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各国の電気事業(主要12か国)

英 国

2018年3月時点




 目 次


      1. エネルギー政策動向
豊富な化石燃料資源:石油、ガスは枯渇の方向
原子力開発にも注力
再エネ、省エネ、原子力開発を推進
2. 地球温暖化防止政策動向
温室効果ガス削減目標:2020年までに34%、2050年までに80%削減
3. 再生可能エネルギー導入政策・動向
拡大に向けた国家計画を策定
4. 原子力開発動向
化石燃料枯渇問題で原子力開発が再始動
福島事故後も原子力推進政策は変わらず
1,600万kWの新規建設計画
5. 電源開発状況
電源の中心は石炭火力からガス火力へ
6. 電気事業体制
国有企業を分割民営化:現在は大手6社に集約
系統運用:所有分離されたNGET が運用
7. 電力自由化動向
全面自由化で競争激化
電気料金は上昇
「電力市場改革」で再エネ、原子力開発を支援
8. 電力供給体制図


1. エネルギー政策動向

豊富な化石燃料資源:石油、ガスは枯渇の方向
 英国は化石燃料資源に恵まれた国である。産業革命以来のエネルギー源である石炭に加えて、1960~70年代には北海での石油、天然ガスの開発が本格化し、1980年以降、20年間にわたってエネルギー自給を達成してきた。しかし、2000年に入ると北海の油田・ガス田の枯渇で生産量が年々減少し、2004年からはエネルギーの純輸入国に転じている。なお、2005年以降も生産量は減少の一途をたどっていたが、2014年からは北海大陸棚における掘削地点の再開発により生産は微増している。

 政府統計によれば2016年では石油の約35%、ガスの約47%が輸入によるものであった。

 また、2016年の一次エネルギー需要は約2億109万toe(石油換算トン)、国内生産量は約1億2,514万toeで自給率は約62%であった。一次エネルギー需要の内訳はガス38.3%、石油37.7%、石炭5.9%、電力他17.7%であった。>また、2016年の一次エネルギー需要は約2億109万toe(石油換算トン)、国内生産量は約1億2,514万toeで自給率は約62%であった。一次エネルギー需要の内訳はガス38.3%、石油37.7%、石炭5.9%、電力他17.7%であった。
原子力開発にも注力
 この化石燃料開発に加えて、英国は原子力開発もその黎明期から手がけてきた。1950~60年代には国産技術によるマグノックス炉(ガス冷却炉)、1960~70年代にはAGR(改良型ガス冷却炉)を開発、1970年代終わりには軽水炉開発に着手し、1994年にはサイズウエルB発電所(PWR1基、125万kW)を完成させた。また、原子燃料サイクル開発も行ってきており、濃縮、再処理、MOX製造等の施設も建設してきた。2017年12月時点の運転中の原子力発電ユニットは15基、合計1,036万kWで、国内総発電量の約2割を占める。1990年以降、電気事業の民営化や電力自由化を背景に、原子力発電所の新規建設は長期途絶えたが、北海ガス資源の枯渇や地球環境問題等を背景に、2008年以降、原子力推進策へ転じている。
再エネ、省エネ、原子力開発を推進
 英国は前述のように北海の石油・ガス資源枯渇、さらには地球温暖化問題に対処するため、2000年代初頭から、積極的にエネルギー・環境対策に取り組んでいる。特に2008年に制定されたエネルギー法では、2050年の温室効果ガス(GHG)削減目標を1990年比で80%と設定し、その達成に向け、再生可能エネルギー(再エネ)の開発や省エネの推進を精力的に進めている。

 また、原子力開発についても、2008年に政府として積極的に推進するとした原子力白書を発表し、許認可プロセスの見直しや炉型の承認作業等を通じ、民間電気事業者が原子力を開発するための環境整備が進められることになった。そして、現在、原子力も再エネと同様にその発電量を長期固定価格で買い取り、投資リスクを軽減させる方向で準備が進められている。

2. 地球温暖化防止政策動向

温室効果ガス削減目標:2020年までに34%、2050年までに80%削減
 英国は、京都議定書に基づきGHGを2008~2012年に1990年比で12.5%削減する義務を負っていたが、22.1%減とこの目標値はクリアした。これは主に発電部門等での石炭からガスへの燃料転換や、老朽産業設備の取替え等が進んだことによる。

 中・長期的な目標については、2008年にGHGを2050年までに80%削減(1990年比)することを規定した「2008年気候変動法」が施行された。2009年には、5年ごとの削減目標値(カーボン・バジェット)が策定され、2020年までに35%削減する目標が設定された。また同時にこれを達成するための国家計画「低炭素移行計画」(LCTP)も発表されている。そして2017年10月には、低炭素化に向けた新たな戦略「Clean Growth Strategy」が発表されている。

 なお、英国は2016年に1990年比42%のGHG削減を達成している。今後の見通しとしては、カーボンバジェットの第1~3期(2008~2022年)の目標を達成する見込みであるが、削減幅が大きくなる第4~5期(2023~2032年)は目標未達となる懸念も示されている。

 2009年のLCTPで示された電気事業関連の主な施策としては、再エネの利用拡大(2020年に発電比率30%)、原子力発電所の新設決定、新設に伴う立地手続きの簡素化、新設石炭火力へのCCS(CO2回収・貯留)設備の設置、スマートグリッドの開発、スマートメータの全世帯設置(2020年)等が挙げられた。また、新築家屋や庁舎のカーボン・ニュートラル化、グリーンディール(省エネ施策に対する融資制度)、自動車の燃費改善や電気自動車の普及、賃貸住宅のエネルギー効率度を示す「エネルギー効率証書」制の導入、自治体レベルでの再エネ開発、需要部門を対象とした排出量取引制度の導入、社会的弱者家屋のエネルギー効率化事業の強化等も計画された。

 2017年の「Clean Growth Strategy」では、原子力、洋上風力、電力貯蔵のコストダウン促進とイノベーションに向け総額9億ポンド投資することや、2025年までの石炭火力の廃止、2040年までのガソリン・ディーゼル車の販売禁止、充電ステーションやCO2貯蔵・利用(CCUS)、省エネ住宅への投資といった政策が提示された。

 また英国は、EU大で実施されている排出量取引制度(EU-ETS)にも参加している。2019年3月にEU離脱(Brexit)を予定しているが、Brexit後のEUの環境分野における制度・枠組みへの参加については2018年3月現在不透明となっている。

3. 再生可能エネルギー導入政策・動向

拡大に向けた国家計画を策定
 2009年のEU再エネ利用促進指令は、加盟国に対し、2020年までに最終エネルギー消費量に占める再エネ比率を加盟国全体で20%、英国に対しては15%に引き上げることを義務付けている。英国がEUへ提出した国家行動計画(NREAP)では、この15%目標(電力量換算で年間約2,400億kWh)の約半分を電力部門、残りを熱供給部門と輸送部門で達成するとしており、達成には電力部門で4,000万kW以上の再エネ電源の導入が必要とされた。

 その再エネ電源開発の中心となるのが風力とバイオマスである。中でも洋上風力については大きな期待が寄せられており、2010年1月には、3,300万kW分の洋上風力サイトが競争入札によって風力開発事業者に割り当てられた。

 再エネ開発支援策としては、2002年からROと呼ばれるRPS制度に類似した制度が導入されてきた(再エネ発電事業者に対して発電量に応じてグリーン証書を発行する一方、小売事業者に対しては発電事業者からの証書購入を義務付け)が、2010年から小規模電源を対象に固定価格買取制度(FIT)が導入された。さらに2014年には「電力市場改革」(後述参照)の下で、大規模電源も固定価格買取制度(FIT-CFD)の対象となった(実施は2015年4月から)。なお、ROについては2017年3月をもって新規再エネ電源の受付を中止している。再エネの拡大に伴う系統対策としては、送配電網の拡充・整備、スマートグリッドの研究開発、系統接続・運用方法の見直し等が実施されている。

 これらの政策により、2006年には年間総発電量の5%に過ぎなかった再エネ発電量が、2016年には25%に達している。

4. 原子力開発動向

化石燃料枯渇問題で原子力開発が再始動
 英国は原子力開発をその黎明期から手がけてきた。1950~60年代には国産技術によるマグノックス炉(ガス冷却炉)、1960~70年代にはAGR(改良型ガス冷却炉)を開発、1970年代終わりには軽水炉開発に着手し、1994年にはサイズウエルB発電所(PWR1基、125万kW)を完成させた。また、原子燃料サイクル開発も行ってきており、濃縮、再処理、MOX製造等の施設も建設してきた。2017年12月現在、運転中の原子力発電ユニットは15基合計1,036万kWで、国内総発電量の約2割を占める。

 1990年の電力自由化・民営化後、新規建設は滞ってきたが、2000年以降、石油、天然ガス資源の枯渇問題が顕在化し、政府は、原子力開発の再始動を打ち出した。また、運転中の既設原子力発電所は、2020年代にPWRを除きほとんどが閉鎖されると予想されたため、政府は2008年に原子力白書を発表し、新規建設の推進を決定した。2011年には、原子力開発に関する国家政策声明が議会で承認され、既設の8つのサイトが新規建設の候補サイトとして選定された。さらに2012年には、原子力も含めた低炭素電源への投資促進を目的とした電力市場改革を内容としたエネルギー法案(「電力自由化動向」の項参照)が議会に提出され、2013年12月の議会承認によりエネルギー法として制定された。
福島事故後も原子力推進政策は変わらず
 政府の原子力推進の方針は、福島事故後も変わっていない。事故後、既設炉の安全確認や追加対策の検討が安全規制当局によって実施されたが、既設炉の運転を制限する必要のないことが確認された。また、新規建設についても、エネルギー大臣が「英国の繁栄は原子力発電なくしては困難」とし、原子力推進の方針を再確認した。

 英国の世論調査では、2000年代以降、温暖化問題や燃料価格の高騰を背景に原子力発電への支持率が増加する傾向を見せており、福島事故直後には一時的に反対が増加したものの、近年では賛成が反対を大きく上回っている。
1,600万kWの新規建設計画
 電気事業者もこの政府方針に呼応し、具体的な開発計画を打ち出している。フランスEDFの子会社であるEDFエナジー社は、2地点で4基(652万kW)の建設計画を打ち出す一方、日立傘下のホライズン社は、2地点4基(552万kW)、また東芝の100%子会社であるニュージェン社は、1地点3基(341万kW)の建設計画を発表している。しかし、東芝の海外事業撤退表明を受け、現在韓国電力公社がニュージェン社の買収に向けて交渉している。

 この内、EDFエナジーが進めるヒンクリーポイントC原子力発電所(163万kW×2基)の建設計画が先行している。2013年3月に政府から計画許可を取得するとともに、10月には政府との間で発電電力の買取条件(35年にわたる固定買取価格の設定等)について合意に達した。欧州委員会は2014年10月、同建設計画における支援策は国家補助に該当しないとして承認した。ただし、EDFエナジーの利益率が高くなった際、需要家へ利益を還元するメカニズムを適用させるという条件が付加されている。EDFは2015年10月、中国の原子力発電会社CGNと戦略的投資協定(Strategic Investment Agreement)を締結し、EDF 66.5%、CGN 33.5%の出資で合意。2016年9月、政府とEDFの間で最終投資決定(Final Investment Decision)がなされた。

5. 電源開発状況

電源の中心は石炭火力からガス火力へ
 豊富な国内炭を有する英国では、早くから石炭火力を中心とした電源開発が行われる一方、原子力発電にも戦後の早い時期から取り組んできた。1970年代の石油危機以降は、この石炭火力と原子力の増強が図られた。しかし、1990年からの電気事業の民営化や電力自由化によって、国内炭の使用義務から開放された電気事業者は、老朽化し採算に合わない石炭火力発電所を次々と廃止した。また巨額の建設費が必要な原子力は、投資リスクが大きいとして新規建設が見送られた。このような中、当時、廉価であった天然ガスを燃料とする発電設備の建設が大規模に進行し、その結果、石炭火力比率が減少し、ガス火力比率が大きく上昇することとなった。2016年には、発電量シェアでかつて70%以上あった石炭火力が9%にまで減少、代わってガス火力が42%にまで増大した(その他の電源のシェアは原子力21%、再エネ25%、石油、揚水等3%)。

 今後の電源開発は、前述のように、低炭素電源である原子力や再エネにシフトすることになる。再エネの増大に伴い、需要に合わせて柔軟な運転ができるプラント(ガス火力等)も大量に必要となるが、設備利用率が必然的に低くなるこれらプラントへの投資が不足することが懸念される。そのため、これを回避するための投資インセンティブとして、「容量市場制度」(CM:Capacity Market)が導入されている(後述の「電力市場改革」に関する項参照)。

6. 電気事業体制

国有企業を分割民営化:現在は大手6社に集約
 英国では、1990年に、電力自由化と同時に国有電気事業者の分割・民営化が実施された。それまで発電と送電を独占していた国有の発送電局(CEGB)は発電会社3社と送電会社1社に分割・民営化された。また独占供給を行っていた12の国有配電局も民営化され配電会社となった。

 また、自由化によって新規参入が相次ぎ、2018年3月時点で発電会社約158社、小売会社約241社(ライセンス所有者数)が事業を展開している。ただし、これらのライセンス所有者には、1社でライセンスを複数所有していたり、系統への電力販売を主目的としない自家発、発電・供給を開始していない会社も含まれており、実際に事業を行っている会社は半数にも満たない。

 この民営化・自由化による競争の進展とともに、M&Aが活発化し、英国の大手電力会社はドイツ、フランス、スペインの大手エネルギー会社に買収された。この内、CEGBから分割されたイノジー社、パワジェン社はそれぞれドイツのRWE、E.ONに、また、スコティッシュ・パワー社はスペインのイベルドローラに、さらに、原子力発電会社のブリティッシュ・エナジー社はフランスのEDFにそれぞれ買収された。

 12の配電会社(小売事業)も、その多くがこれらエネルギー会社の傘下に入った。その結果、英国の旧国有電気事業者(送電部門を除く)は、RWE系(ドイツ)、E.ON系(ドイツ)、EDF系(フランス)、SSE系(英国)、イベルドローラ系(スペイン)の5大グループに集約された。これに電力市場でシェアを伸ばしている旧国有ガス事業者(ブリティッシュ・ガス)が加わり、英国の電力市場は6大グループ(ビッグ6)に集約され、これらが小売市場で80%(2017年)、発電市場で65%(2016年)のシェアを占めている。

 また、英国では電力自由化に先立って、ガス市場も自由化されたことから、これらの大手電力会社はガス事業にも進出しており、電気とガスの販売を行っている。

 M&Aの理由としては、顧客ベースの拡大を狙った供給部門間の水平統合、価格リスクをヘッジするための発電と供給の垂直統合等がある。送電・配電のネットワーク部門では、前述の分割民営化で所有分離された送電会社が、後にガス導管網会社と合併した。また配電会社間の資本統合や経営統合等が行われる等、スケールメリットを追及した再編が行われた。
系統運用:所有分離されたNGET が運用
 前述のように、英国(イングランド・ウエールズ地方)の国有送電部門は、分割民営化によって所有分離され送電会社となった後、ガス導管網会社と合併し、現在は送電とガス導管事業を行うナショナル・グリッド社(NGC、持ち株会社)となっている。

 イングランド・ウェールズ地方の送電設備は、NGCの送電子会社(NGET)が所有する一方、スコットランド地方はスコティッシュ・パワー社の送電子会社(SPT)、スコティッシュ・サザン・エナジーの送電子会社(SHET)が所有している。これら3社の送電系統の運用は、NGET社の系統運用部門が「単一系統運用者」(SO)として実施している。

 一方、配電部門は地域毎に14社(DNO)あり、それぞれが管轄する地域で配電設備を所有・運用している。さらに、DNOの管轄地域内で、DNOの配電系統に接続する形で系統を所有・運用する独立配電事業14社(IDNO)が存在する。

7. 電力自由化動向

全面自由化で競争激化
 電力自由化は1990年から段階的に進められ、1999年以降、家庭用を含めたすべての需要家が電力の購入先を自由に選択できるようになっている。小売供給事業者は、価格の割引競争のほか、産業用需要家に対してはオーダーメードサービス、また家庭用需要家に対しては、ガスと電力のセット供給、オンライン契約、長期価格据え置き契約等様々なメニューを用意し需要家獲得競争を展開している。この結果、全ての産業用需要家は供給事業者の変更や契約の見直しを、また、家庭用需要家も半数以上が供給事業者の変更を経験している。

 上記の需要家獲得競争により近年、大手6社に対する独立系事業者の小売市場シェアも徐々に伸びてきている。2017年9月時点の政府統計によれば、独立系事業者が獲得した家庭用需要家シェアは約2割となり(英国の需要家総数は約2,800万軒)、需要家保護の観点から市場競争の促進を重要視してきた政府は、これを好意的に捉えている。独立系事業者の多くは、標準的な世帯におけるガス・電気のセット(Dual-Fuel)契約でビッグ6を下回る料金やクリーンエネルギーを提示している。
電気料金は上昇
 電気・ガス料金は、2003年以降の世界的なエネルギー価格の高騰や国産ガス(北海ガス)の生産量の減少等を背景に急騰した。また、自由化の進展とともに、発電会社が燃料のスポット調達の割合を増加させていることも電気料金の上昇に拍車をかけている。近年、輸入ガス価格等により料金が低下する傾向も見られるものの、2016年のビッグ6の需要家が年間に支払った電気・ガス料金の平均は1,123ポンドと、2006年比で約1.2倍(電気)と1.5倍(ガス)上昇している。そのため、冬季に十分な暖房を確保することができない世帯(エネルギー貧困世帯)が急増し、その数はイングランド地方で250万世帯(2015年)に達し、全世帯のうち約11%を占めている。このような情勢の中、政府は弱者対策の一環として、25万軒以上の需要家を持つ電気・ガス事業者に対して、低所得者層への料金を割引く制度を導入している。
「電力市場改革」で再エネ、原子力開発を支援
 前述のように、英国政府は近年、再エネ、原子力、CCS付石炭火力等低炭素電源へシフトするエネルギー政策を掲げている。

 しかし、現行の卸電力取引制度(BETTA)は、1990年代以降の自由化万能主義を反映したもので、近年の、より環境保護を重視する方針に沿ったものではない。そのため、強力な奨励施策が導入されない限り、開発コストが高いこれら低炭素電源は、市場から締め出されることになる。

 このような状況を受けて、政府は2011年7月、これらの電源の開発支援を目的とした「電力市場改革」(EMR: Electricity Market Reform)を打ち出した。同年11月にはEMRの実施を盛り込んだエネルギー法案が議会に提出され、約1年の審議を経て、2013年12月、「2013年エネルギー法」が制定された。EMRは、現行の卸電力取引制度の枠組みはそのまま残しながら、卸市場に低炭素電源を導入する強いインセンティブを組み込むべく、以下の4つの施策の導入を進めている。

 ① 低炭素電源からの固定価格買取制度(FIT-CFD)の導入:

 再エネのほか、原子力やCCS付石炭火力等も対象。CFDは変動するスポット価格のリスクをヘッジするために使われる金融派生商品。FIT-CFDはこの手法を用いて買取価格を固定化する仕組み。買取期間は、再エネに対して15年、原子力に対して35年となっている。再エネの買取価格(行使価格)は政府により設定され、原子力の買取価格の設定は個別案件となる。2014年10月に開催された第一回CFD分配ラウンドでは、太陽光、陸上風力、洋上風力、コージェネなどの電源に政府予算を超過した申請があり、オークション方式で進められることとなった。第二回分配ラウンドは、2017年9月に開催され、太陽光と陸上風力が対象から外れ、洋上風力の行使価格が第一回と比べ半額となった。第二回では最終的に、11件の再エネプロジェクト(運開時期が2021~2023年度のものが対象)に対してCFD契約が締結された。第三回ラウンドの開催は2019年春に予定されている。


 ② CO2排出価格の下限値(CPF)の設定:

 政府が設定するCO2排出価格の下限値(CPF:Carbon Price Floor)とEU排出権の見通し価格(先物価格の平均)との差額が英国独自のCO2排出価格(CPS:Carbon Price Support)として上乗せされる。これは、EU排出権価格が低迷した際にCO2を多量に排出する火力発電所の投資回収が進む一方で、低炭素電源への投資が停滞することを抑制するための制度である。火力発電所に掛かるコストを一定以上に保つことで、相対的に低炭素電源のコストを低くし、優位に立たせる。CPFは2013年4月1日に導入された。


 ③ 新設火力のCO2排出基準の設定:

 新設火力のCO2排出基準値を年間で450g/kWhに設定するもの(実際には、450g/kWhを基準値とする年間排出上限量で規制される)。これにより、石炭火力はCCSの設置を伴わなければ基準値を満たすことが困難となる。同基準は、2013年エネルギー法の条項に基づき、2014年2月18日以降に政府から建設許可を受けた、またはボイラのリプレースメントを実施した火力設備へ適用される。


 ④ 容量市場制度(CM:Capacity Market)の導入:

 再エネ電源の大量導入によって、ガス火力等一般電源の設備利用率が低下し、それらの電源への設備投資が不足することで、安定供給が確保されないという懸念が残る。これを回避するために導入されたのがCMである。CMは設置した容量(kW)に対して一定の報酬を支払うもので、これにより設備利用率が低くても一定の利益が確保できる。対象となる容量および報酬額(決済価格)はオークションによって決定される。2018年1月に開催されたオークション(2021~2022年冬期の供給力確保)では、5,041万kWの容量提供契約が締結され、決済価格は8.40ポンド/kW/年となった。これは、2016年12月のオークションの行使価格22.50ポンド/kW/年を大幅に下回るものである。


 2013年エネルギー法の制定を受けてEMRは現在、各項目についての諸規則を設定しており、2014年から段階的に導入を進めている。

8. 電力供給体制図

※北アイルランドを除く
※事業者数は規制当局ウェブページ上の情報(2018年3月21日更新)から引用
※事業者数は発給されたライセンス数に基づき記載



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