発に合わせ、同省の50万Vの基幹送電系統の建設およびデジタル化を開始したことを発表した。海南省では今後の電力需要増加に合わせ、500kV主送電網プロジェクトの建設およびデジタル化に約52億元を投資する予定である。同プロジェクトは、次世代のデジタル技術をフル活用し、計画、設計、建設、試運転、運用、保守のライフサイクルを統合する。計画は2025年に「口」型基幹系統完成後、2030年にはさらに「日」型にアップグレードさせる計画となっている。
2023.08.24
米国:ERCOT、需給逼迫による連日の節電要請を呼びかけ
テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)は2023年8月24日から同月27日、管内の電力消費者に対して電力需給逼迫による節電要請を発表した。対象時間は24日が15時から22時、25、26日が15時から21時、27日が16時から21時(すべて現地時間)である。依頼内容としては、電気の使用量削減、予備電力の活用、大口需要家による電力使用量削減の呼びかけ、発電設備の早期オンライン化などである。また、ERCOTは州外のISOや市場参加者と協力し、追加の発電資源を調達する予定である。需給逼迫の原因として、猛暑による電力需要の増加、期間内の太陽光・風力発電電力量低下、同様に猛暑が続く近隣州との発電資源の融通などが挙げられている。ERCOT管内では2023年8月10日の8万5,435MWをはじめとして今夏に10回のピーク需要新記録を更新(過去の最高記録は2022年7月に記録した8万148MW)するなど、電力需要の高騰が続いている。
2023.08.24
米国:DOE、風力(陸上、洋上、分散型)に関する3件の報告書を発表
米国エネルギー省(DOE)は2023年8月24日、同省管轄の国立研究所が風力に関する3件の報告書を発行したことを発表した。ローレンスバークレー国立研究所(LBNL)による陸上風力に関する報告書「Land-Based Wind Market Report」によれば、2022年に新設された事業用規模(utility-scale)の陸上風力は約851万kWであった。国立再生エネルギー研究所(NREL)による洋上風力に関する報告書「Offshore Wind Market Report」によれば、2023年5月末時点で運転中または開発中の洋上風力は約5,269万kWであった。パシフィックノースウエスト国立研究所(PNNL)による分散型(小規模)風力に関する報告書「Distributed Wind Market Report」によれば、2022年に新設された分散型風力は計3万kW(計1,755基)であった。
2023.08.17
米国:デューク社、ノースカロライナ州の石炭発電所跡地でSMRの導入を提案
デューク・エナジー社は2023年8月17日、ノースカロライナ州公益事業委員会(NCUC)にCO2削減計画の更新版を提出し、2036年閉鎖予定のベリューズ・クリーク石炭発電所(110万kW×2基)への小型モジュール炉(SMR)の導入を提案した。同社は別の既設石炭発電所でもSMRを配備し、計2基のSMRを導入する計画を提案している。ベリューズ・クリーク発電所のSMR早期立地許可(ESP)申請書を2025年第3四半期に米国原子力規制委員会に提出し、2027年半ばのESP取得と2035年までのSMR運開を目指すという。また、同社が保有する11基の既設大型炉の運転延長は、計画の根幹をなす前提だともしている。同社はサウスカロライナ州公益事業委員会(PSCSC)にも同計画を提出しており、両委員会は同社のデータ、関係者の証言、公聴会など別々の評価プロセスを経て、PSCSCは2024年半ば、NCUCは同年末までに最終決定を下す予定。
2023.08.15
米国:CA州、需給ひっ迫対策で年内閉鎖予定のガス火力の運転継続へ
カリフォルニア州水資源局(DWR)は2023年8月15日、需給ひっ迫対策として2023年内に閉鎖予定であった3カ所のガス火力発電所(計287万kW)の運転期間を2026年末まで延長することを承認した。州政府は2022年に成立した夏季の供給力確保策を盛り込んだエネルギー関連法(AB205)に伴い、異常気象などに起因する需給ひっ迫対策として「戦略的信頼性予備力(SRR:Strategic Reliability Reserve)」プログラムを創設している。DWRはSRRプログラムで追加容量を確保するため、廃止予定の既存電源(老朽ガス火力)の運転延長を可能にする権限やそれらの電源と電力購入契約を締結する権限を付与されている。なお、2022年11月時点でカリフォルニア州公益事業委員会、カリフォルニア州エネルギー委員会、カリフォルニアISOが同プログラムへの参加を条件に3発電所の運転延長を推奨する共同書簡をDWRに提出している。
2023.08.11
韓国:韓国電力、2023年第2四半期も2兆2,724億ウォンの赤字を計上
現地紙は2023年8月11日、韓国電力公社が2023年第2四半期の決算を発表したと報じた。それによると今期は2兆2,724億ウォン(約2,724億円)の赤字を計上し、2021年第2四半期以降9期連続の赤字を記録した。これにより、2023年上半期の営業損失額は既に8兆4,500億ウォン(約8,450億円)に達している。
2023.08.10
中国:海南省VPP管理センター設立、2025年のDR資源100万kW規模へ
地元紙は2023年8月10日、海南省政府の支援のもと、送配電事業者である南方電網公司傘下の海南電網公司でVPP(仮想発電所)管理センターが発足したと報じた。同センターは現時点で、充電ステーション127カ所、分散型太陽光発電5カ所、蓄電池1カ所、一部のセントラルエアコンなど計50万kWの電源を管理している。南方電網は2025年に100万kW規模に拡大させ、電力系統の安定運営に寄与するとしている。
2023.08.10
ドイツ:政府調査方式入札でRWEが4区域中3区域(153万kW)を落札
連邦系統規制庁(BNetzA)は2023年8月10日、同年8月1日に実施された洋上風力入札(政府調査方式)の結果を報告した。同方式では開発権利に対する支払額と自然保護などの評価基準に基づいて落札者が決定される。北海における総募集容量180万kWのうち、Waterkant Energy GmbHが27万kW、RWE Renewables Offshore HoldCo Four GmbHが63万kW、Nordseecluster B GmbH(RWE)が42万kWおよび48万kWの2区域を落札した。支払額は総額7億8,400万ユーロ(約1,243億円)であった。MW当たりでは43万5,555ユーロ相当となる。同年6月に実施された事業者調査方式における支払額(最低落札額156万ユーロ/MW)より低額となったが、連邦洋上風力発電事業者協会(BWO)はまだ高額であると評価した。BWOは、支払額が比較的抑えられた理由として、落札形式や同区域の面積、立地環境、収益予測などを挙げる。なお、RWE Renewables Offshore HoldCo Four GmbHが落札した区域についてはVattenfallが介入権を保有しており、同年9月14日までの行使が認められている。
2023.08.09
スウェーデン:規制当局、原子力発電の拡大に向けた規制の枠組みを提案
スウェーデンの放射線安全局(SSM)は2023年8月9日、同国の原子力発電拡大に向けた規制の枠組みの構築などの必要な対策に関する最終報告書を政府に提出した。同報告書は2022年8月、当時の政府がSSMに命じていたもので、小型モジュール炉(SMR)などの新規の原子力発電の利用に関する規則や措置の特定も含まれていた。SSMは、現行規制が新しい原子炉技術に対してもほぼ有効とする一方、原子炉数の制限撤廃、設置場所や自治体の拒否権の整備、原子炉の種類・規模や新規参入の柔軟性の向上、許認可の明確化・簡素化、SSMの権限を拡大・明確化、許可審査に先立つプロセスの導入などの提案を行った。また、緊急時計画や資金調達などへの新たな調査の必要性も指摘している。プルモクタリ気候・環境大臣は「2045年までの10基以上の従来型原子炉の新規建設、電化を通じた気候変動への対応などの政府の取り組みの重要な基礎となる」とコメントした。
2023.08.04
欧州:欧州委、2050年にグリーン水素の域内製造は輸入より安価との試算発表
欧州委員会は2023年8月4日、2050年に重工業を脱炭素化した時のエネルギー供給を検証した報告書『The impact of industry transition on a CO2-neutral European energy system』を発表した。同報告書は、2050年における域内全体の燃料別(水素を含む)エネルギー需要を予測した後、コストや送電容量制約などを加味して、これを各国に最適分配したもの。その結果、2050年の総エネルギー需要は効率化により10兆kWhに減少(2019年は約13兆kWh)するが、このうち電力が4割強(同2割)、水素が3割(同0割)を占めるようになると予測された。報告書は、域内の再エネポテンシャルを需要より多い約9兆4,000億kWhと見積もっており、将来の再エネ発電電力量を満たしながら、水素製造用に確保できると予測している。この水素需要を最も低コストで満たすのは、域内に電解装置を約9億kW設置し製造した場合で、最も低コストで輸入した場合(中東または北アフリカからパイプラインで輸入)の65ユーロ/MWh H2(約2.17ユーロ/kgH2)より約10%安くなると試算された。しかし輸入より低コストで製造できる国は限定的で、自国の電力需要以上に低コストでの再エネ導入ポテンシャルが高いフランス(電解装置容量1万3,000万kW)、スペイン(1万2,000万kW)、英国(7,000万kW)、ノルウェー(7,000万kW)などが、欧州で主要な水素生産国になり得るとしている。また各国で再エネがポテンシャルの7割しか導入されないと、域内の水素製造コストは11%増加し、輸入の方が安くなると予測された。他方、ドイツ、ベルギー、オランダ、スイス、南東欧諸国では、輸送コストが安くなるため、自国での水素製造よりも隣国から水素を輸入する方が低コストになると試算された。
2023.08.01
スペイン・日本:関西電力が浮体式実証事業への初めての参画を発表
関西電力は2023年8月1日、スペインで開発が進む浮体式洋上風力発電のデモ事業に参画すると発表した。同事業はスペインの浮体式構造物開発事業者のSaitec Offshore Technologies社とドイツのエネルギー大手RWE社がスペイン北部のバスク地方で進めるデモ事業で、沖合3km(水深85m)に浮体構造物1基(発電出力:2,000kW)を設置する計画である。SATHと呼ぶ浮体構造の特徴はコンクリート製(幅約30m、長さ約64m)で予め製造することでコストダウンが見込まれ、係留を1点で行うことで、波浪や潮流による回転の影響を最小限に抑えることが可能となる。実証事業は2023年内に運転開始し、得られるデータを確認して、その後SATHを活用した浮体式事業の産業化(規模拡大)を目指すことになる。
2023.08.01
ドイツ:政府、水素発電所の新設支援に向けた「発電所戦略」概要を発表
連邦経済・気候保護省(BMWK)は2023年8月1日、水素発電所の新設・既存発電所からの転換を支援するための「発電所戦略」について、欧州委員会(EC)と大筋合意したことを明らかにした。2024年以降3種類の入札を実施し、水素発電所2,380万kWの新設・転換を目指す。このうち、最大1,500万kWは水素ネットワークに接続されるまで天然ガスを燃料とすることが認められるが、遅くとも2035年までに水素発電所への転換を実現しなければならない。これにより、連邦政府は同年までに電力部門のほぼ完全な気候中立化を目指す。入札の対象となるのは、(1)水素スプリンター発電所:水素インフラ(水素またはアンモニアの大規模貯蔵設備、地域供給網、水素クラスター、輸入ターミナルなど)への接続が比較的早期に可能な地点に立地し、運開時から再エネ由来の水素を発電に使用する発電所(既設も対象)、(2)水素・再エネハイブリッド発電所:風力・太陽光などの再エネ発電設備と水電解装置、水素貯蔵設備、水素発電所を組み合わせた設備、(3)H2-ready発電所:一定期間天然ガスを燃焼し、遅くとも2035年までに水素発電所への転換を義務付けられる発電所(既設も対象)。募集容量は(1)、(2)が各440万kWで、(1)については2024~2028年に入札を実施する。(3)に関しては、2024~2026年に1,000万kW(このうち600万kWは新設枠)の入札を実施し、入札結果の評価後、追加で500万kWを募集する可能性がある。ECは、本制度がEUの「国家補助ガイドライン」に適合するかの審査を継続している。連邦政府は、国会の夏季休会明けに「発電所戦略」の詳細を発表し、パブリック・コンサルテーションを実施するとしている。
2023.08.01
英国:政府、第2回水素入札を2023年後半開始、2025年75万kW契約目指す
英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2023年8月1日、水素戦略更新版を発表し、第2回水素入札(HAR2)を2023年第4四半期に開始し、2025年に最大75万kWの水素製造プロジェクト(2026年3月~2029年3月運開)との契約締結を目指すことを明らかにした。2022年7月に始まった第1回入札(HAR1)では、2023年3月にプロジェクト20件(計40万8,000kW)が最終選考に残った。このうち約25万kWが2023年第4四半期に承認を受け、低炭素水素契約(LCHA、正式版は2023年第4四半期に発表予定)に基づき補助金受領の契約を締結し、2025年に運開する予定である。同更新版によると、HAR1(2022年開始、2023年契約)およびHAR2(2023年開始、2025年契約)の開催後、第3回入札であるHAR3(2025年開始、2026年契約)が開催され、HAR3以降は毎年開催される計画である。HAR1では水電解装置プロジェクトのみが対象であったが、HAR2以降は非CCUS(炭素回収・有効利用・貯留)技術(バイオマスまたは廃棄物のガス化やメタンの熱分解による水素製造など)も対象に加わる予定である。
2023.08.01
EU:業界団体、太陽光発電の事業性確保を求める共同書簡を欧州委員会に送付
欧州の太陽光および再エネ業界団体19者は2023年8月1日、欧州委員会のKadri Simson委員(エネルギー担当)宛てに共同書簡を送付し、太陽光発電の事業性確保に向けた施策を提言したことを発表した。同書簡によると、EUの太陽光発電導入量は2022年単年で前年比約50%増の4,000万kWに達するなど大きな盛り上がりを見せる一方で、導入量拡大による出力制御の増加や、卸電力市場でネガティブプライスの時間帯が増加することに伴い、太陽光発電の事業見通しが悪化し、新規投資への悪影響が懸念される事態になっているという。業界団体はこれらの懸念を解消し、太陽光発電をさらに拡大させていくために、送配電網の建設に係る許認可手続きやデジタル化の加速、蓄電池やDRなどの柔軟性電源の積極的な推進、ネガティブプライスが増加した場合でも太陽光発電の事業性が損なわれないための経済的枠組みの確保が必要だと訴えている。
2023.07.31
中国:国務院常務会議、2023年になって最初の6基の原子炉建設計画を承認
国務院常務会議(日本の閣議に相当)は2023年7月31日、福建省の寧徳原子力発電所5、6号機、山東省の石島湾・栄成拡建Ⅰ期原子力発電所1、2号機および遼寧省の徐大堡原子力発電所1、2号機の3サイト計6基の建設計画を承認した。2022年には10基の原子炉計画が承認され、今回の6基は2023年になって初めて承認されたもの。中国広核集団有限公司(CGN)が事業主体となる寧徳5、6号機と、CGNがプロジェクト建設に参加する華能集団傘下の石島湾・栄成拡建Ⅰ期1、2号機は、CGNタイプの華龍1号を採用する予定。中国核工業集団有限公司(CNNC)が管理する徐大堡1、2号機の炉型は明らかにされなかったが、中国で設計された「CAP1000」になるとの報道もある。なお、今回承認された6基の建設投資総額は、推定1,200億人民元(約2兆3,800億円)相当になると報じられている。
2023.07.28
米国:ニューヨーク州、相次ぐエネルギー貯蔵施設の火災事故原因を調査
ニューヨーク州のホークル知事(民主党)は2023年7月28日、州内で相次いで発生しているエネルギー貯蔵施設の火災事故に関して、原因調査を目的とした安全作業部会を新たに設置すると発表した。この作業部会は、国土安全保障緊急サービス局やエネルギー研究開発局、環境保全局などで構成され、火災に至った根本的な原因の分析や、安全基準の策定などを行う。ホークル知事は作業部会の設置にあたり、「公共の安全に対する潜在的なリスクに対処するとともに、ニューヨーク全域のエネルギー貯蔵施設を安全かつ効果的であるものにするために、関係者と協力していく」と述べた。なお、調査結果や推奨事項については、消防局や全米防火協会などの関係者と共有される予定。
2023.07.24
米国:2023年上半期、過去最高の生産量と穏やかな気温で価格が34%下落
米国エネルギー情報局(EIA)は2023年7月24日、2023年上半期の天然ガスの生産量が過去最高を記録する一方、比較的穏やかな気温の影響により天然ガスの価格が下落したと発表した。米国の天然ガス指標価格であるヘンリーハブのスポット価格は、1月から6月までの間に34%(1.12ドル/MMBtu)下落した。2023年6月の天然ガス卸価格(月平均、実績)は2.18ドル/MMBtuとなり、2020年6月以来の安値を記録した。EIAはこの原因について、2022/2023冬季が穏やかな気温、記録的な生産量、平均を上回る在庫量を挙げている。EIAの見通しによれば、ヘンリーハブの価格は2023年7月から12月までの間に上昇すると見込んでおり、年末までの平均価格は2.83ドル/MMBtu、2023年12月には最高価格の3.44ドル/MMBtuとなるとしている。
2023.07.31
米国:米国で30年以上ぶりの新規建設炉ボーグル3号機、営業運転開始
大手電力会社サザン・カンパニー社の子会社であるジョージア・パワー社(本社:ジョージア州アトランタ)は2023年7月31日、同社が建設を進めるボーグル原子力発電所3号機(AP1000、110万kW)が営業運転を開始したと発表した。同機は、2022年8月に原子力規制委員会(NRC)による燃料装荷と運転開始の承認を受け、2022年10月に燃料装荷を完了、2023年3月6日に初臨界、同年4月1日には初併入を達成したと公表しており、営業運転開始に向けて試運転を実施していた。運転開始により、米国で運転中の原子炉は93基となった。また、ボーグル4号機も2023年7月28日、NRCによる燃料装荷と運転開始の承認を得ており、2024年第1四半期までに運開予定としている。なお、ボーグル原子力発電所において、4基がすべて稼働すると、米国で最大のクリーンエネルギー発電所となるという。
2023.07.28
ベトナム:2021~2030年の国家エネルギー基本計画が承認
2023年7月28日付報道によると、トラン・ホン・ハ副首相は、2050年までのビジョンを掲げた国家エネルギー基本計画を承認した。この計画には、エネルギー安全保障の確保、エネルギー転換の公正な移行と開発の達成、エネルギー資源の開発という3つの主な目標が示されている。この目標を達成するため、(1)投資資金の動員と配分、(2)メカニズムと政策、(3)環境と科学、技術、(4)人材育成、(5)国際協力、(6)本計画を実施するための組織と監視の6つの解決策が示されている。
2023.07.27
ベルギー・日本:JERAが洋上風力最大手の買収手続きを完了
JERAは2023年7月27日、ベルギーの洋上風力発電開発事業者Parkwind NVの株式100%を購入する手続きを完了したと発表した。同社は2023年3月22日に親会社のVirya Energy NVとの間で株式売買契約を締結したことを発表していた。今回、規制当局からの承認を得て株式取得手続きを完了し、JERAの子会社としたもの。買収のための費用は15億5,000万ユーロ(約2,400億円)と報じられている。Parkwind NVはベルギー国内で4つの洋上風力発電事業(発電出力合計:77万1,000kW)を保有し、最近ではドイツのバルト海で25万7,000kWの事業を開始したほか、アイルランドなどで洋上風力発電所を建設中である。
2023.07.27
米国:Avangrid社、インフレ抑制法を活用し4.6GWをリパワリングへ
スペインIberdrolaの米国子会社Avangrid社は2023年7月27日の第2四半期決算発表時、2032年までに米国内に所有する陸上風力4.6GWのリパワリングを実施する計画を発表した。同社はインフレ抑制法により拡大した生産タックスクレジットを活用する予定である。同社CEOのアザグラ氏は、「リパワリングのタイミングは13~20年稼働している風車が適しており、現在所有する過半数の風車が該当する」と説明し、「リパワリングにより発電効率が30%程度向上し、許認可のスケジュールも通常より短い」と述べた。同社は2011年に運転を開始した、オレゴン州の1.5~2.0MW機を用いた風力発電所よりリパワリングを開始する予定である。
2023.07.26
ドイツ:政府、「国家水素戦略」改定版を閣議決定
連邦政府は2023年7月26日、水素市場立ち上げとサプライチェーン構築の迅速化に向けて、「国家水素戦略」改定版を閣議決定した。2020年に策定された旧戦略からの変更点として、国内における水素製造能力の増強のため、2030年の水電解装置導入目標が現行の500万kWから1,000万kWに引き上げられた。一方、政府は2030年に水素需要が950億~1,300億kWhに拡大すると予想しており、国内製造のみでは需要を賄えないため、需要の50~70%を輸入する方針である。このため、連邦政府は年内に「水素輸入戦略」を策定するとしている。改訂版にはまた、水素市場の迅速な立ち上げと移行期における供給不足を回避するため、ブルー水素やターコイズ水素といった低排出水素の輸入も認めることが明記された。水素輸送インフラについては、既存のガス導管の転換や新設により、2027/2028年までに国内で1,800km以上、さらに欧州全体では約4,500kmの水素パイプラインを整備する。基幹系統の整備により、2030年までに水素製造、輸入、貯蔵の主要拠点と需要家を接続することを目指している。再エネ業界団体からは、洋上風力による水素製造に対する支援が明示されていない点、また国内における再エネ導入・グリーン水素製造のポテンシャルを最大限に活用することなく、ブルー水素の輸入を認めている点などに批判が集まっている。
2023.07.26
英国:規制機関、小売財務基盤強化と需要家保護に向けた新規制方針を発表
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2023年7月26日、小売事業者の財務基盤強化と需要家保護に向けた新規制方針を発表した。小売財務基盤の強化に向けては、事業規模に応じて各社の資本金額に要件を設ける方針であり、電気、ガスを契約する需要家数に基づき1需要家当たり115ポンド(約2万1,000円)を目標として純資産額を上積みすることを求め、さらに0ポンドの下限を設定することとした。調整後純資産額が1需要家当たり115ポンドの上積みに満たない場合、事業者には財務基盤の改善方法(Capitalisation Plan)をOFGEMに報告する義務が発生する。0ポンドを下回った場合は小売ライセンス規約違反の扱いとなる。OFGEMはこれを2025年3月31日から適用するとしている。需要家保護に関しては、需要家向けサービスで全体的に満足度の低下がみられるとして、問い合わせ窓口を夜間や週末も設けることや、メールやチャットなどオンラインでの問い合わせ受け付けなどを義務付ける。このほか、非家庭用小売市場の調査結果を公表し、支払いに困窮する中小企業や、地主・家主を介すなどして直接電気・ガスの供給契約を持たない人々(介護施設、一部の公営住宅、トレーラーハウスの住人など)に支援が確実に行き届くようにするため、規制変更などが必要であるとして、政府と共同で検討を進めていくとした。
2023.07.21
中国:中央政府の13省庁、地方政府の公用車に新エネ車の採用を支援
国家発展改革委員会、国家能源局など関連13省庁は2023年7月21日、電子製品と自動車の販売促進政策を発表した。そのうち、自動車の販売促進では、充電インフラの整備拡大や、農村地域向けの普及拡大を含む10の措置を打ち出した。具体的には、新車購入時のナンバー制限(都市部)の緩和や、地方政府の公用車の採用、利用時の電気料金の減免、駐車場不足に向けた課題解決など詳細な支援策を打ち出している。
2023.07.21
インド:インド政府、東南アジア諸国との電力取引を検討
2023年7月21日付の報道によると、インド政府は、東南アジア諸国との電力取引を検討している。匿名の電力省関係者によると、インドのゴア州で7月20日に開催されたG20エネルギー閣僚会合において一部の国と協議が行われた。フランスのEDFが価格設定等の規制の枠組みを取りまとめた報告書を準備しており、年内に完成見込みとのことである。インド政府はUAEとの間でも海底ケーブルを通じた連系を検討している。
2023.07.20
中国:国内の再エネ発電設備容量が13億kW、全電源の48.8%を占める
現地紙は2023年7月20日、中国の再エネ発電設備容量が2023年6月末時点で13億2,200万kW(内訳:水力4.18億kW、風力3.9億kW、太陽光4.71億kW、バイオマス0.43億kW)に達したと報じた。再エネの設備容量は、2022年6月末時点から18.2%も増加しており、全電源の48.8%を占めている。また、2023年上半期(1~6月)における再エネ電源の新設容量は1億3,400万kWと全電源増加分の77%を占めた。その内訳をみると、水力536万kW、風力2,299万kW、太陽光7,842万kW、バイオマス176万kWとなっている。
2023.07.20
英国:Vattenfallが英国洋上風力プロジェクトNorfolk Boreasの開発を中止
大手通信社は2023年7月20日付の報道で、スウェーデンのエネルギー企業Vattenfallが英国の洋上風力プロジェクトNorfolk Boreasの開発中止を発表したことを伝えた。Norfllk Boreasは英国東海岸Great Yarmouthの約94km沖に計画されている設備容量1.4GWの洋上ウインドファームであり、2022年のCfD(差額決済)入札第4ラウンドにおいて、CfD入札における過去最低価格37.35ポンド/MW(2023年7月25日現在1ポンドは約182円)で落札された。Vattenfallは、プロジェクト開発中止の要因として、インフレ進行により開発コストが40%上昇したことを挙げており、同社が開発権を取得しているNorfolkエリアにおける他の2プロジェクト(Norfolk EastおよびNorfolk West、合計容量2.8GW、CfD入札未実施)についても見直しを行うとしている。なお、CfD入札第4ラウンドにおいて、Norfolk Boreasと同様に37.35ポンド/MWで落札された他の4つの洋上風力プロジェクト(Inch Cape、East Anglia3、Hornsea3、Moray West)については、現時点において開発が進められる予定である。一方で、Vattenfallはドイツの太陽光発電開発会社Solizerを買収したことを発表した。この買収には、ドイツにおける4GWの太陽光発電プロジェクトが含まれるとしている。
2023.07.19
韓国:電気・ガス料金値上げに伴い料金支払いの滞納が急増
現地紙は2023年7月19日、電気料金の値上げに伴い、住宅用・商業用の電気料金滞納額が急増していると報じた。それによると、2022末時点で住宅用・商業用の電気料金の滞納額は704億2,000万ウォン(約70億4,200万円)に上ったことが確認されており、新型コロナの影響を受けた2020年(滞納額:680億8,000万ウォン)と2022年(同636億3,000万ウォン)を上回る。2023年1月と5月には電気料金がそれぞれ1kWh当たり13.1ウォン(約1.3円)と8ウォン(約0.8円)値上げされ、電気料金の滞納が深刻化することが懸念されている。これを受けて、野党である「共に民主党」は、経営困難に直面する中小企業を対象とした電気料金・都市ガス料金を支援できる法的根拠を盛り込んだ「エネルギー法一部改正法案」を代表発議した。
2023.07.19
EU:欧州議会のエネルギー委員会、電力市場改革案を修正のうえ採択
欧州議会の産業・研究・エネルギー委員会(ITRE)は2023年7月19日、欧州委員会が提案した電力市場改革案について、一部修正した上で採択した。主な修正内容として、まず需要家保護に関して、供給事業者が電気料金の支払いが困難である脆弱な顧客に対して送電を停止しないこと、またそれらの顧客に対して事前決済型の契約を要求しないことを規定した。また、非化石電源の開発支援の方法について、欧州委員会は双方向の差額決済契約(CfD)に限定することを提案していたが、今回の修正案では同等の制度も引き続き認めることとしている。さらに、双方向CfDの対象電源について、欧州委員会の当初案では、再エネに加えて、原子力の新設および既存炉の運転延長を目的とした設備投資に対する適用を認めていたが、今回の修正案では既存炉への設備投資は適用外としている。今後、欧州議会とEU理事会との交渉ステップに移行する予定である。
2023.07.18
英国:規制機関、洋上風力送電線入札ラウンドの参加者を確定
規制機関ガス・電力市場局(OFGEM)は2023年7月18日、洋上風力送電事業者(OFTO)の選定に向けて入札ラウンドを実施するに当たり事前審査を行い、4社に参加資格を与えたと発表した。参加資格が与えられたのは、Gravis Capital Partnersコンソーシアム(伊藤忠商事参画)、EKITDコンソーシアム(九州電力参画)、Diamond Transmission Partners(三菱商事参画)、Transmission Capital Partnersの4社。今回の入札対象は3つの洋上風力発電所(Dogger Bank A、Neart na Gaiothe、Moray)の送電線であり、OFGEMはこれらの資産の合計額はこれまでの入札ラウンドの最高額となる約2億ポンド(約363億円)に上ると見積もっている。
2023.07.17
米国:PJM、冬季嵐Elliott時の運用結果を報告、信頼性強化に向けた提言も
米国東部の独立系統運用事業者であるPJMは2023年7月17日、2022年12月23日から26日にかけて発生した、冬季嵐Elliott被災時における運用結果を報告した。この期間における発電所の計画外停止は天然ガス火力発電所が最も多く(停止した発電設備容量の約7割に相当)、その主な原因は凍結による機器故障・天然ガスの供給ロスであると分析。坑井の凍結による供給ロスについては2~3Bcf/日を当初想定していたが、実際には10Bcf/日と増加した。またPJMは需要予測の難しさについても述べており、中でも2022年12月24日(土)のピーク需要は、予測値よりも約8%(+9,390MW)高くなった。この理由として、急激な気温低下と休日の2つを挙げている。後者については、PJMは過去実績(2019年からの3年分)を用いて需要予測をしているが、それらがすべて平日であったことから誤差が大きくなったという。さらに報告書では更なる信頼性強化に向け、ガスと電気との協調改善に関する7項目を含む、計30項目を提言している。
2023.07.13
香港:電力供給2社投資、世界最大の浮体式LNG貯蔵再ガス化設備運用開始
香港の電力供給両社中華電力有限公司(CLP)と香港電灯有限公司(HKElectric)は2023年7月13日、共同で投資開発していた香港の浮体式LNG受入基地の運用開始を発表した。同受入基地は香港西南海域にあり、全長は345m、幅55m、貯蔵能力は26万3,000m3であり、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備船(FSRU)と一体運用する施設で、再ガス化後にガス火力の発電用の燃料として供給する。両社は香港政府が掲げる2050年カーボンニュートラル目標に向けた対応として、電力供給のうち環境負荷の低いガス火力発電の比率を増加させている。
2023.07.13
米国:米スタートアップAvnos、CO2回収技術の商用化に向け8,000万ドル調達
カリフォルニア州スタートアップ企業のAvnos社は2023年7月13日、大気中のCO2を直接回収する技術(DAC:Direct Air Capture)の商用化に向けて、石油大手のConocoPhillipsおよびシェルと米国格安航空会社ジェットブルー航空のベンチャーキャピタル部門とで合計8,000万ドル超の戦略的・投資パートナーシップを締結したことを発表した。一般的なDAC技術では、CO2回収1t当たり数トンの水を消費するのに対し、ハイブリッドDAC(HDAC)と呼ばれるAvnos社の技術では、CO2の回収とあわせて5~6t(CO2回収1t当たり)の水を生成することができる。さらに、CO2回収プロセスにおいて熱を利用しないため、エネルギー消費量は競合他社の技術と比較して半分となる。Avnos社は、今回調達した資本を活用し、2025年末までに商用化が可能なDAC設備の提供を目指すとしている。
2023.07.12
中国:石炭火力の卸料金は、2018年の市場取引開始以前比で18.3%も上昇
地元紙は2023年7月12日、石炭火力の卸料金の平均価格が市場取引開始前の2018年当時の基準料金と比較して18.3%上昇したことを中国電力企業聯合会(CEC)が電力業界報告書で明らかにしたと報じた。2018年からスタートした電力市場化への移行で、家庭用など規制分野以外は基本的に電力市場を経由しなければならず、2022年の広域、地域電力市場の取引量は全消費量の60%以上に達した。区分として中長期取引が9割以上ということで、卸価格の上昇幅は8~20%となっている。
2023.07.12
ドイツ:新制度導入後初の洋上風力入札は4区域中2つをbpが落札
連邦系統規制庁は2023年7月12日、2023年6月1日実施の洋上風力入札(事業者調査方式)の結果を発表した。今回は補助なしでも落札を希望する入札者が複数(北海で8件、バルト海で9件)あったため動的入札が実施され、政府に支払うオプション料について最も高額な支払額を承諾した事業者が落札に至った。なお、動的入札による支払額の総額は約126億ユーロ(約1兆9,546億円)となった。今回入札対象となった4区域における落札者および支払額は、それぞれ次の通りである。(1)N-11.1(北海、200万kW)、bp OFW Management、183万ユーロ/MW、(2)N-12.1(北海、200万kW)、North Sea OFW、187万5,000ユーロ/MW、(3)N-12.2(北海、200万kW)、bp OFW Management、156万ユーロ/MW、(4)O-2.2(バルト海、100万kW)、Baltic Sea OFW、207万ユーロ/MW。
2023.07.11
中国:充電インフラ整備が加速、214万台以上が稼働中
中国電気自動車充電設備促進連盟は2023年7月11日、2023年6月末時点で稼働中の電気自動車用充電設備は214万9,000基に達したことを発表した。内訳は直流90万8,000基、交流124万基となり、6月の1カ月間における新規設置数は6万5,000基、前年同期比40.6%増と設置が急速に進められている。関係者は、政府の充電インフラの整備拡大の政策方針に加え、新車市場における新エネ車(EVを含む)のシェア拡大により充電インフラの市場規模は引き続き拡大すると見ている。なお、充電インフラ事業上位15社で全体の市場規模の94%を占めている。
2023.07.10
米国:NRDC、EVバッテリーを系統用蓄電池として再利用する有効性を指摘
環境保護団体の天然資源保護協議会(NRDC:Natural Resources Defense Council)は2023年7月10日に発表した報告書にて、EVバッテリーの二次利用の有効性を指摘した。特に古いEVバッテリーは元の容量から20%減少しても、バッテリーセルを適切に組み合せて系統用蓄電池として再利用することが有効としている。また、EVバッテリーにはリチウム、ニッケル、コバルトなど採掘過程で環境汚染が懸念される鉱物が使用されるため、これらの再利用により資源効率の向上・環境負荷減少などのメリットがあるとしている。一方、課題としては、二次利用後のバッテリー管理体制(メーカーの独自設計を踏まえた保守など)、再利用されたバッテリーに関する責任の枠組み(品質保証など)の2つが挙げられている
2023.07.07
EU:欧州委員会、エネルギー憲章条約からの協調的離脱案を提案
欧州委員会は2023年7月7日、EU、加盟国およびEuratom(欧州原子力共同体)に対し、エネルギー憲章条約(Energy Charter Treaty)から協調的に離脱する案を提案した。同条約は、エネルギー分野の貿易自由化と投資保護に関する多国間枠組みを定めたもので1994年に調印(1998年に発効)された(今回の提案時点で56の国・国際機関が加盟)。しかし、本条約には、エネルギー企業は条約加盟国や国際機関の政策が自社の化石燃料投資に不利な結果をもたらす場合に、賠償請求を仲裁裁判所に提訴することができるという規定があるなど化石燃料投資に対する保護が厚いとの批判があった。欧州委員会のシムソン委員(エネルギー担当)は「時代遅れとなった条約は、EUが掲げるエネルギー・気候変動目標と適合していない」と述べ、本条約の改正を求めていくよりも今回の協調的離脱案が法的・政治的に最も望ましい方法だとしている。同案は今後、EU理事会において協議される。なお、EU加盟国のうちフランス、ドイツ、スペイン、イタリアなど8カ国が既に同条約からの離脱を決定している。
2023.07.06
アラブ首長国連邦:国家水素戦略が承認、グリーン水素を2050年に1,500万t
2023年7月6日付報道によると、アラブ首長国連邦(UAE)政府は、国家水素戦略を承認し、2031年までにグリーン水素を年間140万t、2050年までに年間1,500万tを生産するとした。また、2031年までにグリーン水素研究開発センターを設立し、2031年までに水素の生産拠点(オアシス)を2カ所、2050年までにさらに3カ所を開発する。オアシスで生産された水素は、重工業、道路輸送、航空、海上輸送などの分野で利用することで、2031年におけるCO2排出量の25%削減を見込む。同国は2022年時点で、今後の目標として、世界のクリーン水素生産国上位10位以内に入り、世界の水素市場シェアで25%を目指すと発表しており、その目標では、クリーン水素の生産量を2050年までに年間1,400万~2,200万tとしていたが、今回より明確な目標が設定された。なお、2023年3月時点で、同国には約28件のグリーン水素およびブルー水素のプロジェクトがあり、そのうち7件が投資決定されている。
2023.07.06
オランダ:2023年上半期、50%を再エネで電力供給
エネルギー情報誌は2023年7月6日、オランダの2023年上半期の電力供給において49.6%が再エネ由来であったと報じた。国家気候プラットフォームが発表したデータを伝えたもので、太陽光が最も多く(18.9%)、陸上風力(14.2%)、洋上風力(8.6%)、バイオマス(7.8%)と続く。2022年上半期の再エネ比率43%から大きく伸びた背景には、電力需要が抑制されたことも一因である。統計局によるとオランダ国内の太陽光発電新設量は、2020年に380.3万kW、2021年に388.2万kWで、累計では2022年6月末に1,650万kWに達し、近年の伸びが大きい。オランダ国内では大規模な洋上風力発電(発電出力:153万kW)の試運転が始まっており、2023年を通じて再エネ比率が50%を超えると考えられ、環境審査局はこの比率は2030年に85%まで高まると期待している。
2023.07.06
米国:ミネソタ州規制当局、Xcel Energyの蓄電池プロジェクトを承認
ミネソタ州公益事業委員会は2023年7月6日、Xcel Energy社による1万kW/100万kWhの蓄電設備の建設計画を承認した。Xcel Energy社は、ミネソタ州ベッカーに所在する閉鎖予定のSherburne County石炭火力発電所の跡地に合計71万kW規模の太陽光発電所の建設を予定しており、蓄電設備を併設することで、太陽光発電を最大限に利用する計画である。蓄電池はForm Energy社製の鉄空気電池システム(酸素と鉄の化学反応を利用した蓄電池)が採用され、最大100時間の蓄電・放電が可能となる。蓄電設備は2024年第2四半期に着工され、太陽光発電所とともに2025年内の運用開始が予定されている。なおXcel Energy社は、コロラド州内の石炭火力発電所跡地にも同様の蓄電設備を建設する計画である。
2023.07.06
米国:DOE、太陽光発電モジュール部品の国内製造に4,500万ドル資金提供
米国エネルギー省(DOE)は2023年7月6日、太陽光発電モジュールの構成部品を米国内で製造する新興企業の支援を目的に、4,500万ドルの資金提供を行うことを発表した。同資金提供の対象には、太陽光発電の二重利用(例として、営農型太陽光発電:農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有)の新市場開拓を目指すプロジェクトも含まれる。同省は太陽法発電モジュール部品の製造を国産化することを、クリーンな電力系統を実現するための鍵と位置付けている。また同省は、多様な企業が設立されることを通じて、雇用創出、経済活動の活性化、および労働力の技術的専門知識・技能の向上も図る考えである。
2023.07.05
中国:夏季のピーク需要対応、揚水発電の新規稼働を急ぐ
電力専門メディア紙は2023年7月5日、夏季のピーク需要対応で国家電網有限公司傘下の国網新能源公司が開発中の揚水発電所の運転開始を前倒していると報じた。同社の計画では6月までに8台、計240万kWの揚水発電の運開を計画していたが、実際には10台、計300万kWを運開させている。国家電網が5月に公開している今年の夏季需要想定によると、最大電力は13.7億kWに達し、前年比7%(8,000万~1億kW増)の増加を見込んでいる。また、6月に入り気温の上昇が想定よりも早く、雲南省、四川省の一部で同時期の最高気温を記録しているため、電力消費のピークが予定より早まることに備え、供給力の確保を急ぐとしている。
2023.07.03
中国:世界最大とされるPEM型電解槽を用いたグリーン水素プロジェクト発表
2023年7月3日付報道によると、中国で世界最大規模となる固体高分子(PEM)型水電解装置を用いたグリーン水素プロジェクトが発表された。本プロジェクトは330億元(約6,560億円)を投じ、内モンゴル自治区の豊鎮市付近で風力と太陽光発電設備(計300万kW)とPEM型電解槽を設置し、年間5万tのグリーン水素を製造する。プロジェクトを主導する豊鎮市や中国電力建設集団股份有限公司(PowerChina)は、PEM型では世界最大になると主張しているが、具体的な電解槽の容量は今のところ不明である。現行で実用化されている水電解装置にはアルカリ型とPEM型の2種類あり、安価なアルカリ型に対し、PEM型は高価であるものの、設備の専有面積が小さく、迅速な起動に優れ、再エネ発電の変動性に対応できる優位点がある。中国は、アルカリ型で欧米との製品比で75%安価とされる低価格を武器に、市場でのシェアを伸ばしている一方、PEM技術の開発は遅れているとされる。
2023.07.01
英国:政府、割高なプリペイメントメーター料金を是正
エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)は2023年7月1日、エネルギー貧困世帯や料金滞納世帯向けに適用されつつも他の料金プランよりも割高となっているプリペイメントメーター料金について、一時的に政府がコストを負担することでこれを是正すると発表した。プリペイメントメーター料金は、口座引き落としやクレジットカード支払いと比べプリペイメントシステムの提供に費用がかかることから割高となっている。DESNZは、同日(7月1日)から2024年3月までの間、このシステム費用を負担し、これにより世帯当たり年間約21ポンド(約3,850円)料金負担を軽減する。また、2024年4月以降については、恒久的な是正に向け、規制機関のOFGEMが費用負担の在り方を今後検討していくとしている。
2023.06.30
インド:カクラパー原子力発電所3号機が運開
2023年7月1日付の報道によると、原子力発電公社(NPCIL)は6月30日、インド西部のグジャラート州でカクラパー原子力発電所3号機(設備容量70万kW)を運開した。炉型は加圧重水炉(PHWR)で、インドで最初の70万kW規模の国産PHWRとなる(1、2号機の出力は22万kW)。4号機(同70万kW)の運開に向けた進捗率も5月末時点で97%に達したと報じられている。
2023.06.30
英国:Octopus Energy、買収したBulb Energyの顧客の移行完了を発表
英国の主要小売事業者であるOctopus Energyは2023年6月30日、2022年12月に買収したBulb Energyの顧客150万軒の移行作業が完了したことを発表した。Octopus Energyによれば、約6カ月間での移行は記録的な速さであり、移行した顧客の75%がシームレスな手続きに満足しているという。また、Bulb Energyの全従業員にもOctopus Energyでの継続雇用が提案され、94%が承諾したことも明らかになった。他方、今回の移行にあたっては「Energy Transfer Scheme(ETS)」が採用され、対象顧客への2022/2023年冬季向けの電力調達のために政府からOctopus Energyに対して16億3,000万ポンド(約3,000億円)の資金支援が行われていた。ETSでは、支援金の返還とは別に、移行対象顧客向け事業で利益が生じた場合は政府とシェアされることが定められており、Octopus Energyから政府に対し、28億4,000万ポンド(約5,200億円)が支払われる予定であることから、政府には12億1,000万ポンド(約2,200億円)の差益が発生することになる。Octopus Energy創業者兼CEOのGreg Jackson氏は「買収に伴い、不透明でリスクの大きい時期が続いたが、今回の結果は顧客やBulb Energyの従業員などにとって最良のシナリオとなった」とコメントした。
2023.06.29
韓国:政府、2030年までにEV充電設備123万基を設置へ
現地紙は2023年6月29日、政府が「電気自動車充電インフラの拡充および安全強化案」を発表したと報じた。それによると、2030年までに電気自動車(EV)420万台の普及目標にあわせて、充電器123万基以上を設置する計画を明らかにした。EV充電器は2023年5月末時点で24万基(そのうち、急速充電2.5万基)が設置されているが、利用者からは依然として不足していると指摘されている。
2023.06.29
英国:規制機関、需給調整市場における不当な利潤追求を防止する方針
規制機関のガス・電力市場局(OFGEM)は2023年6月29日、バランシングメカニズム(需給調整市場、以下BM)における一部の発電事業者の不当な利潤追求行為を防止するため、発電ライセンスの規約に新たな条項を設ける方針を発表した。BMでは系統運用者が需給バランスを調整するために発電事業者や小売事業者から調整力を確保しており、これにかかる費用は最終的には需要家が負担している。OFGEMは、一部の発電事業者がBMで不当な利潤追求行為を行い需要家の負担を増大させていた可能性があるとして、2022年に調査を実施した。調査の結果、一部の火力発電事業者が、高い電力需要が見込まれる日の午後の早い時間帯に発電を停止する予定を申請し、ピーク需要の時間帯の調整力を確保しようとする系統運用者に対し、5~6時間で最大6,000ポンド/MWh(約1,101円/kWh)など高い価格で供給オファーを行っていた。OFGEMは2023年2月、こうしたフレキシビリティの提供に逆行する行為を行った事業者の利潤を制限するライセンス条項(IOLC:Inflexible Offers Licence Condition)を提案していたが、意見公募の結果、健全な発電事業者の行動も制約されることを懸念する意見が寄せられた。これを踏まえ、今回OFGEMは、IOLCの対象範囲を当日中など実供給時間に近いタイミングでの発電停止などに限定する方向で2月の案を修正し、意見公募を再実施している。
2023.06.28
米国:ノースダコタ州石炭火力にCCSを追設するプロジェクトが最終開発段階
ノースダコタ州を拠点とするミンコタ電力協同組合は2023年6月28日、カナダのエネルギー輸送大手のTCエナジー社、三菱重工業(MHI)、インフラ建設工事会社大手の米国Kiewit社およびその関連企業と協定を締結し、同州の石炭火力にCCSを追設するプロジェクト「Project Tundra」を最終開発段階へと進めることを公表した。これは同組合が運営する石炭火力Milton R. Young Station 2号機(出力45万5,000kW、運開1977年)を対象として、年間最大400万tのCO2を貯留する世界最大級のCCSプロジェクトである。排ガスの90%のCO2を回収して地中へ貯留する計画であり、プロジェクトの総額は約14億ドルとなるとしている。協定に基づいて、同組合は引き続きプロジェクトを主導し、プロジェクトエリアの地主や地域住民と調整を行うとしている。同プロジェクトは、2024年初頭に資金調達の完了と建設の開始通知が見込まれるという。
2023.06.27
ドイツ:2023年上半期の消費電力量に占める再エネ比率が52.3%に
ドイツ連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)とバーデン・ヴュルテンベルク太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)は2023年6月27日、2023年上半期の同国の消費電力量に占める再エネ比率が前年同期から3.1ポイント上昇し52.3%となると発表した。2023年上半期の総発電電力量は2,659億kWhとなり、前年同期(2,983億kWh)に比べ約11%減少。電力輸出入を除いた国内の消費電力量は2,628億kWh(前年同期2,810億kWh)となった。再エネ(水力、風力、太陽光など)発電電力量は1,375億kWhとなり、国内消費電力量に占める再エネ比率は52.3%となる。特に、2023年5月については晴天が続いたことで太陽光発電量が増加し月間で過去最高の88億kWhを記録、同月の消費電力量に占める再エネ比率も57%と非常に高かった。なお同国は2030年までに消費電力量に占める再エネ比率を80%とすることを目標としている。
2023.06.27
米国:テキサス州、ピーク負荷の記録を更新
テキサス電力信頼度協議会(ERCOT)管内は2023年6月27日、最高気温39.2℃の猛暑に襲われ、史上最高値となる80.8GWのピーク負荷を記録した。続く6月28日も80.0GW、6月29日も80.1GWのピーク負荷を記録したが、風力発電が6月19~23日の平均出力約9.4GW未満に対し、6月27日には17.4GWを超えるなど再生可能エネルギー出力が好調であったため、卸電力価格は抑制されている。6月28日にはERCOTノースハブのピーク時の地域別限界価格(LMP:Locational Marginal Price)は48ドル/MWhであり、6月26日の約455ドル/MWhと比較して低下した。
2023.06.26
中国:水不足により四川省、雲南省が電力供給に懸念
大手紙は2023年6月26日、エルニーニョ現象による異常気象と経済成長によって、水力への依存度が高い四川省、雲南省が夏季の電力供給を懸念していると報じた。気象局は、6~8月に両地域を含む南西部、中部の気温が例年よりも高くなり、また降水量が比較的少なくなると予測している。関係者によると集中・分散型の新エネルギーの大規模導入によって電源や負荷の複雑性が増していることも安定供給の課題であるとして、供給側と需要側の双方が連携し、地域・広域間の需給調整が必要と示唆した。
2023.06.22
ドイツ:連邦カルテル庁、電気料金負担軽減措置の悪用に関する調査を開始
連邦カルテル庁は2023年6月22日、電気料金高騰に対する負担軽減措置を悪用した疑いがあるとして、小売事業者数十社に対する詳細調査を開始した。連邦政府は、ウクライナ情勢を背景としたエネルギー価格高騰の影響を緩和するため、2023年1月より家庭や企業などの電気料金に上限を設定しており、小売事業者の申請を受けて、実際の電気料金と上限価格の差分を連邦政府が補填している。連邦カルテル庁は調査の前段として、2023年1~5月に受理したすべての申請を対象に、小売事業者が電気料金を吊り上げ不当な利益を得ていたケースがなかったかを分析した。不正が明らかになった場合、小売事業者は不当に得た利益を払い戻す他、悪質な場合は総売上高の8%の罰金を科される可能性がある。連邦カルテル庁は2023年5月に、ガス供給事業者と熱供給事業者に対する同様の調査を開始している。
2023.06.21
韓国:化学大手ハンファインパクト、水素50%混焼ガスタービンを開発
産業通商資源部(MOTIE:日本の経済産業省に相当)は2023年6月21日、ハンファ・インファクト(ハンファ総合化学が2021年9月に社名変更)が水素を50%まで混焼するガスタービン技術を開発したと明らかにした。同社は、韓国西部発電と協力して中型LNGガスタービン(8万kW)に水素を50%まで混焼する技術を開発し、今後は商業運転中の西仁川(Seoincheon)コンバインドサイクル発電所のガスタービン発電機1基(15万kW)に同技術の適用に向けて共同開発に乗り出す計画である。MOTIE水素経済政策官は、「将来的には総発電電力量に占める水素・アンモニア由来の発電比率を2030年に2.1%、2036年に7.1%に拡大していく計画である」と伝えた。
2023.06.21
英国:規制機関、National Grid事業の分離に向けプロセスや費用の検討開始
英国の規制機関ガス・電力市場局(OFGEM)は2023年6月21日、脱炭素化に向けた独立系系統運用者FSO(Future System Operator)の設立に向け、National Gridグループ(以下、NGグループ)から事業を分離するための具体的なプロセスや費用の負担方法について検討を開始したと発表した。政府の政策のもと2024年頃までに設立される予定のFSOは、独立機関として電力およびガスネットワークの運用やインフラ整備の計画機能を一括して担い、国のネットゼロ目標やエネルギー安全保障確保に向けた取り組みに包括的かつ合理的に取り組むこととなっている。FSOの設立に向けては、NGグループから送電系統運用事業者NGESOとガス導管事業者(NGG:National Grid Gas)の開発・計画業務を分離して統合することとなっている。今回のOFGEMの発表によると、分離作業は二段階で進められ、第一段階の「Day 1」ではFSOを設立しNGグループから分離される事業を国が所有し、分離完了までに時間がかかる業務については一時的にNGグループとの合意のもと共同で行う。第二段階の「Day 2」では分離を完了し、このプロセスを終了する。NGグループ側は事業の分離にかかる費用について、統運用事業分(主にNGESOの人財やシステム、保有契約などの資産)を計1.28億~1.72億ポンド(2018年度価額)、ガス導管事業分を計300万ポンド、NGグループで発生する諸経費(主にITや総務関連の運営業務の切り離し)を計1.63億~2億ポンドと見積もり、段階別で推計した場合「Day 1」までに計1.8億~2.1億ポンド、その後「Day 2」までに3.0億~3.9億ポンドの費用(2022年度価額)がかかるとしている。OFGEMは分離にかかる費用の回収について、「Day 1」分はNGESOの収入規制(RIIO-2)に計上する方針としているが、今回、「Day 2」分については、RIIO-2の改訂により回収額を拡大するなど、複数案を提示している。OFGEMはこれらの方針や提案について8月2日まで意見公募を実施している。
2023.06.20
パキスタン・中国:中国、パキスタンで3基目の華龍1号型原子炉の建設へ
中国核工業集団有限公司(CNNC)とパキスタン原子力委員会(PAEC)は2023年6月20日、パキスタンのチャシュマ原子力発電所5号機(華龍1号型、120万kW級)を48億ドルで建設する協定に署名した。パキスタンのシャバーズ・シャリフ首相は、協定の署名後、パンジャブ州中部に位置する同号機プロジェクトの作業は直ちに開始されるとも述べた。2017年11月、CNNCとPAECは同号機建設に関する協力協定を締結し、当初2021年頃にプロジェクトを開始する予定だったが、延期されていた。同首相によると、世界的なインフレによりプロジェクト費用は増大したが、中国政府は、インフレによるコストの引き上げを控えただけでなく、約1億500万ドルの割引も実施したという。同国シンド州のカラチ原子力発電所2、3号機には、華龍1号型(110万kW×2基)が既に採用されており、チャシュマ5号機は、中国からパキスタンへの同型炉として、3基目の輸出例となる。
2023.06.20
フランス:ダムの貯水池に設置されたEDF初の浮体式太陽光発電所が完成
フランス電力EDFの再エネ子会社EDF Renouvelablesは2023年6月20日、フランスにおける同社初の浮体式太陽光発電所(発電設備容量2万kW)の竣工式を開催したと発表した。同発電所は、フランス南東部のオート・アルプ県にあるLazer水力発電所内の貯水池に設置された。これにより、同サイトの再エネ発電能力は2倍となる。同太陽光発電所には合計5万枚超の太陽光パネルが設置され、1万2,500世帯への電力供給が可能である。地域住民はクラウドファンディングを通じて同プロジェクトに17万9,000ユーロを出資した。この浮体式太陽光発電所は約30年間稼働する予定である。
2023.06.20
EU:グリーン水素基準が確定
欧州委員会(EC)は2023年6月20日、2023年2月に提案した再生可能(グリーン)水素に関する2つの委任法令(Delegated Act)が原案どおり確定したと発表した。EUはウクライナ侵攻を受けてロシアの化石燃料への依存を低減するための包括的なエネルギー政策(REPowerEU Plan)を2022年5月に発表し、再生可能エネルギーで水を電気分解して製造するグリーン水素の活用を拡大する方針(2030年の域内製造と輸入をそれぞれ1,000万t)を明らかにした。事業者からはグリーン水素事業の提案が相次いだが、「グリーン水素」の定義が明らかでないことが事業化の課題となり、基準作成を求める声があがっていた。このためECはグリーン水素を定める基準を提案し、加盟国と協議を進めていた。ECの定めるグリーン水素は、バリューチェーン全体のCO2排出量を化石燃料由来の水素と比較して少なくとも70%削減できることが必要となる。また、ECは水電解装置に電気を供給する再エネ設備の「追加性」や水電解装置の運転と再エネ設備による発電の「時間的相関」、両設備の「地理的相関」による条件を明らかにした。ECの試算によると、1,000万tのグリーン水素製造により5,000億kWhの電力供給が必要となるが、既存の再エネ設備を水素製造に使った場合、火力発電の発電電力量が増えてCO2排出量が増加する懸念があるため、新たな再エネ設備(追加性)による電力供給が条件となった。時間的相関については再エネ設備の発電電力量が水電解装置の消費する電力量を上回ることを、2029年末までは月ごとに、2030年以降は時間ごとに示す必要がある。グリーン水素基準は6月20日から20日後に正式に発効する。
2023.06.16
ドイツ:規制庁、時間帯別託送料金導入に向けコンサルテーションを実施
連邦系統規制庁(BNetzA)は2023年6月16日、電気自動車(EV)などの需要側リソースの普及拡大にともなう系統運用上の課題に対処するため、新たな規制案を提示した。気候変動対策として運輸・建物部門の電化を推進するドイツでは、将来EVやヒートポンプの導入が急速に進んだ場合、配電系統の整備が追い付かないことが懸念されている。BNetzAは今後、系統過負荷を回避するための緊急措置として、各家庭への電力供給を4.2kWに抑制することを系統運用者に認めるとしている。また、需要家の行動変容(電力需要の少ない時間帯にEV充電を行うなど)を促すため、時間帯別託送料金を導入する方針である。BNetzAは第2回コンサルテーションとして2023年7月27日まで関係者からの意見を募集したのち、2024年1月1日より規制を実行に移すとしている。
2023.06.15
ドイツ:第1回事業調査方式入札は競争が激しく、動的入札実施へ
連邦系統規制庁(BNetzA)は2023年6月15日、現在進行中の洋上風力入札の途中結果を報告した。同入札は事業者が入札区域の事前調査を行う方式(事業者調査方式)で、北海およびバルト海における4区域(総容量700万kW、2030年運開)が対象となっている。補助金なしでもプロジェクト落札を希望する、いわゆる0セント入札が4区域すべてで行われたため、動的入札が追加的に実施される。動的入札は、政府に支払うオプション料について最も高い金額を提示した事業者が落札するオークション方式で、これによる収益は電気料金の抑制や自然保護、漁業対策に充当される。同庁のクラウス・ミュラー長官は、「企業が洋上風力の拡大に補助を必要としないのは喜ばしいことであり、0セント入札が行われたことは、洋上風力が経済的に魅力的であるということを明白に示している」と述べた。
2023.06.14
南アフリカ:中国、南アに太陽光パネル(6,600万kW)提供を申し出
2023年6月14日付報道によると、駐南アフリカ中国大使は、南アフリカのKgosientsho Ramokgopa電力大臣に対し、中国製の太陽光パネル6,600万kW分を提供すると申し出た。同国では、全発電設備容量約5,500万kWのうち約4割が経年化や故障などにより運転不能となっており、深刻な電力不足に陥っている。国内の太陽光メーカー2社は新規に供給する余力がなく、今のところすべて中国から輸入されていることから、同電力大臣は電力不足の解消を解決すべく、中国に出向いて中国大手太陽光メーカー6社と交渉し、太陽光パネルを自国に輸入するための準備をしていた。(調査第二部/上原)
2023.06.13
ベトナム:国営ベトナム電力、発電用の石炭が6~7月に100万t以上不足
2023年6月13日付報道によると、ベトナム北部の火力発電所では、6~7月の発電用石炭が100万t以上不足しており、同地域の電力不足がさらに深刻となるおそれがある。石炭供給会社であるVinacomin社とDong Bac社は、6~7月に国営ベトナム電力(EVN)に439万tの石炭を供給するものの、EVNはさらに164万tの石炭を必要としている。EVNは他から60万t調達できたが、6月は約60万t、7月は約40万tが依然不足している。EVNの発電用石炭が不足する理由は、ベトナム北部における猛暑による渇水で水力発電所のダムが記録的な低水位となっており、石炭火力発電所をフル稼働させる必要があるためである。ベトナム産業貿易省では最近、5つの水力発電所の停止等によりベトナム北部で500万kWの電力が不足している、と述べていた。
2023.06.07
中国:国家核安全局、トリウム溶融塩実験炉に運転許可証を発行
中国国家核安全局(NNSA)は2023年6月7日、中国科学院上海応用物理研究所(SINAP)のトリウム溶融塩実験炉「TMSR-LF1」の運転許可証の発行を決定したことを明らかにした。同実験炉は、2018年9月に甘粛省武威市で建設が開始され、当初の2024年完成予定を前倒しし、2021年8月に完成した模様。また、2022年8月には、SINAPはエコロジー・環境省から原子炉の試運転の承認を得た。NNSAは「熱出力2,000kWのTMSR-LF1の運転申請書と技術文書を審査し、安全要件を満たしていると認められたため、同実験炉に運転許可証を発行することを決定した」としている。TMSR-LF1は、U-235を20%以下に濃縮した燃料(UF4)を使用し、トリウムのインベントリーを約50kg、転換比を約0.1、ブランケットを99.95%のLi-7を含むフッ化リチウム-ベリリウム(FLiBe)とする予定。同実験炉が成功すれば、2030年までに熱出力37万3,000kWの原子炉を建設するという。
2023.06.09
米国:テキサス州知事、天然ガス火力発電所の建設を推進する法案に署名
テキサス州のアボット知事(共和党)は2023年6月9日、電力ピーク需要の増加への対応を目的とした、天然ガス火力発電所の建設を推進する法案(SB2627)に署名した。本法案では、ガス火力発電所を建設する企業が低金利の融資を受けることができるプログラムの創設を目指しており、最大100億ドルの予算が割り当てられる。100億ドルのうち18億ドルは、同州のレジリエンス向上につながることが期待されるマイクログリッドの建設が対象となっている。さらに、設備の完成時には金銭的ボーナスとなる補助金が与えられることになっており、発電所に対する補助金は、12万ドル/MW(2026年6月1日までに系統に接続された場合)が、マイクログリッド(施設規模は2.5MWまでに限定)に対する補助金は、50万ドル/MWとなっている。
2023.06.06
米国:太陽光リサイクル企業がØrstedと米国にてパートナーシップ締結
テキサス州に本社を置く太陽光リサイクル企業のSOLARCYCLE社は2023年6月6日、Ørstedが米国に持つプロジェクトにおける、すべての使用済ソーラーモジュールをリサイクルするパートナーシップを公表した。SOLARCYCLE社は、単結晶シリコン(c-Si)を用いたモジュールを回収し、モジュールの分解、ガラスの剥離、セルの破砕を行うことで、パネルにおける重要な素材を95%抽出することが可能としている。既存のc-Siモジュールはリサイクルを前提に製作されている物が少なく、リサイクルのコストが高くなるという欠点がある。現在米国でリサイクルされている廃棄モジュールは全体の10%未満である。
2023.06.06
英国・ドイツ・オランダ:Shell、家庭向け電力・ガス小売事業から撤退を発表
英国の石油大手Shellは2023年6月6日、英国、ドイツ、オランダにおける家庭向け電力・ガス小売事業から撤退することを発表した。同社は同年1月から事業環境の悪化を理由に、家庭向け電力・ガス小売事業に関する戦略的見直しを行うことを発表していた。また同社は、既に同事業の売却手続きが進捗しており、今後数カ月以内に売却先と同意する予定であることも明らかにした。エネルギー情報誌の報道によると、売却先について、英国ではOVOやOctopus Energyなどが候補として挙げられている。
2023.06.05
ドイツ:産業の脱炭素化に向け炭素差額決済契約(CCfD)による支援を実施
連邦政府は、産業の脱炭素化を推進する目的で、炭素差額決済契約(CCfD:Carbon Contracts for Difference)に基づく支援制度を2023年内に立ち上げる。今後15年間で数百億ユーロを投じ、鉄鋼・化学・セメント業などの排出集約型産業の国際競争力維持と、製造工程の脱炭素化との双方の実現を目指す。連邦経済・気候保護省(BMWK)は、支援対象者を選定するための入札に先駆けて、2023年6月5日に準備作業を開始した。第1回入札(2023年冬に実施予定)への参加を希望する事業者は、8月7日までにプロジェクトの詳細をBMWKに提出しなければならない。入札の結果選定された事業者は、2025年から15年にわたって脱炭素化のための費用とCO2価格の差額の支払いを受けることができる。この脱炭素化のための費用は、入札価格(1t・CO2の排出を回避するために必要な費用)に水素価格などの変動が加味され、15年の間に同費用がCO2価格を下回った場合は、事業者は政府に対して支援金(CO2価格と費用の差額)を払い戻さなければならない。BMWKのハーベック大臣は、「CCfDにより水素価格やCO2価格などの変動リスクをヘッジし、事業者に対して脱炭素技術への投資を促すことが制度の目的」と説明している。
2023.06.05
EU:欧州委員会、電力市場の緊急策延長は必要なしとの報告書を公表
欧州委員会は2023年6月5日、2022年10月に施行された規則に基づきEUが導入した電力市場への緊急介入策を評価する、欧州議会およびEU理事会宛の報告書を公表した。同報告書は、電力需要の削減施策(そのうち努力目標としての過去5年の総電力消費量平均からの10%削減は2022年12月1日~2023年12月31日適用)、再エネ、原子力および褐炭などの発電事業者の収入上限(インフラマージナルキャップ:2022年12月1日~2023年6月30日適用)、および一般家庭に加えて中小企業への小売価格規制の適用拡大(2022年10月8日~2023年12月31日適用)は、2022年を通じて高騰が続いた欧州電力市場の状況を鎮静化するのに貢献したと評価した。一方、現時点の卸電力市場の需給および価格水準は2022年と比較し大幅に改善したこと、これらの方策の一部は欧州委員会が2023年3月にとりまとめたEU電力市場改革案に含まれることから、現時点ではこれら緊急策の延長は必要ないと結論づけた。同報告書では、現状の卸電力価格やガス価格が安定していることを踏まえ、2023/2024年冬季において卸電力価格が極端に上昇する事態となる可能性は低いとの見通しも示している。
2023.06.05
米国:DOE、国家クリーン水素戦略・ロードマップ初版を発表
米国エネルギー省(DOE)は2023年6月5日、国家クリーン水素戦略・ロードマップ(U.S. National Clean Hydrogen Strategy and Roadmap)初版を発表した。本戦略・ロードマップは、米国における水素の製造や輸送、貯蔵、利用の現状と、クリーン水素が米国の脱炭素化目標にどう貢献するかという見通しを示している。クリーン水素の大量導入に向けた3つの重要戦略として、(1)脱炭素化が困難な分野をターゲットとしたクリーン水素の利用、(2)製造コストの削減、(3)水素の地域インフラネットワークの構築を挙げている。本戦略・ロードマップの草案は、2022年9月に公表されていた。今回の初版には、産業界や研究機関、州などによるコメントを反映し、クリーン水素の商用化加速を目的としたDOEの報告書「Pathways to Commercial Liftoff : Clean Hydrogen」(2023年3月発表)の知見も追加している。今後は、少なくとも3年ごとに更新される予定である。
2023.06.02
中国:国家能源局、新型電力系統に関する青書を公開
国家能源局は2023年6月2日、新型電力(再エネ対応)システムの発展に関する青書(白書)を公開した。同書は、国家能源局が集約した11の研究機関が共同で編集したもので、政府が2021年から打ち出している再生可能エネルギーの大量導入に伴うレジリエンスの強化に対応した新型電力システムの構築について、エネルギーと電力の安全保障を確保することを前提に、経済成長に伴う電力需要の伸びに対応した、インテリジェントな系統形成を、3段階(~2030年、2030~2045年、2045~2060年)で推進する方針などが盛り込まれている。
2023.06.02
中国:洋上風力で海水から直接水素を製造することに世界で初めて成功
現地紙は2023年6月2日、発電機器メーカーの中国東方電気集団公司と四川大学・深セン大学の共同チームが、福建省沿岸の洋上風力の現場で海水から直接水素を製造する試験に世界で初めて成功したと報じた。それによると、共同チームは興華湾洋上風力発電所の現場で、浮体式洋上水素製造プラットフォームを用いて脱塩せずに海水から直接、水素を製造する試験に成功した。現地では、洋上風力と脱塩なしの水素製造の組み合わせは新しい水素製造のモデルになると報じられている。
2023.06.01
台湾:地元の基隆市政府が台湾電力とのLNG受入基地に関する合意を破棄
現地紙は2023年6月1日、台湾北部、基隆市の地元政府が台湾電力公司とのLNG第4受入基地に関する合意を破棄したと報じた。それによると、台湾電力は、同市の協和発電所(石油火力50万kW×4基(そのうち2基は2019年に退役済)をCCGTに転換する予定であり、そのため新たに埋め立てしLNG第4受入基地を建設する予定である。しかし、基隆市は2020年に台湾電力と合意した際の計画案と、現在の計画案では、埋め立て予定地が異なることから、台湾電力との合意を破棄した。台湾電力は、基隆市の対応を巡り司法による解決を表明している。
2023.06.01
米国:コンステレーション、サウス・テキサス発電所の一部所有権を取得へ
コンステレーション社は2023年6月1日、テキサス州にあるサウス・テキサス・プロジェクト原子力発電所(PWR、約132万kW×2基)に対するNRGエナジー社の所有権44%を取得することを発表した。取引評価額は17億5,000万ドル、税制優遇の現在価値を考慮した実質的な購入価格は14億ドルで、コンステレーション社は現金と借入金を組みあわせて資金を調達する予定。取引には原子力規制委員会(NRC)、司法省(反トラスト法の観点)などの承認が必要となり、コンステレーション社は2023年末までに取引を完了させる目標としている。同発電所は現在NRGエナジー社を含め3社で所有され、持分44%は約110万kWに相当する。コンステレーション社は同発電所について、「適切な政策支援により、少なくともあと46年間は稼働する可能性がある」としている。なお、同日に売却を発表したNRGエナジー社によると、売却はポートフォリオの最適化が目的で、売却による現金収入は主に自社株買いに充てる予定と説明している。
2023.05.31
中国:当局、安全保障上の懸念から南シナ海での浮体式原子炉建設計画を保留
2023年5月31日付の報道によると、南シナ海の離島や洋上インフラへの電力供給を目的とした浮体式原子力発電所の建設計画に対し、安全保障上の懸念から規制当局が最終承認を保留した。同プロジェクトを統括する国家エネルギー洋上原子力発電プラットフォーム技術研究センターの王東輝シニアエンジニアによると「安全性と実現可能性」が当局の最大の懸念事項で、海上の原子炉が十分に保護されずに攻撃を受ける可能性があり、環境と地政学的に深刻な結果をもたらすことを懸念しているという。王氏は、海が自然のヒートシンクとして炉心を冷やし、地震の影響を受けない浮体式原子炉は、一般的に陸上式より安全と考えており、今回の延期決定に驚いたとしている。同氏は、水中ダイバー、船舶、飛行物などから浮体式原子炉を守るには、包括的な船舶セキュリティシステムが必要であり、中国本土に近い場所にドック型の浮体式発電所を建設することを提案しているという。
2023.05.31
ベルギー:太陽光・風力発電で100%の需要をカバー
エネルギー情報誌は2023年5月31日、ベルギーで再エネによる発電量が初めて需要を上回ったと報じた。送電事業者のEliaがSNSを通じて発表した内容を伝えたもので、5月29日の午後1時~1時30分にかけて太陽光と風力発電の発電量の合計は830万kWに達し、需要を上回った。これまでの再エネの記録は、前日(28日)の日曜日に769.5万kW、前年5月11日の711.2万kWとなっていたが、5月29日は気象条件に恵まれこれらを上回った。特に太陽光発電の発電量が多く550万kWに達した。Eliaは、「このような事態は、需要家にインセンティブを与えて柔軟に対応する必要性があることを示している。ヒートポンプやEVなどを保有する需要家は、クリーンな電気が豊富にある時間帯に充電することなどで電力系統安定に寄与することができる」と話している。
2023.05.30
ドイツ:ノルトライン・ヴェストファーレン州で褐炭採掘を早期終了へ
ドイツ現地紙は2023年5月30日、同国西部ノルトライン・ヴェストファーレン州での褐炭採掘終了を現計画の2038年から2030年に8年前倒しすること、再エネ拡大など地域経済構造を転換することを目指した「第2次褐炭採掘地契約(Reviervertrag 2.0)」が州政府と地域の代表者との間で締結されたと報じた。同州のライン地域では約8,000人が褐炭採掘もしくは褐炭火力発電所に直接携わっているほか、これらの企業の下請けとして約1万5,000人の雇用が褐炭に関係している。2021年4月には地域経済構造の転換と雇用確保のための「第1次褐炭採掘地契約(Reviervertrag 1.0)」が締結されていたが、現政権が脱石炭・褐炭を現計画の2038年から2030年への前倒しを目標としていることから、今般の「第2次褐炭採掘地契約(Reviervertrag 2.0)」締結に至ったものとしている。同契約では、再エネ発電分野などで新規雇用を創出すること、褐炭採掘のために居住価値が下がった地域の価値の回復など16項目が目標として掲げられた。連邦政府と同州政府は、褐炭採掘終了計画にあたり、産業誘致、労働者への再教育などのために148億ユーロの予算を準備しており、これまでに137件のプロジェクトに対して13億7,000万ユーロの助成金が投じられている。
2023.05.29
中国:2022年のGDP単位当たりのCO2排出量、前年比0.8%の小幅減少
生態環境部は2023年5月29日、2022年生態環境公報を発表した。それによると、2022年のGDP単位当たりの排出量削減は前年比わずか0.8%の減少となった。総エネルギー消費量は標準石炭換算で54億1,000万tとなり、2021年に比べ2.9%増、そのうち、石炭消費量が4.3%の増加に対し、原油消費量は3.1%減、天然ガスは1.2%減、電力消費量は3.6%増加と試算した。総エネルギー消費量の石炭の割合は56.2%を占めたとされる。
2023.05.26
豪州:日本企業が参加する大規模グリーン水素事業が進展
エネルギー情報誌は2023年5月26日、クイーンズランド(QLD)州で計画されているグリーン水素事業が政府の支援を受けて事業開始に向かって進展したと伝えた。Central Queensland水素事業(CQ-H2)は州政府が保有する発電事業者Stanwellと日本企業(関西電力、岩谷産業、丸紅)およびシンガポール企業(Keppel)が参加するもので、事業可能性調査(FS)を終え、事業化に向かって許認可手続きや詳細の事業化調査(FEED、Front End Engineering Design)に進むことで合意したと発表された。総額1.17億豪ドル(約105億円、1豪ドルは約90円)と見込まれるFEEDの実施費用のうち連邦政府から2,000万豪ドル、州政府から1,500万豪ドルが拠出され、残る8,180万豪ドルを事業者が負担する。CQ-H2は段階的に実施に移され2028年までに最大64万kWの水電解装置を設置して日量200tの水素を製造、2031年には水素製造量を日量800tまで増量する計画である。製造した水素は液化あるいはアンモニアに転換して日本に輸出されるほか、地元(QLD州内)でアンモニアとして供給されることになる。連邦政府のChris Bowenエネルギー大臣は、「(CQ-H2のような事業は)オーストラリアのグリーン水素事業の拡大に重要で、政府として世界市場に再生可能水素を供給する市場のリーダーとなることを約束する」と話し、日本、韓国、中国と協力する方針であると説明した。
2023.05.26
韓国:分散型エネルギー活性化特別法が国会を通過
現地紙は2023年5月26日、「分散型エネルギー活性化特別法」が国会本会議を通過したと報じた。同特別法は、温暖化対応とカーボンニュートラル達成に向けた法案の一つで、小規模分散型エネルギーの電力市場への円滑参入を企図した仮想発電所(VPP)の導入などの条項が盛り込まれている。当局は今後、法施行の準備に向けて、施行令および施行規則を迅速に設ける計画である。
2023.05.26
ドイツ:EnBW、送電子会社TransnetBWの株式売却、過半数は維持
ドイツ南西部のバーデン=ヴュルテンベルク州に本拠を置くエネルギー大手EnBWは2023年5月26日、送電子会社TransnetBWの株式24.95%を売却することを発表した。売却先は同州の金融機関・保険会社などから成るSüdwestコンソーシアムで、売却額は約10億ユーロと報じられている。規制当局による競争法上の審査を経て、2023年第3四半期に売却を完了する見込みである。EnBWはまた、政策金融機関の復興金融公庫(KfW)にTransnetBWの株式24.95%のコールオプションを付与しており、KfWは近日中に権利行使すると伝えられている。EnBWは2022年2月、同社の成長戦略実現に向けた投資資金を確保する目的で、TransnetBWの株式を最大49.9%売却する方針を明らかにしていた。EnBWは2021~2025年に、120億ユーロ規模の投資(電力・ガスネットワークの整備に60億ユーロ超、再エネ・発電所の燃料転換に40億ユーロなど)を計画している。また、TransnetBWはドイツ南北を連系する超高圧直流送電線の建設を進めており、2035年までに約100億ユーロの投資が必要になるとされる。なお、EnBWは株式売却後もTransnetBWの過半数株主にとどまる。
2023.05.25
ドイツ:RWEが洋上ウインドファームの権益を取得
ドイツの電力事業者RWEは2023年5月25日、ドイツ北海の洋上ウインドファームNordseecluster(合計容量1.6GW)について、カナダの電力事業者Northland Powerが所有する49%の株式を約3,500万ユーロで取得し、この洋上ウインドファームを単独で所有することになったことを公表した。NordseeclusterはRWEとNorthland Powerが共同で開発しており、2つのフェーズに分けて建設される予定である。現在、第1期として、合計容量660MWの2つの洋上風力発電所(開発エリア名N-3.8とN-3.7)が建設許可申請の段階にあり、2025年の着工および2027年初頭の運転開始を予定している。第2期の合計容量900MWの2つの洋上風力発電所(開発エリア名N-3.6とN-3.5)については、今年ドイツ政府が実施する洋上風力発電入札への参加を予定しており、RWEが保有している海域に関するStep-in right(介入権)を行使することを表明している。これら4サイトとも主要機器の優先サプライヤーが決定しており、Vestasの15MWの洋上風力発電機が104基納入される計画である。今回の株式取得により、Nordseeclusterは、 RWEがドイツに所有する洋上ウインドファームにおいて、1GWを超える最初の大規模プロジェクトになる。Northland Powerは、今回の株式売却について、現在の環境下でNordseeclusterを評価したとき、プロジェクトの予想コストが高くなり、同社の投資基準に合致しなくなったことを理由として挙げている。
2023.05.24
米国:コンステレーション社、業界初の38%水素混合発電に成功
大手クリーンエネルギー企業のコンステレーション社は2023年5月24日、水素と天然ガスの高濃度混焼(38%)の業界初の試験に成功し、水素が温室効果ガス排出の低減に効果的な手段となり得ることを実証したと公表した。同試験は、シーメンス・エナジー社および米国電力研究所(EPRI)と共同で実施したもので、アラバマ州のHillabee天然ガス火力発電所で行われた。わずかな改良により、水素を混合した状態(濃度38%)で既存のプラントを安全に運転可能なことを確認した。同社は、今回の試験結果をもとに、今後数年間で天然ガス火力発電所をカーボンフリー技術に移行する計画を立てていくという。なお、米国環境保護庁(EPA)は2023年5月、電力部門からのCO2排出量削減を目的としたガイドライン案を公表し、排出量削減目標の達成に資する技術の一つとして水素混焼を挙げている。
2023.05.23
米国:英国Drax、米国で40億ドルのバイオマス発電+CCSを計画
英国発電事業者のDrax社は2023年5月23日、米国南部においてCCSを備えたバイオマス発電(BECCS:Bio-energy with Carbon Capture and Storage)設備を新設する計画を発表した。第一段階では2カ所を開発し、発電量は合計で年間約40億kWh、CO2の回収・貯留量は合計で年間600万tを予定している。投資額は合わせて40億ドル程度を見込んでおり、2026年に最終投資決定を行い、2030年の営業運転を目指す。立地は明らかではないが、バイオマスの供給地やCO2の輸送インフラや貯留場所に近接した地域を選ぶと説明している。この事業で同社は、発電した電力の販売やインフレ抑制法(IRA)によるタックスクレジット(85ドル/t-CO2)のほか、CO2除去(CDR)の証明書の販売による収益を見込む。同社は2022年9月、年間最大40万tのCDR証明書を英国の仲介業者Respira社に5年間販売する覚書を締結している。これまでDrax社は英国でBECCSを開発してきたが、グローバルBECCS本部を米国テキサス州ヒューストンに準備し、北米における候補地をさらに9地点評価するなど、北米での開発拡大を目論んでいる。
2023.05.23
米国:2022年に米国にて導入された再エネ電源は25.5GW
米国クリーンパワー協会(ACP)は2023年5月23日、2022年に米国が導入した再エネ電源に関わるレポートについて公表した。2022年は米国で25.5GWの再エネ電源が導入され、歴代3番目に多くの容量が導入された年となった。州ごとに2022年の導入量を見ると、上位3州はテキサス州が9.2GW、カリフォルニア州が4.7GW、オクラホマ州が1.5GWであった。一方で不明瞭な許認可スケジュールや、太陽光パネルの関税、系統接続待ちなどの問題により、2020年、2021年よりも導入量が少なくなったことにも言及している。米国では2022年末時点で約228GWの再エネ電源が稼働しており、陸上風力が63%、太陽光が33%、電池貯蔵が4%を占める。
2023.05.19
韓国:政府、韓国電力公社社長の辞職を受理
現地各紙は2023年5月19日、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が、韓国電力公社の鄭升一(チョン・スンイル)社長が12日に表明した辞職を受理したと報じた。韓国電力は、次期社長選任まで李政馥(イ・ジョンボク)副社長(経営管理担当)が社長職務を代行し、非常経営を宣言した同社の経営効率化、夏季における電力安定供給などの主要事業を遂行するために「緊急経営委員会」を設けるとともに、次期社長の選任作業も進めていくとしている。
2023.05.18
アラブ首長国連邦:Masdar、2030年に世界最大規模の再エネ事業者を目指す
アラブ首長国連邦(UAE)の再エネ大手事業者Masdarは2023年5月18日、2022年末時点の再エネ設備容量が前年比33%増となる約2,000万kWであったと発表した。これは2020年比では87%増であった。同日発表のMasdarの2022年サステイナブル・レポートによると、同社は積極的な再エネ増強に向けたグリーンファイナンスのスキーム構築、企業として健康や安全への取り組み、若者や女性の参画によるプログラム実施などが成果として挙げられている。そして、2030年には世界最大規模の再エネ事業者となる野心も明らかにしている。2022年にはウズベキスタン、アゼルバイジャン、エジプト、ヨルダン、キルギスタン、トルクメニスタン、タンザニアなどで、新たな事業の開始や新規の協力協定を締結し、中東地域初となる商業規模の廃棄物(ごみ)発電のシャルジャプロジェクトをUAE国内で稼働した。また、同社が参加する同国南部で進められているアル・ダフラ太陽光プロジェクト(200万kW)は、完成すると単一サイトとして世界最大規模の太陽光発電所となる。なお、2023年には第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)がUAEで開催されることから、国の気候変動対応への取り組みにも貢献していくとしている。
2023.05.18
英国:Octopus Energy、アジア太平洋地域への投資を加速
英国のエネルギー大手Octopus Energyは2023年5月18日、アジア太平洋地域におけるクリーンでスマートなエネルギーシステムへの移行を加速するため、2027年までに15億ポンド(約2,600億円)を同地域に投資することを発表した。具体的には太陽光・風力発電事業に12億ポンド(約2,060億円)を投資し(そのうち半分を日本に投資)、同社が東京ガスと協業する電力小売事業の拡大と技術革新に向けて3億ポンド(約520億円)を投資することを明らかにした。今回の発表を受けて駐日英国大使のJulia Longbottom氏は「Octopus Energyが日本の再エネ市場に多額の投資を行うことを歓迎する。英国企業と日本のパートナーとの協力関係の強化による経済成長、雇用創出、技術革新など、相互のメリットは計り知れない」と述べ、Octopus Energy Groupの創業者でありCEOのGreg Jackson氏は「国際協力は消費者と経済、そして気候に恩恵をもたらすエネルギー転換を実現するための鍵である。東京ガスとのパートナーシップはますます強固なものとなり、日本と英国に更なる投資をもたらすことができることを嬉しく思う」と述べた。
2023.05.17
中国:農村地域にも充電インフラ整備加速、EVの導入拡大の追い風に
国家発展改革委員会と国家能源局は2023年5月17日、農村地域における新エネ車(EV・FCVなど)の導入拡大に向けた充電インフラ整備加速実施方針を発表した。同方針では、地方の計画に合わせた充電インフラ建設を支援し、特に公共施設、高速道路、既存の住宅地区で設置可能な場所における配備を優先させるとしている。また、充電用電気料金における従量料金を2030年まで免除することなども盛り込まれている。
2023.05.17
ドイツ:連邦政府、地元の猛反対を押し切りムクラン港にFSRU導入を計画
連邦政府は2023年5月17日、ドイツ最大の島であるリューゲン島のムクラン(Mukran)港に浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU:Floating Storage and Regasification Unit)2隻を導入する計画を決定した。バルト海に浮かぶリューゲン島は高級リゾート地であり、海洋環境や観光産業への影響を懸念する地元自治体・環境団体は猛反対している。FSRU2隻のうち1隻は、ドイツ北東部ルプミン(Lubmin)で運転中の”Neptune”を移動させ使用する。同船を運用するDeutsche ReGasが、MukranにおいてもFSRU関連設備の運用者となる予定。Lubminでは”Neptune”を含めFSRU2隻の導入が計画されていたが、水深が浅く大型のLNGタンカーが着岸できないこと、港内のFSRUにLNGを輸送するシャトル船の騒音などが問題となっていた。連邦政府は2023年5月17日、MukranへのFSRU導入およびLubminとの間でのガス導管敷設を実行に移すため、「LNG迅速化法」などの改正案を閣議決定した。これに対して、環境NGOの”Deutsche Umwelthilfe”はFSRU導入を阻止するため法的措置を講じるとしている。
2023.05.15
韓国:政府、5月16日以降の電気料金引上げを決定
現地専門紙は2023年5月15日、政府・与党が電気料金引上げを決定したと報じた。それによると、政府と与党「国民の力」は5月15日に協議会を開催して、第2四半期の電気料金をkWh当たり8ウォン(約0.8円)引上げることで合意した。引上げ率は5.3%だが、報道では遡及適用は行わず、引上げ適用は5月16日からとされた模様である。韓国では国際的エネルギー価格高騰の電気料金転嫁が十分に出来ていないことから、韓国電力公社が大幅な赤字を計上していたが、政府は3月31日に2023年第2四半期の電気料金の改定先送りを決定していた。
2023.05.15
中国:政府、第3規制期間における省レベル送配電料金を発表
国家発展改革委員会は2023年5月15日、省級(レベル)送配電料金の改定版を発表した。今回発表された改定版の料金水準は、現行料金と比較して上昇・下降が地域別に混在する内容となっており、改訂版は、第3規制期間分として2023年6月1日から適用される。また発改委は今回の送配電料金改訂版の発表において、料金表のほか、需要家を家庭用・農事用・商工業用の3つに分類して、その適用にあたっては契約容量をベースに区分して、従量(kWh)料金のみとするか、2部料金(容量(kW)料金+kWh料金)とするかは需要家の選択に委ねること、アンシラリーサービス費や揚水発電の容量料金などで構成される系統運営費は送配電料金に含まれることを明示した。
2023.05.15
EU:欧州委員会が2022年の余剰排出枠とリザーブへの充当量を発表
欧州委員会は2023年5月15日、EU排出量取引制度(EU-ETS)における安定化メカニズムの下で、市場安定化リザーブ(MSR)に充当される排出枠の総量を公表した。MSRに関するEU法令に基づき、EU-ETSの下では、余剰となった排出枠(余剰排出枠)が8.33億tを超えた場合、その24%相当の市場への放出が保留され、リザーブに充当される(逆に、余剰排出枠が4億tを下回った場合には、1億tの排出枠がリザーブから放出される)。今回の欧州委員会の発表によれば、2022年の余剰排出枠が約11億3,479万tとなり、その24%に相当する約2億7,235万tがMSRへ充当されることとなる。当該EU法令に基づき、欧州委員会は毎年の余剰排出枠を、翌年5月15日までに公表することとされている。
2023.05.15
米国:NEI会長、クリーンで信頼性の高い原子力への需要の急増を強調
米原子力エネルギー協会(NEI)のマリア・コーズニック会長兼CEOは2023年5月15日、NEI主催の原子力総会(NEA2023)で、米国におけるカーボンフリーで信頼性の高い原子力への需要が急増していることを強調した。恒例の講演「原子力産業の現状」の中で、同氏は現在の状況を「一世代に一度の瞬間(a once-in-a-generation moment)」と表現した。さらに同氏は、「地域社会、電力会社、企業および政治家が、手頃な価格で信頼できるクリーンなエネルギーと高収入の雇用を求めており、これらの要求はすべて原子力につながっている」と述べ、発電容量が2050年に3億kWまで急増する可能性も示唆した。原子力業界の最大の課題はこの急増する需要に対応するために、十分な速さで原子力を展開することが可能か否かであるとし、サプライチェーン強化、合理的な規制プロセスの整備、先進型炉を建設・運転・維持するための労働力の育成などの課題を挙げ、対応の必要性を強調した。
2023.05.11
米国:EPA、新規および既存火力発電所に対する排出規制強化案発表
米国環境保護庁(EPA)は2023年5月11日、化石燃料を燃料とする発電所の新設・改修・改築によるGHG排出量について大気浄化法(CAA)111条に基づく新排出源性能基準(NSPS:New Source Performance Standards)の改定と既存の化石燃料焚き燃焼タービン(主に既存のガス火力)に対する新たなガイドラインを提案した。これらの提案はユニットの種類(新規または既存、燃焼タービンまたは蒸気タービン、石炭火力または天然ガス火力など)、運転頻度(ベースロード、ピークなど)、運転期間によって異なっている。同規制はバイデン政権が進める温室効果ガス(GHG)削減に向けた政策の一環。2021年に発足したバイデン政権の任期前半はインフラ投資・雇用法(2021年11月)やインフレ抑制法(2022年8月)の成立によって気候変政策を推進するための幅広い資金調達を実施した。任期後半は2024年の大統領選挙を見据え、CAAなど現行法の規制強化に重点を置いている。
2023.05.10
中国:自動車排気ガス新規制、7月1日から実施へ
現地大手紙は2023年5月10日、生態環境部と工業・情報化部(いずれも日本の「省」に相当)など5部門が、自動車の排気ガスに対して7月1日から新規制基準の適用を決定したと報じた。それによると、排ガス規制基準を現在の基準である「国6A」から「国6B」とするとされている。この「国6B」はEUの「ユーロ6」よりも厳しく、米国の「ティア3」が定めている2020年の平均値に相当するレベルとされている。今回の決定では、軽車両など一部を除いて基準を満たさない車両の生産、輸入、販売が禁止されることとなっているため、自動車業界では6月末までは在庫処分の値引き合戦になると予想している
2023.05.10
ポーランド:EUの「Fit For 55」適用による国民負担の増加を懸念
ポーランドのサシン副首相兼国有資産相は2023年5月10日、ポズナンで開催された経済会議にて2030年までの温室効果ガス排出削減に向けたEUの政策パッケージ「Fit for 55」の採択は、ポーランド経済にとって大きな負担となり、国民は電気や熱の価格上昇という形で多くの負担を強いられることになると批判した。EUでは2023年4月、中長期的な温室効果ガス排出削減目標の達成を目的とした「Fit for 55」パッケージに関する一連の指令と規制が採択された。2022年時点でポーランドの発電電力量の7割は石炭が占めており、専門家は「Fit for 55」の適用を進める場合、ポーランドの平均的な一般家庭(4人家族)は2030年までに追加で25万ズロチ(約750万円)を負担することになると試算している。サシン氏はエネルギー転換を否定するものではないが、エネルギー安全保障が極めて重要であるなかで、我々のペースでエネルギー転換を進める必要があるとコメントしている。
2023.05.04
米国:米国クリーンパワー協会、洋上風力に関する市場動向レポートを発表
米国クリーンパワー協会(ACP)は2023年5月4日、洋上風力に関する市場動向レポート「Offshore Wind Market Report 2023」を発表した。2023年5月時点で、全米で運転中の洋上風力の容量は約4万kW、開発・建設中の容量は約5,140万kW(容量割合:東海岸84%、西海岸16%、計32地点)である。開発・建設中の内訳は、初期開発段階(建設に至るか不明確):3,388万kW、建設前の先行開発段階(AD:Advanced development):1,656万kW、建設中:94万kWである。ADと建設中の合計容量の上位州は、ニューヨーク州(436万kW)、ニュージャージー州(376万kW)、マサチューセッツ州(324万kW)である。
2023.05.05
ドイツ:経済・気候保護省、電力多消費産業に対する支援策を提案
連邦経済・気候保護省(BMWK)は2023年5月5日、電力多消費産業の国際競争力維持に向けた支援策を提案した。2030年までの期間限定で、消費電力量の80%に対して卸電力市場の年間平均価格が6ユーロ・セント/kWhを超えた差分を補填する。支援対象の業種は化学、製鉄、金属などのほか、バッテリー、太陽光パネル、半導体といった重要産業も想定されている。支援に要する費用は総額250億~300億ユーロにのぼる見通しで、BMWKは「経済安定化基金」からの支出を計画している。同基金は国債を財源とし、2023年3月1日から2024年4月30日まで実施されている電気・ガス料金負担軽減策に要する費用を賄っている。長期的には再エネ導入と系統拡張を進め、電力多消費企業が電力売買契約(PPA)や差額決済契約(CfD)を活用することにより、電気料金を抑制できるようにする。支援案に関する合意は政権内で未だ成立しておらず、リントナー連邦財務相(自由民主党・FDP)は産業需要家を支援するための費用を経済安定化基金から支出することに反対している。なお連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、卸電力市場の価格形成シグナルを阻害するような介入は避けるべきだと批判している。
2023.05.04
ポーランド:水素製造とサプライチェーンの開発について日本と協力協定を締結
ポーランドのモスクワ気候環境相と日本の西村経済産業相は2023年5月4日、水素製造とエネルギー、運輸、暖房、産業における水素のサプライチェーンの開発における協力協定を締結した。モスクワ気候環境相は、同協定が日本企業によるポーランドおよび欧州地域での水素投資への関心を高めることを期待し、水素が欧州経済の公平な変革に重要な役割を果たし、CO2排出量の大幅な削減に寄与することを確信しているとコメントした。同相によれば、ポーランドの2022年の年間水素生産量は約130万tで世界第5位、EU全体では第3位である。また、協定の署名式では、ロシアによるウクライナ侵攻がエネルギー市場に与える影響、ウクライナの復興、脱炭素化と再エネ開発における現在の課題や、ポーランド国立原子力研究センターが日本原子力研究開発機構と共同で実施する高温ガス炉開発プロジェクトについて議論が交わされた他、ポーランド側からは、日本の炭素回収・貯留(CCS)技術の開発について関心を寄せていることについても言及された。
2023.05.03
エジプト・ロシア:エルダバ原子力発電所3号機着工
ロシア国営企業ロスアトムは2023年5月3日、エジプトのエルダバ原子力発電所3号機(VVER、120万kW)の建設着工を記念した「技術式典」を開催したと発表した。同着工は、2023年3月29日にエジプト原子力・放射線規制庁(ENRRA)による建設許可発行を受けて実施された。
2023.05.03
米国:NY州再エネ公共事業化を目指す法案成立、ピーク火力閉鎖へ
ニューヨーク(NY)州のホークル知事(民主党)は2023年5月3日、2024年度会計予算(2023年4月1日~2024年3月31日)の州議会での承認を受け、ニューヨーク州電力公社(NYPA)が再エネ電源開発を担う「公共再エネ電源開発法(Build Public Renewables Act)」の成立を進める考えを示した。同法案はNYPAが再エネ、蓄電池、送電プロジェクトを建設、運営、所有し、2030年までに再エネ電源のみを供給することを義務付けるもの。また、NYPAが保有するピーク需要対応のガスタービン発電所については、当初予定を前倒しし、2030年までに閉鎖するとしている。また、知事は州の温室効果ガス排出量の30%以上を占める建物部門に対して、新築および既存建物で化石燃料を使用する暖房機器の段階的廃止を実施する「オール電化ビルディング法(All-Electric Buildings Act)」を制定し、2025年12月末までに大規模な商業・工業用ビルを除く7階建て以下の新築ビル、2028年12月末までにその他のすべての新築ビルでゼロエミッション建設を進めることも明らかにした。なお、知事によれば、これらの法案は2019年に成立した気候変動関連法(CLCPA)で2050年までに1990年比経済全体で85%の排出削減を達成するための土台となるものである。
2023.04.29
韓国・米国:米国との間で、エネルギー分野などで多数のMOUを締結
現地紙は2023年4月29日、尹(ユン)大統領一行が訪米中に米国側とエネルギー分野などで多数の協力覚書(MOU)を締結したと報じた。韓国大統領室の崔(チェ)経済首席は4月27日、韓米間で今回、バイオ分野23件、小型モジュール炉(SMR)を含むカーボンニュートラルに向けた技術開発などエネルギー分野13件、電池などその他産業分野で13件、コンテンツ分野1件の合計50件のMOUが締結されたことを明らかにした。
2023.04.25
米国:ギャラップ世論調査、米国の原子力支持率が過去10年間で最高を記録
世論調査会社ギャラップ社は2023年4月25日、米国での原子力発電に対する支持率が2012年以降最も高い55%に達したとの調査結果を発表した。反対は44%であった。同調査は2023年3月1~23日、全米に住む成人1,009人を対象に固定・携帯電話を通じて実施。支持するとした55%のうち、「強く支持」が25%、「やや支持」は30%であった。「強く反対」と「やや反対」はそれぞれ22%ずつであった。2016年の調査では支持が44%であったことから、支持が大幅に上昇している一方、同社が過去30年間に行った調査での最高値(2010年の62%)は下回っている。また、党派別では、支持は共和党支持者62%、民主党支持者46%、無党派層56%であった。同社によると、民主党支持者で支持するとした人は増加傾向にあり、バイデン政権が気候変動に対処するためのクリーンエネルギー戦略の一環として原子力を推進していることと関連している可能性があるという。
2023.04.21
中国:欧州炭素国境調整メカニズム(CBAM)への対応を迫られる中国企業
現地エネルギー大手紙は2023年4月21日、欧州議会で18日に通過した炭素国境調整メカニズム(CBAM)に対するEU向けの中国輸出企業の懸念を伝えた。CBAMは対象となる製品をEU域外から輸入する際、域内で製造した場合に欧州排出量取引(EU-ETS)に基づき賦課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるもので、2026年10月から本格運用される予定となっている。CBAMの第1段階の対象は、セメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力、水素等があるが、EUは中国の貿易相手国・地域として2位(2022年、1位はASEAN)であるため、多くの製品が対象とされることが見込まれている。これに対して、中国の学識経験者は、対象に関連する産業チェーン全体での対応が迫られることとなるとの見方をしている。
2023.04.21
ロシア:ロスアトム、ロシア初の陸上用SMRによる発電所の設置許可を取得
ロシア国営原子力企業ロスアトムは2023年4月21日、同社傘下のロスエネルゴアトムが、連邦環境・技術・原子力管理監督局(Rostekhnadzor)から、サハ共和国(ヤクート)のウスチ・ヤンスク地区の小規模原子力発電所(ASMF)の設置許可を取得した、と発表した。同発電所は、海上用小型モジュール炉(SMR)をベースとして陸上用に適合させたRITM-200Nを採用している。同SMRは、同国の砕氷船において過酷な北極圏で試験され、最新の原子力安全要件を満たし、コンパクトにモジュール化され、建設期間が短縮されているという。「建設が許可されたウスチ・クイガ村周辺では、既に2,000t以上の資材、約80人の作業員、38台の機器などにより、準備作業が本格化しており、2028年には、RITM-200Nによる世界初の陸上ASMFの試運転が予定されている」と、ロスアトムのリハチェフ総裁は述べている。
2023.04.21
欧州:シーメンス・ガメサ、排出量を低減した風力発電機タワーを発表
風力発電機メーカーのシーメンス・ガメサ社は2023年4月21日、CO2排出量を低減した鋼材を使用する新モデルの風力発電機タワー「GreenerTower」を発表した。電気炉に洋上風力発電プロジェクトからのグリーン電力を供給することなどにより、鋼材の製造工程でのCO2排出量を削減する。従来のタワーの標準的な鋼材は、鉄1t当たり平均1.91tのCO2を排出しているが、GreenerTowerの鋼材は同社基準の同0.7tを満たすものとする。GreenerTowerは、2024年以降に設置する陸上または洋上風力発電機のオプションとして提供される。既にRWE社は、デンマークで計画しているトール(Thor)洋上風力発電プロジェクトにおいて36基導入することを決定した。なお、タワー製造におけるCO2排出量は、風力発電機に関連する全排出量の3分の1以上を占めるという。
2023.04.19
中国:AIアルゴリズムにより送電系統の主要欠陥の検出率が3倍に
現地専門メディアは2023年4月19日、国有送配電大手である国家電網公司傘下の中国電力科学研究院が、人工知能(AI)アルゴリズムにより送電系統の42種類の主要な欠陥に対しての検出率が85.7%に達し、一方で誤検出率は1.8%に減少したことを明らかにしたと報じた。加えて同報告では、ピン抜けや電線内異物など18種の一般的障害に関しては、検出率はさらに上昇して90%を超えたとしている。本研究が開始された時期である2018年のデータと比べると、検出率は3倍近く増加したが、誤検出率は80%減少した。同院では、2023年には年間でドローン(UAV)による送電鉄塔(竿)500万基(本)の飛行巡視を行って1億枚近くの画像による検証で精度をさらに上げ、人が行う保守点検・運用に代わる新しい運用保守モデルの確立を目指している。
2023.04.18
EU:欧州議会、EU-ETS改革やCBAM導入などに関する法案を承認
欧州議会は2023年4月18日、欧州排出量取引制度(EU-ETS)の改革や炭素国境調整メカニズム(CBAM)の創設など、2022年末にEU理事会と暫定的に合意していた法案を正式に承認した。今回承認された一連の法案は、2030年までの温室効果ガス排出削減に向けたEUの政策パッケージ「Fit for 55」の一環であり、EU-ETSの改革に関しては、対象部門のGHG排出量削減目標の引き上げ(2030年までに2005年比62%削減。現行目標は43%)、海運業のEU-ETSへの組み込み(2024年から)、航空業の排出枠無償割当の廃止(2026年まで)、一部の産業を対象とした無償割当の段階的な廃止(2026~2034年)、自動車燃料や建物の暖房設備の燃料を対象にしたETSⅡの新設(2027年)などが含まれている。なお、ETSⅡの収入などを原資に、エネルギー貧困層や零細企業の支援などを目的とした社会気候基金(SCF)の創設(2026年)も今回承認された。また、排出規制の緩いEU域外製品に対してEU-ETSの炭素価格に応じた支払いを輸入業者に義務付けるCBAMについては、2023年10月から3年間は移行期間として、対象事業者に対して輸入製品の炭素含有量などの報告が義務付けられ、2026年10月からは実際に炭素価格の支払いを義務付ける本格運用が開始される。一連の法案は今後EU理事会で承認された後、施行される予定である。
2023.04.18
米国:石油・ガス会社のDevon Energy社、地熱ベンチャーのFervo社に出資
テキサス州の地熱発電ベンチャーであるFervo Energy(Fervo)社は2023年4月18日、米国を拠点とする石油・ガス会社Devon Energy(Devon)社から1,000万ドルの戦略的出資を受けたことを発表した。Fervo社は、「この投資により、50年以上にわたり蓄積されたDevon社の石油・ガスの専門知識と、Fervo社の高度な地熱技術を組み合わせたパートナーシップが始まる」とした。またFervo社は、Devon社が石油・ガス生産のために開拓した技術やプロセスなどを活用して、地熱の商業生産用の水平井戸の掘削を行うとしている。Devon社は、「今回の投資はDevon社の新エネルギーベンチャー戦略に合致するものである」と説明している。
2023.04.18
米国:DOE、電気式ヒートポンプの国内製造拡大などに2.5億ドルの資金提供
米国エネルギー省(DOE)は2023年4月18日、電気式ヒートポンプの国内製造施設の新設・増強などを対象に、インフレ抑制法(IRA)に基づき2億5,000万ドルの資金提供を行うと発表した。バイデン政権は2022年6月、クリーンエネルギー関連製品の国内生産の強化や、部品調達の容易化などを目的とする施策(国防生産法の適用を含む)を発表し、今回が同施策に関する最初の資金提供となる。なおDOEは、「米国の全エネルギー消費の40%以上をビル、住宅、オフィス、学校、病院、軍事基地、その他の重要施設の冷暖房が占めている」とした。
2023.04.17
バングラデシュ・ロシア:ルプール発電所の建設融資を中国人民元で返済へ
2023年4月17日付の報道によると、バングラデシュで建設中のルプール原子力発電所(VVER、120万kW×2基)への融資に関し、同国からロシアへの1億1,000万ドル相当の返済を中国人民元で行うことが合意された。両国は、ドル主導の国際銀行決済システムSWIFTに代えて人民元主導の決済システムCIPSを通じて資金を返済する予定。ロシアによるウクライナ侵攻に対する経済制裁として、欧米はロシアの一部銀行のSWIFTへのアクセスを遮断したため、SWIFTを利用したドル返済ができなくなり、ルーブルでの返済を求めるロシアと現実的な解決策を模索していたという。ロシアは、2015年に締結した同発電所の初期契約金額である約127億ドルの90%を、金利上限4%、返済期間28年、猶予期間10年で融資しているとされる。
2023.04.15
ブラジル:ルーラ大統領の訪中、新たなエネルギー協力協定に調印
エネルギー情報サイトは2023年4月15日、ブラジル・ルーラ大統領が中国・習近平国家主席との会談で中国を訪問し、政府間および企業レベルでのいくつかのエネルギー協力協定を締結したことと報じた。同年3月末にもエネルギー関連だけで20案件が締結されており、今回の締結はそれに続くもので、両国間での投資や貿易が促進されるものと見られている。関係筋によると、中国政府は国家電網などの大手事業者を通じて電力投資を今後も継続するだけでなく、ブラジル産原油にも関心を寄せているとした。ブラジルのエネルギー専門家は、ブラジルは太陽光発電や電気自動車などで技術ノウハウを交換する機会を必要とし、ブラジルからはエタノールやバイオ燃料の技術を輸出することができるとしている。協定には、ブラジル鉱山・エネルギー省(MME)と国家電力投資集団有限公司(SPIC)の間でアマゾン地域での小規模再エネ開発の協力、北東部セアラー州とSPICとの間で洋上風力やグリーン水素の開発に関わる実現可能性調整などが含まれる。なお、ブラジル経済社会開発銀行(BNDED)と中国の国家開発銀行(CDB)は同日、石油・ガス、エネルギー分野などを対象としたプロジェクトへの資金提供を目的とした、最大13億ドル(長期8億ドル、短期5億ドル)規模の与信枠の設定を調印した。
2023.04.15
ドイツ:ドイツが脱原子力を完了
ドイツ最後の原子炉3基(ネッカーヴェストハイム2号機:140万kW、イザール2号機:148万5,000kW、エムスラント:140万6,000kW、炉型は3基ともPWR)が2023年4月15日、恒久停止した。3基を所有する原子力発電事業者のEnBW、PreussenElektraおよびRWEは、今後州政府から廃止措置許可を取得するなどし、10~15年かけて原子炉の解体作業を進める予定。なお、ネッカーヴェストハイム2号機を所有するEnBWは、2023年4月5日に廃止措置に必要な許認可をすべて取得済みである。欧州がエネルギー危機の影響から脱しきれていない中での脱原子力完遂に対して、国内外から批判の声が上がっている。国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は、原子力に反対するEU加盟国は「ウクライナ戦争が終結したら(自国のエネルギー政策について)真剣に自己批判すべきだ」と語った。
2023.04.12
中国:国家電網、デジタル人民元による取引運用を開始
現地専門紙は2023年4月12日、国有送配電大手の国家電網有限公司傘下の江蘇省電力公司がデジタル人民元取引を実施したと報じた。同社は資材のリサイクル業者から販売代金約380万デジタル人民元(e-CNY)(約7,600万円)の受け取りを専用の口座で確認し、これが国家電網初のデジタル貨幣の運用事例となった。同社は、銀行でデジタル人民元の口座を開設するだけで、手数料なしでリアルタイムでの入送金が可能となるうえ、暗号化技術活用により資金の流れの安全性も確保されると指摘、今後の取引運用の拡大を期待している。
2023.04.12
米国:Sunrun、家庭用電気料金低減に向けた蓄電池サービスを開始
住宅用太陽光発電メーカーのSunrun社は2023年4月12日、新しい蓄電池サービス「Shift」を開始した。これは2023年4月15日からカリフォルニア州のネットメータリング料金制度が改定されることに伴うものである。同改定では、需要家の電気料金が既存の季節別時間帯別から1時間ごとの変動型に変更されるとともに、電力会社による太陽光発電の買取価格が大幅に引き下げられる。Shiftは、太陽光発電による余剰電力を蓄電池に蓄え、電気料金が高くなる時間帯に自家消費する一方、買取価格が高い時間帯に電力網へ供給することにより電気料金の低減を図る。なお、今回のネットメータリング制度改定は、増加を続ける住宅用太陽光を補助する州のコストが、太陽光非設置者への電気料金により回収されている現状を正すことを目的とするものである。
2023.04.03
米国:石炭火力の発電容量、2026年までにピーク時から半減の見通し
米国エネルギー経済財政研究所(IEEFA)は2023年4月3日、石炭火力の発電容量がピーク時(2011年、約3億2,000万kW)から2026年までに半減する見通し(約1億6,000万kW)を公表した。一部の石炭火力発電所は、パンデミックによるサプライチェーンの混乱(新たな発電設備の開発遅れ)により廃止時期は延期されたものの、その他の発電所は廃止時期を前倒しした。各電力会社の発表によれば、同発電容量は2030年末までに、約1億2,000万kWに減少する見通しである。また、廃止時期を表明していない5万kW以上の大型石炭火力発電所は200基以下であり、そのうち118基は運転開始から40年以上経過している。電力会社の統合資源計画(IRP)や投資計画などによれば、ほとんどの計画において、石炭火力を大幅に削減、あるいは完全に廃止し、風力、太陽光、蓄電池を大幅に増強し、既存のガス火力発電所に依存する計画となっている。
2023.04.06
ポーランド:グダニスク湾のFSRU計画、近隣諸国からの需要が高まる
ポーランド国営のガス導管事業者Gaz-system社は2023年4月6日、グダニスクで計画されている浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)の建設について市場調査を行った結果、年間61億m3の想定輸出量に加えて、年間45億m3の追加需要が明らかになったと発表した。同社は2023年3月6~20日にかけて実施した市場調査の結果、近隣諸国のスロバキア、チェコ、ウクライナなどから長期容量確保に関心が寄せられたことを明らかにしている。報道では、政府関係者の話として、FSRUは2027~2028年に操業を開始する予定だが前倒しになる可能性もあるとしている。Gaz-systemのChludzinski社長は、ロシアからの天然ガス供給停止により、LNGに対する需要が高まっているとし、東欧地域のエネルギー安全保障を重要視したガス供給源の多様化は最優先事項だとコメントした。なお、ポーランドのLNG輸入量は2022年に過去最高を記録し、2021年比57%増の440万tとなった(シフィノノウイシチェLNG基地の稼働率は94%)。
2023.04.06
フランス:議会の調査委員会がエネルギー主権回復について報告
下院国民議会の経済委員会内に設置されている「フランスがエネルギー主権・独立性を失った理由を調べる調査委員会(2022年10月設置)」が2023年4月6日、最終報告書を公表した。報告書は6つのエネルギー政策の過ち、そこからの6つの学び、そして今後の推進するべき6つの分野と30の提案で構成されている。政策の過ちでは、温暖化対策を考慮せず電力需要見通しを過小評価したこと、再エネと原子力を無理にバランスさせたこと、原子力発電所の寿命延長・新設を計画的に進めなかったこと、化石燃料に代わる再エネ産業の育成を怠ったこと、欧州電力市場の仕組みに適合させるあまりフランスのエネルギー供給体制の脆弱化を招いたこと、高速増殖炉計画と第4世代炉開発を放棄し研究開発での優位性を維持しなかったことを挙げている。また学びでは、温暖化対策・産業政策・エネルギー政策を長期的に調和させることの重要性、電力はコモディティーとしては扱えないこと、省エネ推進の必要性などを挙げている。そして今後推進するべき分野として、今後30年の環境・産業政策を含めたエネルギー計画の策定、欧州エネルギー市場の改善、省エネ・効率改善を含めたエネルギーミックの脱炭素化、独立したサプライチェーンを再構築してエネルギー主権を取り戻すこと、原子力分野の立て直し、再エネ導入政策の再構築などをあげ、今後30年に向けた具体的な30項目の提案を挙げている。
2023.04.06
米国:2,000GWを超える発電・蓄電設備が系統接続待ち
ローレンス・バークレー国立研究所は2023年4月6日、2022年の米国における発電・蓄電設備の送電網への接続待ちが2,000GW以上であったと発表した。接続待ちは米国の中でもCAISOを含む西部地域、MISO、ERCOTの管内で急増しており、CAISOとPJMでは新規申請の受付を停止している。接続待ちの設備容量の95%を太陽光(947GW)、風力(300GW)、蓄電池(670GW)が占めた。発電設備には蓄電池を組み合わせたハイブリッド発電が含まれ、太陽光発電の48%(456GW)、風力発電の8%(24GW)がハイブリッド発電となっている。同研究所は過去の統計から接続待ちのプロジェクトの21%(容量で14%)が運開すると予想している。
2023.04.05
英国:Centrica、Redditch地点に水素燃焼火力を建設へ
英国エネルギー大手Centricaは2023年4月5日、グループ会社であるCentrica Business Solutionsが、同国ウスターシャー州の旧Redditch火力発電所の跡地に、設備容量2万kWの水素燃焼火力を建設すると発表した。同発電所は天然ガスと水素を燃料とし、需要ピーク時や再エネ発電量が少ない時に稼働するように設計される。8個のコンテナ型エンジン発電機が設置される計画であり、同年中に建設が完了する見込み。同社は、2022年10月にも、Brigg火力発電所(設備容量4.9万kW)にて水素混焼を開始すると発表している。
2023.04.04
中国:国内初、フライホイール併用の蓄電施設が稼働開始
現地大手紙は2023年4月4日、大手電力である華電国際電力公司によるフライホイールユニット併設のリチウム電池蓄電施設が稼働を開始したと報じた。山西省朔州市の同社コージェネレーション施設内に建設されたこの設備はフライホイールユニット4基(500kW×4)とリチウム電池設備で構成されており、商業運転を開始した同種の施設は国内初であるため注目を集めている。同社はフライホイールユニットを併用することでリチウム電池単体の場合と比べ、耐久性が大幅に改善されるためコスト削減が期待できるとしている。
2023.04.03
インド:政府、国営水力3社の経営統合を検討
2023年4月3日付の報道によると、電力省は国営水力発電事業者3社の統合を検討している。具体的には、国営発電公社(NTPC)の水力子会社のTHDC IndiaとNEEPCOの2社を、国営水力発電会社(NHPC)に統合し、コスト削減と経営効率化を目指す。統合後のNHPCの発電設備容量は約2,000万kWになるとみられる。
2023.04.03
米国:ペンシルベニア州最大の石炭火力発電所の廃止を発表
米国北東部ペンシルベニア州の西部で石炭火力発電所を運営するHomer City Generation社は2023年4月3日、同州最大のHomer City石炭火力発電所(191万5,000kW)を今後3カ月の間に廃止すると発表した。その理由について同社は、競合する天然ガス火力発電の燃料価格の低下や、石炭供給コストの高騰、環境規制の強化などを挙げた。また事業を継続する投資判断にあたり、地域温室効果ガスイニシアティブ(RGGI)の先行きが不透明であることも要因の一つに挙げている。RGGIは、米国北東部12州が加盟している電力セクターを対象としたCO2排出量取引制度。ペンシルベニア州は2022年7月にRGGIに加盟したが、反対する同州共和党議員や一部企業からの訴えを受け、同州控訴裁判所がオークションへの参加などの活動を一時的に禁止する命令を出している。
2023.04.01
ベトナム:ベトナム初となるグリーン水素工場が着工
2023年4月1日付報道によると、The Green Solutions GroupのメンバーであるTGS Tra Vinh Green Hydrogen Companyは、総額8兆ドン(約456億円)を投資し、ベトナムで初となるグリーン水素工場の建設を開始した。水素工場は、2年後に操業を開始する予定で、21ヘクタールの敷地に年間2万4,000tのグリーン水素と19万5,000tの酸素を生産する計画である。また、300~500人の地元住民を雇用する。ベトナム政府は、2050年までのカーボンニュートラルを宣言しており、石炭火力からクリーンエネルギーへの移行に取り組んでいる。

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