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各国の電気事業(主要12か国)

ドイツ

2018年3月時点




 目 次


      1. エネルギー政策動向
90年代以降、エネルギー消費はほぼ横這い
再生可能エネルギーが発電シェアを拡大
脱原子力へ
再エネの開発推進
2. 地球温暖化防止政策動向
2020年の温室効果ガス削減目標は未達の見通し
3. 再生可能エネルギー導入政策・動向
風力、太陽光を大量導入
需要家負担急増で制度手直しに着手
4. 原子力開発動向
福島事故で脱原子力に回帰
5. 電源開発状況
脱原子力、大量の再エネ導入で火力電源確保が不可欠に
6. 電気事業体制
電力自由化で電気事業再編:発電と送電は所有分離に
系統運用:4送電会社が各エリアを制御
7. 電力自由化動向
全面自由化で発電での大手シェアは低下
小売価格は上昇
8. 電力供給体制図


1. エネルギー政策動向

90年代以降、エネルギー消費はほぼ横這い
 ドイツは第二次大戦後の冷戦によって東西に分断されていたが、1990年に社会主義国家東ドイツの崩壊によって再統一された。統一後は旧東ドイツ地域の経済が落ち込み、非効率な火力発電設備の更新や閉鎖が行われた。そのため、ドイツのエネルギー消費量は、1990年代以降、漸減あるいは横這い状態が続いている。2017年の一次エネルギー消費量は前年比0.9%増加の13,550PJ(ペタジュール)となる見通しである。増加の要因は年率2.2%の高い経済成長率、製造業における生産量の向上、人口増加等とされている。
再生可能エネルギーが発電シェアを拡大
 供給面では、ドイツはもともと褐炭と石炭を豊富に産出する国で、これらの資源は歴史的にドイツ工業の発展に大きく寄与してきた。1960年代以降、石炭は安い輸入石油に押されて主役の座を追われたが、政府は1973年の石油危機を契機に石炭への再転換策を打ち出し、石炭産業を保護してきた。1996年までは電力会社に国内炭の引き取り義務が課され、制度廃止以降も補助金の形で保護策が継続されてきた。しかし、この補助金は2018年末に廃止予定であり、これにともなってドイツ国内最後の石炭鉱も閉鎖される。

 総発電電力量に占める石炭・褐炭の割合は37%(2017年末時点、速報値)と未だに高いが、再エネに追い抜かれるのも時間の問題とみられている。2017年の総発電電力量に占める再エネの割合は、前年比4ポイント増加の33%(同)となった。
脱原子力へ
 石油危機を契機に注目されたもう一つのエネルギーが原子力である。1975年にドイツ初の原子力発電所が商業運転を開始したのを皮切りに、原子力の開発を進め、17基の原子力発電所(計2,049万kW)が建設された。

 その後、1986年のチェルノブイリ事故を契機に原子力発電への反対運動が活発化した。1998年に成立した社会民主党(SPD)と緑の党による連立政権は脱原子力政策を打ち出し、2002年には原子力法が改正され、原子力発電所は32年間の運転後順次、閉鎖されることになった。

 2009年に成立した原子力推進派キリスト教民主社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)によるメルケル政権は、2010年10月、脱原子力政策を一部見直す原子力法の改正を実施し、32年とされていた原子力発電所の運転期間を平均12年延長した。

 しかし、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故を受け、メルケル政権は脱原子力に転じた。2011年7月には、最も古い7基(故障で停止中を含めると8基)を閉鎖するとともに、運転中の9基も2022 年までに段階的に閉鎖することを決めた。
再エネの開発推進
 原子力に代わって、政府が開発を推進してきたのが再生可能エネルギー(再エネ)である。特に電源として、政府は再エネとコージェネレーション(電気と熱を同時に生産)の開発に熱心で、政府は1991年の「電力買取法」、2000年の「再エネ開発促進法」(EEG)により、「固定価格買取制度」(FIT)を導入し、電力会社に対してこれらの電源からの発電電力を高い価格で買い取ることを義務付けた。

 このような奨励策が奏功し、ドイツでの再エネ、特に風力、太陽光発電の開発は目覚しく、2016年には陸上風力、太陽光ともに4,000万kWを超え世界的規模を誇るまでになっている。

2. 地球温暖化防止政策動向

2020年の温室効果ガス削減目標は未達の見通し
 ドイツは1990年の東西ドイツ統一後、旧東ドイツ地域での老朽工業設備や火力電源の閉鎖、再エネ大量導入により、温室効果ガス(GHG)排出の削減を進めてきた。2008年から2012年にかけてのGHG排出量削減の年平均値は24.2%となり、京都議定書の削減目標(同21%)を達成した。

 さらに政府は2020年までに1990年比で40%削減するという目標を設定した。これはEU大での達成目標20%を大幅に上回る野心的なものである。

 しかし、旧東ドイツ地域の発電設備や工業設備の整理が一息ついたため、削減ペースは鈍化傾向を見せている。GHG排出量の8割以上を占めるCO2の削減量は、1990年から1995年の間には1億1,110万トンであったが、1995~2000年の間には3,940万トン、2000~2005年の間には2,700万トン、2005~2010年の間が3,750万トンとなっており、次第に削減が難しくなってきている。2017年のGHG排出量は9億470万トンであり、1990年比の削減率は27.7%となった。部門別でみると、エネルギー部門では再エネ発電の増加、石炭火力発電の減少等により前年比4.1%減となっている。しかし、好景気を背景として輸送部門、工業部門ではそれぞれ前年比2.3%、2.5%増加したため、全体としては前年比0.5%の減少にとどまった。現状では2020年時点でのGHG削減率は1990年比で35~38%にとどまり、政府目標の40%には届かない見込みである。目標未達分を早期に削減するため、2018年3月に発足した新政権(第4次メルケル政権)は再エネ導入を加速させる方針を明らかにしている。また、GHG排出削減のための包括的な施策を盛り込んだ行動計画を2018年末までに発表する予定である。同計画では2030年目標(GHGを1990年比で55%削減)を達成するための施策や、褐炭・石炭火力の全廃時期、発電所の具体的な閉鎖計画等が明示される。

3. 再生可能エネルギー導入政策・動向

風力、太陽光を大量導入
 政府は再エネ開発推進のため、1991年に「電力買取法」、さらに2000年には「再エネ開発促進法」(EEG)を制定した。EEGにより「固定価格買取制度」(FIT)が導入され、電力会社に対して再エネ電源からの発電電力を高い価格で買い取ることが義務付けられた。

 その結果、特に陸上風力開発の進展は目覚しく、設備容量は1990~2016年の間に約800倍に増大し、2016年末には4,541万kWの規模に達している。

 政府は今後、風力発電設備のリパワリング、および洋上風力の導入を中心にさらに開発を進め、陸上風力は年間250万kW、洋上風力は2020年までに650万kWを導入する計画である。

 また、太陽光の導入も急速に進展してきた。住宅に太陽光発電パネルを設置するケースに加え、大規模なソーラー発電所(メガソーラー)の建設も進められており、2016年末には4,087万kWに達している。しかしながら、買取価格の引き下げにより太陽光の新規設備導入量は年々減少しており、2014~2016年にかけては年間導入目標の250万kWを下回っている。
需要家負担急増で制度手直しに着手
 再エネ大量導入は、消費者の費用負担を急増させている。2018年には一般家庭の再エネ電源導入費用の負担額は月額20ユーロ(約2,600円)を超え、電気料金支払額の約23%を占める見通しである。FITが導入された2000年当初と比較すると再エネ電源導入費用の負担は約34倍になっており、ドイツ政府も取り組むべき重要課題のひとつとして再エネ補助による需要家負担の抑制を挙げていた。

 ドイツ政府は従来の再エネ補助制度を見直し、2015年から大型の太陽光発電設備(100kW~1万kW)を皮切りに、競争入札制度を導入した。同制度においては、再エネ発電事業者が補助金の単価を算定するための基準値を入札する。入札価格が低い事業者から落札され、募集容量に達したところで終了となる。従来の再エネ補助制度では、申請すれば誰でも補助を受けることができたが、競争入札では落札されなければ補助の対象とならない。このため、事業者間で競争圧力が働き、補助の水準が下がることが期待されている。実際、2015年4月に実施された太陽光の第1回入札では、平均落札価格が9.17ユーロ・セント/kWhであったが、2018年2月の入札(750kW超の太陽光設備が対象)では4.33ユーロ・セント/kWhまで低下した。
基準値から前月の月間平均卸電力価格を引いた価格が補助額となる。発電事業者は卸電力市場で再エネ電力を売り、その売電収入に加えて補助金を受け取る。

 入札制度の対象は、2017年には750kW超のすべての再エネ電源に拡大されている(バイオマスについては150kW超~)。

4. 原子力開発動向

福島事故で脱原子力に回帰
 ドイツでは石油危機を契機に原子力開発が進められてきた。しかし、1986年のチェルノブイリ事故後、反対運動が活発化し、社会民主党(SPD)は原子力反対に転じた。

 1998年にはシュレーダー首相率いるSPDと緑の党による連立政権が成立し、脱原子力政策を打ち出した。同政権は2000年に原子力発電所を段階的に閉鎖することで電力会社と合意したのに続き、2002年には原子力法を改正し、32年間運転するものとして割り当てられた発電量が上限に達した発電所から順次、閉鎖されることになった。

 2005年には、これまで野党であったキリスト教民主社会同盟(CDU・CSU)と社民党との大連立のメルケル政権が誕生したが、政権内の勢力が拮抗していたため、脱原子力政策に大きな変更は加えられなかった。

 続く2009年10月には第二次メルケル政権が誕生し、CDU・CSUは社民党との連立を解消して自民党(FDP)と新たな連立政権を樹立した。同政権はこのまま脱原子力政策を進めた場合、早ければ2012年にも電力供給力不足になるとの需給想定を踏まえて、脱原子力政策の見直しに踏み切った。2010年10月には、脱原子力見直し政策を反映した原子力法の改正など一連の法案が連邦下院で採択され、32年とされていた原子力発電所の運転期間は平均で12年延長されることになった。

 しかし、2011年3月に発生した福島第一原子力発電所の事故を受けて、メルケル政権は脱原子力に回帰した。政府は直ちに最も古い原子炉7基と故障で停止中の1基を3か月間停止するよう指示したのに続いて、同年7月には一時停止中の8基の再稼働を禁止するとともに、運転中の9基も2022 年までに段階的に閉鎖することを決めた。

 一時停止指示については、これらの原子力発電所を所有・運転する電力会社が、法的根拠の妥当性について政府を提訴し、2014年には行政裁判所が指示の違法性を認める判決を下した。また、再稼働の禁止および2022年までの脱原子力についても、電力会社は財産権の侵害に当たるとして、その補償を求めて連邦憲法裁判所に提訴していた。電力会社は、2010年に認められた運転期間の延長が福島事故後取り消されたのも違憲として、平均12年の延長分も含めた総額190億ユーロを補償すべきと主張した。しかし、連邦憲法裁判所は運転期間延長の取り消しについては合憲とし、2002年に定められた残存発電電力量を確保できなくなった発電所のみ、補償の対象とした。2002年に定められた残存発電電力量から割出される閉鎖時期と、福島事故後定められた閉鎖時期には大きな違いがなかったため、補償は電力会社の要求を大きく下回る額となった。

5. 電源開発状況

脱原子力、大量の再エネ導入で火力電源確保が不可欠に
 ドイツは従来、豊富な石炭、褐炭を利用した火力電源の開発を行ってきた。また、石油危機以降は原子力発電の開発も進めてきた。しかし、2002年以降脱原子力政策および再エネ電源の開発が進められている。

 特に2011年3月以降の脱原子力回帰後は原子炉閉鎖分をカバーするために、短期的には建設中の火力電源(約1,000万kW)を2013年までに完成させることを目指す一方、中・長期的には火力の新規建設、再エネ電源の開発を進めてきた。しかし、これらの計画はすでに一部見直しを迫られている。原子力発電の代替電源として期待されていた火力発電所の建設の進捗状況は思わしくなく、一部はその完成が遅れている。

 加えて、既存の火力発電所も再エネの大量導入により運転時間が減少し、採算がとれず閉鎖に追い込まれるケースもみられるようになっており、冬季の需要ピーク時に十分な供給力を確保することが難しくなっている。そのため、現在休止中の火力発電所が必要に応じて稼働できるよう、必要と指定された発電所に対して、運転費用に加えて維持管理費用や再稼働のための修繕費用も補助金として支出することを定めた省令が2013年6月に制定された。

 上記の制度はドイツ国内の系統が整備されるまでの時限的措置とされたが、送電線建設が進んでいないため2018年現在も継続している。ドイツ政府はこの他にも、緊急時のみに稼働するリザーブ電源を競争入札により調達する制度等を整備し、必要な供給力の確保に努めている。

6. 電気事業体制

電力自由化で電気事業再編:発電と送電は所有分離に
 ドイツでは電力自由化を契機に電気事業体制が大きく変わった。かつてドイツには電気事業の中心的役割を担う8大電力会社が存在し、国内総発電電力量の約90%を独占的に供給してきた。また、この8社とは別に地方公営の小規模な配電会社等、約1,000社の電力会社が存在した。

 この8社による独占体制は、自由化によって電力会社間で激しい競争が行われるようになり崩れた。また、競争が激化するに従い、競争力を維持していくため、電力会社同士の合併や提携が盛んに行われた。8大電力会社は、E.ON、 RWE、EnBW、およびVattenfall (スウェーデン・ヴァッテンファル社の子会社)の4グループに収斂された。また、これらの企業は事業規模を拡大するために、海外の電力会社や国内の地方公営配電会社の買収を進めた。さらに、これらの企業はガス事業にも進出し、E.ON、RWEは欧州を代表する大手総合エネルギー会社となった。

 これらの大手企業は、従来、発電、送電、配電、小売のすべての電気事業分野を手掛ける垂直統合型企業であったが、EU法や国内法では送電部門、配電部門を子会社化する法的分離を求められるに留まっていた。しかし、欧州委員会からの圧力や債務削減などのため、現在はほとんどの企業が送電子会社を売却している。2010年にはE.ONが送電設備をオランダの送電会社TenneTへ、Vattenfallがベルギーの送電会社Eliaへそれぞれ売却した。RWEは2011年9月に送電子会社の7割の株式をコメルツ銀行グループのコメルツリアル社へ売却し、EnBWのみが送電子会社を保有し続けている。

 なお、E.ONは2014年11月、将来的に事業を二分割する再編計画を発表した。同再編計画により、E.ONは2016年1月1日に新会社Uniperを設立、国内の原子力を除く従来型発電、国際エネルギー取引、資源採掘の3事業を移管した。E.ON本体は今後、再エネ、配電、顧客サービス(小売を含む)などの事業に特化するとした。この事業再編の背景には再エネ電源の大量導入、卸電力価格の低下により、同社の業績が悪化していることがあった。他方、RWEは再エネ・配電・小売事業を営む子会社Innogyを2016年に設立し、RWE本体では従来型発電事業を行ってきた。

 E.ON、RWE両社は事業再編をさらに進め、2018年3月にはドイツ政府がエネルギー転換を決めた2011年以降で最大の電力再編に繋がる資産交換で合意した。合意内容は、E.ONがRWEの子会社Innogy(再エネ・配電・小売事業を担当)の全株式(76.8%)を取得する一方、RWEはE.ON の全株式のうちの16.67%を取得、その後E.ONがInnogyの再エネ事業も含めE.ONのすべての再エネ事業をRWEに売却するというものである。これにより、E.ONは発電事業を行わず配電・小売に特化する一方、RWEは再エネを含めた発電事業に注力することになる。今回の合意内容はEUおよびドイツの競争当局による審査を経た後、実行に移される。
系統運用:4送電会社が各エリアを制御
 所有形態に変化があった送電部門であるが、その運用については以前と変わりなく、全国に4社ある送電会社(Amprion社、50Hertz社、TenneT TSO社、TransnetBW社)が各管轄地域の送電設備を所有・運用している。配電部門は約900社あり、それぞれが管轄する地域で配電設備を所有・運用している。

7. 電力自由化動向

全面自由化で発電での大手シェアは低下
 ドイツでは、1998年に新しいエネルギー事業法が施行され、家庭用も含めたすべての需要家が電力の購入先を自由に選択できる全面自由化が実施された。

 発電市場では、自由化の当初は、再編されたE.ON、 RWE、EnBW、およびVattenfall(スウェーデン・ヴァッテンファル社の子会社)の4大事業者が8割のシェアを占めていた。ドイツの従来型発電市場においては、4大事業者は72%(2016年)と未だに高いシェアを占めている。

 また、卸電力取引活性化のため、2000年には、フランクフルトに欧州エネルギー取引所(EEX)が、また、ライプチヒにライプチヒ電力取引所(LPX)が設立された。しかし、両取引所は十分な取引量を確保できず、2001年10月に合併を決め、2002年にEEXとしてライプチヒで運用を開始した。さらに、同取引所はEU域内の電力市場統合を視野に2008年にはフランスの電力取引所(EPEX)と運用を統合し、スポット取引はパリに、先物取引はライプチヒにそれぞれの業務を集約した。取引所の取引量は徐々に増加しており、2016年の一日前市場(電力が供給される一日前に取引を行う実物市場)での取引量は2,349億kWhに達している。
小売価格は上昇
 一方、小売市場でも競争が活発化しており、4大事業者のシェアは2010年に54%であったのが、2016年には大口で28%、家庭用などの小口で34%にまで低下している。また、家庭用需要家での供給事業者の変更率は29%程度である。

 自由化によって、欧州諸国の中で最も高いと言われていた電気料金は一時、産業用で2~3割も低下した。しかし、近年は系統利用料金の上昇、環境税の引き上げ、再エネ買取コストの増大等の影響により、料金水準は上昇に転じている。そのため、EU統計局資料によると、ドイツの電気料金水準(税込)は依然としてEUで最も高い部類に入る。

8. 電力供給体制図




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