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各国の電気事業(主要12か国)

インド

2018年4月時点




 目 次


      1. エネルギー政策動向
世界有数のエネルギー消費大国:エネルギー輸入は年々増加
2. 地球温暖化防止政策動向
温室効果ガス削減目標:2030年GHG削減目標は2005年比、対GDPで33~35%減
3. 再生可能エネルギー導入政策・動向
2022年までに再エネ1億7,500万kW
4. 原子力開発動向
2027年までに原子力1,688万kW
5. 電源開発状況
再エネが大幅に拡大、石炭火力も新設へ
6. 電気事業体制
電気事業の中心は州営:発電では国有企業も
系統運用
電力不足が改善
7. 電力自由化動向
今後は小売競争の導入を検討
電気料金は安い政策料金
8. 電力供給体制図



1. エネルギー政策動向

世界有数のエネルギー消費大国:エネルギー輸入は年々増加
 インドは世界有数のエネルギーの消費大国である。2015年の一次エネルギー消費は中国、米国に次いで世界第3位であり、今後も一層のエネルギー消費の増加が見込まれる。

 国産のエネルギー資源は石炭、バイオエネルギー、天然ガス、水力などが存在するが、国内需要を賄うには不十分であるため、輸入が増加している(2015年のエネルギー自給率65%)。2015年のインドの一次エネルギー供給構成は、石炭45%、石油29%、バイオ燃料・廃棄物23%、天然ガス5%、水力1%、原子力1%となっている。

  一次エネルギーについて、政府は、石油、天然ガス、石炭などの国内資源の活用により、輸入依存度の低減を目指している。発電では、再生可能エネルギー(再エネ)開発を推進している。

2. 地球温暖化防止政策動向

温室効果ガス削減目標:2030年GHG削減目標は2005年比、対GDPで33~35%減
 インドの2015年のCO2排出量は20.7億トンで、世界第3位(6%)である。国際エネルギー機関は、「世界エネルギー見通し」(2017年版)の中で、2040年の排出量は新政策シナリオで48億トン、持続可能な開発シナリオで26億トンまで増加すると予想している。一方、一人当たりの排出量では1.6トン(2015年)と、世界平均の半分以下の水準に留まる。インド政府は2015年10月、同年12月にパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締結国会議(COP21)に先駆けて、温室効果ガス削減目標として、2030年までに、2005年比で国内総生産(GDP)1単位当たり33~35%削減するという目標を発表している。

 インドではCO2排出抑制の取り組みとして、産業界を対象に、2012年から省エネ証書取引制度(PAT)を実施している。同制度の対象となる事業者(火力発電所も含む)には、エネルギー消費量を削減する義務が課されており、達成できなかった場合には罰則が科される。

  また、急速な経済成長によって、大気汚染も深刻化している。デリーのPM2.5の濃度は、世界保健機関(WHO)の基準値(年平均10マイクログラム/m3)を15倍も上回るとされる。インドではこれまで、火力発電所に対する汚染物質の排出基準は定められていなかったが、2015年12月の法改正により、石炭火力発電所からのPMの排出規制が強化され、新たにSO2、NOX、水銀も規制されることになった。

3. 再生可能エネルギー導入政策・動向

2022年までに再エネ1億7,500万kW
 インド政府は2014年、2022年までの再生可能エネルギーの導入目標を1億7,500万kWに引き上げた。内訳は太陽光1億kW、風力6,000万kW、バイオマス1,000万kW、小水力500万kWである。太陽光については、大規模太陽光発電所(ソーラーパーク等)が6,000万kW、屋上設置型太陽光(ルーフトップ)が4,000万kWである。

 ソーラーパークの建設を担う発電会社は、競争入札により決定している。活発な競争と輸入パネルの価格低下によって、太陽光の売電価格は下がってきており、2017年5月には1kWh当たり2.44ルピー(約4円)を記録した。風力発電所の建設でも、2017年度から競争入札が取り入れられている。

 この他、2009年から固定価格買取制度(FIT)、また2010年から配電会社などにその販売電力量の一定割合を再エネ電源から調達することを義務付ける「再エネ電源調達義務制度」(RPO)が、一部の州で始まっている。政府は、2016年1月に改定した「電気料金政策」(電気事業制度改革の方針を示した政策文書)の中で、2022年までにRPO制度を全ての州で実施するという方針を示している。

4. 原子力開発動向

2027年までに原子力1,688万kW
 2018年4月現在、原子力発電は7つのサイトにおいて、BWR 2基(計32万kW)およびPHWR18基(446万kW)、VVER1000(PWR)2基(200万kW)の合計22基678万kWが運転されている。これらの原子力発電所は、水力、石炭火力などの代替電源が手当しにくい地域(西部、南部、北部)に優先的に立地し、地元の州電力会社に供給されている。

 インドは原子力開発に早い時期から取り組んで来た。しかし、現在の原子力発電比率は総発電電力量の約3%である。これはインドが核拡散防止条約(NPT)に加盟しなかったため、これまで外国から原子燃料などの供給を受けることができなかったことが影響している。

 2008年に、「原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン」が修正され、インドに対する原子力関連品目の供給が認められたことから、インド政府は、軽水炉とウラン燃料を海外から輸入し、原子力発電を拡大する方針に転換した。2008年10月には米国とインドとの間で原子力協定が締結されたのを皮切りに、フランス、ロシア、カザフスタン、イギリス、カナダ、オーストラリアなどの国々とも相次いで協定が締結された。日本政府との関係では、2017 年7月に、日印原子力協定が発効している。

  中央電力庁(CEA)が2018年に公表した「国家電力計画」によると、2021年度末までに、原子力発電所の設備容量は1,008万kWに増加する。また、2026年度末には1,688万kWに達する見通しが示されている。

5. 電源開発状況

再エネが大幅に拡大、石炭火力も新設へ
 インドの電源は石炭火力を中心に開発が進められてきた。2018年3月末現在の総発電設備容量は3億4,400万kWで、石炭が57%を占め、他は再エネ20%、水力13%、ガス火力7%、原子力2%であった。

  中央電力庁(CEA)の国家電力計画によると、電力需要の年平均伸び率を6.1%とする場合の2021年度の電力需要を1兆5,660億kWh、最大電力を2億2,575万kWと想定している。2017-2021年度中に1億7,614万kWを新設する計画があり、内訳は、再エネが1億1,776万kWと大きな比重を占める。 石炭火力は、環境規制を遵守できない老朽設備の廃止が進むことから、4785.5万kWが新設されることになっている。

6. 電気事業体制

電気事業の中心は州営:発電では国有企業も
 広大な国土を持つインドの電気事業は、基本的に都市や州単位で供給体制が構築されてきた。デリー、ムンバイ、コルカタなどのインドの主要都市は歴史的に財閥を中心に発展してきたため、独立以前から財閥系の電力会社が電気を供給してきた。1950年の独立後は、これらの都市部以外の地域もカバーするため、州営の電力会社として垂直統合型の州電力局(SEB)が設立され、州全体の電力供給を担ってきた。

 1970年代には、電源不足を解消する目的で、中央政府によって電力会社(火力公社、水力公社、原子力公社)が設立され、発電所が建設された。これに併せて、電源が不足する州に電気を送るため、州を跨ぐ送電線の建設や運用を行う送電会社(PGCIL)も設立され、電力供給において重要な役割を担ってきた。1990年代以降の電力改革によって、発電部門へのIPPの参入、州営電気事業の分割などが実施されている。

 エネルギー政策を管轄する監督官庁は、部門ごとに電力省、新・再生可能エネルギー省(Ministry of New and Renewable Energy)、石炭省、石油省に分かれている。電力部門の監督官庁は電力省であり、「2003年電気法」の下、全国大の電気事業に関する政策立案を担当している。電力省の下部組織の中央電力庁(CEA)は長期需給想定などを担当している。原子力分野は、同じく電力省の下部組織の原子力庁が担当している。それぞれの州の電気事業に関する事項については州政府が管轄し、州の規制機関が事業認可や料金規制を担当している。
系統運用
 インドでは、基本的に州をまたぐ送電線は国営送電会社(PGCIL)が所有し、州内の送電および配電設備は州電力会社が所有している。インドの主要系統は、5つの地域系統(北部、西部、東部、北東部、南部)に分かれている。5つの地域系統は、かつては異なる周波数で運用されていたが、1990年代より地域間連系を進めてきた。2013年12月31日より南部系統と残り4地域で構成される中央系統が同期連系し、1国1系統1周波数のナショナルグリッドが形成された。

 系統運用は、3階層になっており、中央給電指令所の下に5つの地域給電指令所、その下に33カ所の州給電指令所が組織されている。系統運用事業者は、PGCILから分離して設立された「電力系統運用会社(POSOCO:Power System Operation Corporation Ltd.)」が中央給電指令所と地域給電指令所を管轄し、州給電指令所は各州の事業者が運用している。なお、POSOCOの役割は中央給電指令所の運用(地域系統間の調整)が主であり、各地域給電指令所の運用はそれぞれの地域給電指令所で行われている。
電力不足が改善
 2014年度(2014年4月~2015年3月)の電気事業者による発電電力量は1兆1,168億kWhであった。内訳は、石炭75%、水力12%、再エネ7%、原子力3%である。

 インドでは長らく電力不足による停電が頻発していたため、商業・産業用需要家は発電機を備えて対策を取っており、自家発による発電は総発電電力量の1割以上を占めている。また、隣国のブータンからもデリー向けに電力輸入している。

 消費電力量の部門別内訳は、2014年度で、産業用44%、家庭用23%、農業(灌漑ポンプ)用18%、商業用8%となり、GDPの2割を占める農業用の比率が大きいのが特徴である。また、総合損失率(AT&Cロス:料金未回収分等も含む配電ロス)は全国平均で23%である。これは、技術的損失に加え、盗電の影響が大きく、配電会社の財務状況を悪化させる原因となっている。インド政府は、特に都市部での配電ロスを低下させるため、2015年以降、「総合電力開発計画(IPDS:Integrated Power Development Scheme)」というプログラムを実施している(予算規模6,542.4億ルピー、約1兆円)。IPDSは、主に都市部の配電部門の設備投資を進めるもので、メーターの不正改竄を防止するためスマートメータへの切り替えや、配電システムのIT化、盗電を防ぐため人口密集地域における配電線の地中化などが行われている。

 電力不足は近年改善傾向にある。2017年度の電力不足率は全国平均で2%程度である。一部の州の電力不足率の高さが平均値を引き上げているが、多くの州では年間を通じて供給力に余裕がある状態であった。

 政府は、2015年に策定した「地方電化プログラム(DDUGJY)」により、7,589.3億ルピー(約1.2兆円)を投じて、未電化村でのメーターや変圧器等の設備の設置を進め、地方電化を行ってきた。これにより村落電化率は2018年4月末に100%に達し、世帯電化率についても2018年12月末までに100%を達成する見込みである。

7. 電力自由化動向

今後は小売競争の導入を検討
 1991年のラオ政権発足後、インドは経済自由化路線に舵を切り、公的セクターが独占していた産業への民間参入や外資規制の緩和などの経済改革が行われた。この経済改革を機に、インドの電力部門でも電力自由化が始まった。

 1990年代初めに行われた電力改革では、政府は、経済の急成長に伴う電力不足の問題に対応するため、IPPの導入といった発電部門中心の規制緩和策を積極的に採用した。しかし、許認可手続きの煩雑さや、電力の販売先となる州電力局(SEB)の財務状況の悪さから、民間投資は思うように進まず、電源開発は期待通りに行われなかった。

 この反省を踏まえ、1990年代後半から2000年代にかけての一連の電気事業改革では、配電部門の効率化や電気料金体系の整備に主眼が置かれるようになった。2003年には電力改革の基盤となる電気法が改正され、州電力局の分割や電気料金の合理化、水力発電以外の認可制の廃止、送配電系統へのオープンアクセス等が定められた。

 さらに2005年には「国家電力政策」、2006年には「電気料金政策」が公表され、この中で制度改革の具体的な方針が示された。

 インドでは、このような中央政府が提示した電力改革の枠組みについて、実行に移す権限は、州法を制定する州政府にある。そのため、発送電分離の形態などの供給体制は州によって異なる。積極的に発送電分離・民営化を実施した州もあれば、実質的に一体経営のままとなっている州など様々である。デリーなど農村人口比率が小さい都市部の配電会社では、民営化によって財務状況の改善が見られ、一定の評価を受けている。

 2018年4月現在、「2003年電気法」の改正が検討されている。改正法案が成立すれば、配電部門と小売部門が分離され、小売部門で競争(小売自由化)が導入されることになる。
電気料金は安い政策料金
 インドでは、農業用料金が政策的に安く抑えられているため、配電会社はコストの8割しか回収できていない。不足分の一部は州政府からの補助金が充てられるが、配電会社の累積赤字が年を追うごとに膨らんでいる。近年は、中央政府による料金政策が徐々に浸透し、各州で電気料金改定に踏み出す動きが見られる。政府は2015年11月、配電会社の債務解消策「UDAY」を発表し、2015年から2年間かけて、配電会社の負債を証券化して売却する措置が講じられた。

8. 電力供給体制図




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