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フランス

2018年3月時点




 目 次


      1. エネルギー政策動向
「エネルギー政策指針法」:原子力維持、再エネ開発、省エネ推進を規定
「環境グルネル法」:省エネ、再エネ開発の具体策を規定
「エネルギー移行法」: 再エネ、省エネの推進、原子力比率低減を謳う
マクロン現政権:原子力低減目標の2025年50%を見直し
2. 地球温暖化防止政策動向
温室効果ガス削減目標:2020年までに20%、2050年までにカーボン・ニュートラル
3. 再生可能エネルギー導入政策・動向
再エネ導入目標:2030年までエネルギー全体で32%、発電で40%に引き上げ
固定価格買取制度を導入
4. 原子力開発動向
フランスの原子力政策の背景・特徴
原子力比率低減へ
新規建設は継続
原子力の海外進出にも積極的
5. 電源開発状況
電源は原子力が中心
6. 電気事業体制
EDFの株式会社化、部分民営化
送電はITO、配電は法的分離
発電・小売部門:依然としてEDFが圧倒的なシェア
7. 電力自由化動向
自由化は段階的に実施
小売電気料金の水準は微増するも安定的
大口需要家への規制料金の廃止、EDFによる原子力発電を部分開放
8. 電力供給体制図


1. エネルギー政策動向

 フランスは、石油、天然ガスなどの化石燃料に恵まれず、主要な国内電源は石炭、水力のみであった。そのため、エネルギー政策においては、他の欧米諸国と同様、第一次石油危機を契機として輸入石油への依存を軽減させるため、国内資源の開発、省エネルギーの促進、供給源の多角化の三つを柱とするエネルギー政策を実施してきた。特に原子力の開発に一貫した努力が傾注され、現在では、発電電力量に占める原子力の割合は7割を超えている。また1980年代以降、原子力発電の増加とともにエネルギー自給率は著しく改善され、現在では50%以上にも達している。

 一方、1990年代以降、世界及び欧州(EU)では、エネルギー政策において、温室効果ガス(GHG)削減が重要なテーマとなってきた。EUは1997年の京都議定書で、2008年~2012年におけるGHG削減目標を1990年比8%減と義務付けられたが、前述のように、フランスはすでにCO2排出ゼロの原子力が大量に導入されていたことから、0%(1990年レベル維持)となった。
「エネルギー政策指針法」:原子力維持、再エネ開発、省エネ推進を規定
 この気候変動問題への対応、および原子力開発継続の要否を確認する必要から、2003年には国民の意見を聴取するため「エネルギーに関する国民討論」が開催され、2005年にはこの結果を踏まえて「エネルギー政策指針法」が制定された。

 同法では、2050年までにGHGを75%削減する長期目標達成のため、①省エネ:最終エネルギー消費のGDP原単位を2015年まで毎年2%削減、2030年まで毎年2.5%削減、②再生可能エネルギー(再エネ)開発:エネルギー、発電での再エネ比率を2010年までにそれぞれ10%、21%にまで引き上げ、③2020年に向けた原子力発電オプションを維持する、などが規定された。
「環境グルネル法」:省エネ、再エネ開発の具体策を規定
 続いて2007年には「環境グルネル会議」が開催され、政府は「原子力なしの気候変動問題への挑戦は幻想」として原子力は不可欠と強調しつつも、EUのエネルギー政策を踏まえ、フランスも再エネ開発に注力する方針を示した。この「環境グルネル会議」を受けて具体的な目標を盛り込んだ「環境グルネル実施計画法(グルネルⅠ法)」が2009年に、また「グルネルⅠ法」で示された目標を具体的な施策として盛り込んだ「環境に対する国内取組法(グルネルⅡ法)」が2010年に制定され、省エネ、再エネ開発の推進にドライブが駆けられた。
「エネルギー移行法」: 再エネ、省エネの推進、原子力比率低減を謳う
 福島事故後の2012年に政権に就いたオランド・社会党政権は、エネルギー政策として「エネルギー移行」を掲げ、前政権からの再エネ開発、省エネ推進に加えて、電源多様化の観点から原子力発電比率の低減、国内で最も古いフェッセンハイム原子力発電所の閉鎖などを打ち出した。同政権は、これらの政策を法制化するに先立ち、国民の意見を広く聴取するため、2012年11月~2013年7月まで「全国討論会」を開催し、同7月には同討論会の結果を総括した報告書が発表された。

 この報告を受けて、2014年8月に「エネルギー移行法案」が政府によって策定され、翌年の2015年8月には「エネルギー移行法」が制定された。

 その内容は、オランド大統領が打ち出した、前述の施策の大部分を法制化したもので、主に以下の数値目標が定められた。

     ・ GHG排出量を2030年までに40%、2050年までに75%削減(対1990年)。
 ・ 最終エネルギー消費量を2030年までに20%、2050年までに50%削減(対2012年)。
 ・ 化石燃料の消費量を2030年までに30%削減(対2012年)。
 ・ 最終エネルギー消費量に占める再エネ比率を2020年に23%、2030年に32%(発電量ベースは40%)に引き上げ。
 ・ 原子力発電比率(発電量ベース)を2025年までに50%に低減。

 ただし、原子力については、前述のように発電電力量(kWh)の比率は低減する一方、原子力発電設備容量(kW)は、現行の6,320万kWを維持することを認める条項も盛り込まれた。
マクロン現政権:原子力低減目標の2025年50%を見直し
 2017年5・6月に選挙が行われ、新政権が誕生した。前社会党政権で経済大臣を務めたマクロン氏が大統領に選出されるとともに、同氏が立ち上げた新興政党「前進」が下院選挙においても過半数の議席を獲得した。

 エネルギー政策においては、新政権は基本的に前オランド政権の「エネルギー移行法」を踏襲しているが、新たな施策も打ち出している。同年7月には「気候変動計画」を策定し、「2050年までにカーボン・ニュートラル」という目標を掲げた。具体的な施策としては、2022年までの石炭火力の全廃、2040年以降のガソリン車およびディーゼル車の販売禁止などが盛り込まれた。

 また、同年11月には、エネルギー移行法の「2025年・原子力比率50%」を見直すことを閣議決定した。「原子力を2025年までに50%に低減すると、ガス火力の新設や既設石炭火力の運転継続が必要となり、CO2排出増に繋がる」という、送電会社RTEの試算を受けたもので、目標達成年である2025年の後ろ倒しを決定した。政府は、50%という目標は維持するが、達成時期は2018年内に改訂予定の「エネルギー多年度計画(PPE)」で明確化するとしている。

2. 地球温暖化防止政策動向

温室効果ガス削減目標:2020年までに20%、2050年までにカーボン・ニュートラル
 前述のように、フランスは京都議定書に基づき2008年~2012年における温室効果ガス(GHG)の排出量を1990年の水準に維持することが求められたが、5年間平均で6.5%減となり目標を達成した。

 今後の削減については、長期目標として2005年の「エネルギー政策指針法」で2050年までにGHGを75%削減、また中期目標として、2009年の「環境グルネル実施計画法」で2020年にGHGを1990年比で20%削減と決められた。さらに、2015年の「エネルギー移行法」では、2030年に1990年比で40%削減、2050年までに75%削減との数字が掲げられている。

 これらの目標値は基本的にEU全体の目標値と平仄ひょうそくを合わせたものであるが、マクロン政権は前述のように、2050年目標として、これまでよりさらに踏み込んだ「カーボン・ニュートラル」を掲げている。なお、2015年時点では、1990年比で16.4%減であった。

 またフランスは、欧州大で導入されているGHG排出量取引制度である「EU排出量取引制度(EU-ETS)」の下で、発電など特定の産業部門(EU-ETS部門)におけるGHG排出量の削減に取り組んでいる。発電部門では、フランスは原子力の比率が高く、水力も一定の比率を占める一方、火力発電の比率が低く、すでにCO2排出ゼロ電源の比率が総発電設備容量の80%以上を占める。そのため、今後も原子力発電が一定以上維持されていく限り、発電部門でのCO2排出は他国と比較して低い水準に留まると見られる。

3. 再生可能エネルギー導入政策・動向

再エネ導入目標:2030年までエネルギー全体で32%、発電で40%に引き上げ
 前述のように、フランスは近年、発電では原子力に加えて再エネ開発にも取り組んでいる。2017年末現在、水力2,552万kWのほか、その他の再エネ電源として風力1,356万kW、太陽光766万kW、その他195万kW、合計2,317万kWを持ち、水力と合わせると再エネ電源は4,869万kWと、総発電設備の37%に達する。

 フランスは今後も再エネ開発を推進する方針である。開発目標としては、2009年「EU再エネ利用促進指令」によって2020年までに最終エネルギー消費量の23%(2005年10.3%)を再エネで賄うことがフランスに義務付けられ、2009年「環境グルネル実施計画法」では、2020年・23%を達成するため、①再エネ生産量を現行の2,000万トン(石油換算)から2020年に3,700万トン(石油換算)に引き上げる、②発電では2020年までに再エネ比率を総発電電力量の27%まで引き上げる、ことが規定された。

 さらに、2015年「エネルギー移行法」では、2030年にエネルギーで32%、発電で40%に引き上げることが謳われ、マクロン政権もこの目標を維持している。この目標を達成するため、2016年10月には、「エネルギー多年度計画(PPE)」が制定され、省エネ・再エネ開発に関する中期目標(2016~2018年、2019~2023年)が規定された。省エネについては、最終エネルギー消費量を2018年に7.0%、2023年に12.6%削減する(2012年比)目標が示される一方、再エネについては、2030年までに陸上風力2,180万~2,600万kW、太陽光1,820万~2,020万kWを導入する目標が示されている。

 風力、太陽光の開発規模は、ドイツなどと比較すると遅れを取っているが、再エネ促進を重視するマクロン政権の下、2017年10月、風力発電WGが立ち上げられ、地域の許容性向上や許認可手続きの簡素化が進められている。また、電気事業者であるフランス電力(EDF…詳細は「6. 電気事業体制」を参照)は2017年12月、2020~2035年の間に、フランス国内で3,000万kW(現行の太陽光発電容量の4倍以上)の太陽光を建設する計画を発表している。
固定価格買取制度を導入
 フランスでは再エネ電源の開発支援策として、固定価格買取制度(FIT)および電源入札制度が採用されている。FITは、太陽光、風力、小水力、バイオマス等の再エネ電源に幅広く適用されている。

 一方で、入札制度も併用されている。入札は、PPEに基づいて政府が策定する「多年度発電設備投資計画」における電源別発電容量の目標値に、実際の発電容量が達していない場合に実施される。入札で受入枠を落札した発電事業者は、EDFに発電電力を売電する。2005年以降、政府はバイオマス、陸上風力や洋上風力の電源に対して入札制度を実施している。具体的には、2017~2020年分について、陸上風力で300万kW、太陽光で陸上設置型300万kW、屋根設置型135万kWの入札が実施されている。洋上風力については、2011年と2013年に6つのプロジェクト(合計約300万kW)が落札されたが、許認可手続きの複雑さ、景観・騒音に係る訴訟、政府による買取価格の再交渉などのため、未だに着工には至っていない。そのため、前述のように現在、許認可制度の見直しが検討されている。

4. 原子力開発動向

フランスの原子力政策の背景・特徴
 フランスは日本同様、1970年代の石油危機を契機として、原子力発電の大規模開発にまい進した。その結果、2017年末現在、58基6,313万kWの原子力発電設備を運転しており、総発電電力量の72%(2016年)を占めるに至っている。

 このように、大規模な原子力開発が行われた背景には、自国に化石燃料などのエネルギー資源が乏しかったことに加えて、欧州におけるエネルギー面での、当時のフランスの地政学的事情があったと考えられる。石油危機の中、欧州で主導権を発揮するには、確実なエネルギー源の確保が必須とされ、豊富な石油・天然ガス資源を持つ英国、石炭資源を持つドイツに対して、フランスは原子力の大規模開発によって、そのエネルギー源を確保する戦略に踏み切った。

 この大規模開発を行うに当たっては、フランスの政治・行政体制が有利に働いたとされる。ブルボン朝以来の強力な中央集権体制に加え、強大な大統領権限などから迅速な政策の実行が可能となった。また経済政策面では、当時の混合経済体制も大規模開発を支えた。原子力などの国家関与の強いエネルギー産業では、政府が計画経済的手法を取り入れ「エネルギー計画」が策定され、長期的な観点からの政策決定・実行が行われた。原子力に対する世論の面でも、フランスはキュリー夫人など著名な研究者を輩出したことに見るように、第二次世界大戦前から原子力の研究・開発の歴史を有していたことに加えて、大戦後は冷戦下、自前の核を保有するという国防の観点から米国、旧ソ連に次いで核開発を行ってきた。そのため民生利用である原子力発電についても従来、国民に強く支持されてきたという経緯がある。
原子力比率低減へ
 この結果、フランスは現在発電の70%以上を原子力が占めるに至っている。しかし、前述の通り、福島第一事故後の2012年に誕生したオランド政権下、EU大での再エネ導入の要請もあり、電源の多様化を進めるという観点から、現在は原子力比率を低減する政策が取られている。ただし、前述のように、原子力発電比率を2025年までに50%まで引き下げるという目標については、目標達成年を後ろ倒しすることとなり、現在新たな目標年の設定に向けて議論が行われている。
新規建設は継続
 一方、原子力の新規開発は継続されている。1986年のチェルノブイリ事故の際にも原子力開発への影響はなく、順調に継続された。その後、国内での電力需要の鈍化もあり、新規建設の着工は1991年以降途絶えることとなったが、2005年には将来電源の中心として原子力開発を継続することが決定し、次世代炉として欧州加圧水型炉(EPR)1基が建設されることになった。サイトは既設炉のあるフラマンビルで、現在その3号機として建設が進められているが、工事の大幅な遅延のため、現時点での運開予定は2019年となっている。

 原子力比率低減の現マクロン政権下でも、新規建設の動きは継続されている。フランスの原子力企業アレバは、フィンランド(オルキルオト)でのEPR建設遅延などで経営危機に陥り、近年、その再建に向けて事業再編が行われてきたが、それも一段落し、アレバの原子炉部門子会社アレバNPはEDFの子会社となり、再出発を果たしている。そのEDFは現在、フラマンビルに続く国内でのEPRの建設の検討に加え、新型EPRの設計にも着手している。なお、国内での新規建設は、「エネルギー移行法」で決められた設備容量枠6,320万kWを超えなければ可能であり、閉鎖する炉があれば、その容量分の建設が可能となる。
原子力の海外進出にも積極的
 また、フランスは原子力産業維持のため、原子炉の輸出に積極的である。現在フィンランドで1基、中国(台山)で2基のEPRが建設中であり、いずれも2019年に運転開始する予定である。また、EDFは英国のヒンクリーポイントで2基、サイズウエルで2基の建設を計画しており、ヒンクリーポイントについては1基が2019年に着工する予定である。これらのプロジェクトには中国企業CGNが資本参加する一方、CGNが英国で建設するプロジェクトにはEDFが資本参加する。さらに2018年3月には、インドでEPR6基を建設するプロジェクトの枠組み協定が締結され、順調に行けば2019年中に建設開始される予定である。

 なお、原子炉以外の輸出については、2018年1月、ニューアレバ社(現オラノ社)と中国CNNCが商業規模再処理施設を中国内に建設することで合意している。

5. 電源開発状況

電源は原子力が中心
 前述のように、フランスは石油危機以降、原子力中心の電源開発を行ってきているが、近年は再エネ電源の開発も活発化している。

 2017年末の総発電設備容量は1億3,076万kWであり、その内訳は、水力2,552万kW、火力1,895万kW(石炭300万kW、石油410万kW、ガス1,185万kW)、原子力6,313万kW、風力1,356万kW、太陽光766万kW、その他再エネ195万kWとなっている。

 主要電源である原子力発電設備は、2018年現在58基あり、その内訳はPWR90万kW級34 基、PWR130万kW級20基、N4シリーズのPWR150万kW級4基となっている。なお、フランスでは、電力需要の落ち込む夏季に加え、近年は風力、太陽光などの再エネ発電増大による出力抑制の必要から、原子力発電の出力調整運転が行なわれている。出力調整運転は当初、90万kW級で行われてきたが、1988年からは130万kW級、1995年からは90万kW級MOX装荷炉でも行われている。また、MOX燃料の装荷については、1980年代から導入が始まっている。

 今後の原子力の新規建設は、前述のように動きはあるが、現在建設中のフラマンビル3号機を除いて現段階では未定である。

 風力、太陽光などの再エネについては、前述のように開発計画が策定され、鋭意、開発が進められているが、課題も多い。

 火力については、EDFが運転する石油火力が2018年3月、完全に廃止された。さらに石炭火力も今後廃止され、新設も計画されていない。一方、ガス火力はピークや再エネ電源対応として今後も運転継続され、場合によっては新設の可能性もある。

6. 電気事業体制

EDFの株式会社化、部分民営化
 従来、フランスの電気事業は、1946年「電力・ガス事業国有化法」により設立された国有企業EDF(旧フランス電力公社、現フランス電力)が発送配一貫体制の下、全国的に電力供給を行ってきた。しかし、1990年代に入りEU大で電力市場自由化が始まり、フランスでも電力自由化が行われることとなった。この自由化に伴い、EDFは欧州各国への進出を図ったが、国有企業であることが障害となるケースも出てきた。そのため、2004年に「EDF・GDF株式会社化法」によりEDFは株式会社化され、一部の株式(約15%)が一般公開された。
送電はITO、配電は法的分離
 また、2004年「EDF・GDF株式会社化法」で送電系統運用部門、ガス輸送導管運用部門の法的分離(子会社化)が規定されたことを受けて、EDFは2005年、送電部門を分離し100%子会社(RTE)とした。RTEは2012年、第3次EU電力自由化指令に基づき、エネルギー規制委員会(CRE)から独立送電運用者(ITO)として認証された。ITOとは、親会社からの独立性を高めるための様々な要件を課せられた、法的分離の強化形態であり、EDFは引き続きRTEとの資本関係を維持している。ただし、2017年には、RTEの株式の49.9%が売却されている。

 配電部門は、2006年「エネルギー部門法」により法的分離が規定されたことを受けて、2008年に「eRDF」を100%子会社として分離した。同社は2016年5月に、社名を「Enedis」と改めた。なお、フランスにはEnedis以外に配電事業を行っている地方配電事業者(配電部門)が160社程度存在しており、配電電力量のシェアはEDFが約95%、地方配電事業者が約5%となっている。
発電・小売部門:依然としてEDFが圧倒的なシェア
 2017年末現在、発電事業者にはEDFのほか、CNR(フランスENGIE社系)、UNIPER(ドイツE.ON社系)などが存在するが、依然としてEDFが国内発電電力量の約80%を占めている。

 EDFは2017年末時点で国内発電設備9,233万kW(水力1,977万kW、火力944万kW、原子力6,313万kW)を所有し、2017年のEDFの国内発電電力量は4,247億kWh(水力295億kWh、火力161億kWh、原子力3,791億kWh)となっている。

 また、小売供給事業については、自由化以前は、EDFおよび地方配電事業者がその管轄地域内において独占的に需要家に対して電力供給を行っていた。しかし、2000年の「電力自由化法」により小売電力市場が段階的に自由化されたことから、EDFなど既存事業者を離脱して新規参入者から電力供給を受ける需要家が増加した。2017年末時点の新規参入者による販売シェアは、産業用・業務用需要家向けで38.7%、家庭用需要家向けで15.5%となっている。なお、フランスで小売供給事業を行う事業者は、EDFや地方配電事業者(小売供給部門)等の既存事業者が約160社と2000年の自由化以降の新規参入者が約20社存在する。2018年には、新規参入者の一つであるディレクト・エネルジー社が、規制料金よりも安い電気料金やサービスの質を評価され、2017年に続き、最優秀小売業者に選定された。同社は、EDF、ENGIE(旧GDFスエズ社)に続く国内第3位の電力・ガス小売業者である。

7. 電力自由化動向

自由化は段階的に実施
 フランスでは「電力自由化法」が2000年2月に制定されたものの、「EU電力自由化」指令では1999年2月から小売電力市場の自由化が規定されていたため、実質的には1999年2月からフランスでも自由化が開始された。

 自由化は段階的に実施され、市場開放率は1999年2月以降約20%(年間消費電力量1億kWh以上の需要家約200軒が自由化対象)、2000年5月以降約30%(1,600万kWh以上の需要家約1,600軒が自由化対象)、2003年2月以降約37%(700万kWh以上の需要家約3,300軒が自由化対象)と拡大された。2004年7月以降は、家庭用需要家を除く産業用・業務用需要家が自由化され、2007年7月以降は全面自由化が実施された。
小売電気料金の水準は微増するも安定的
 フランスの小売電気料金は、産業用、家庭用とも1990年代中頃から低下した後、2000年頃から横ばいの状態となっている。ただし、2002年以降、「電力公共サービス拠出制度(CSPE)」の課徴金に含まれる再エネ補助費用などが増加傾向にあることから、CSPEなど公租公課を含んだ小売電気料金は若干上昇する傾向にある。

 しかし、フランスは原子力発電比率が高いことから、他の欧州諸国と比較して2000年代前半以降の燃料費高騰の影響は受けてはいない。欧州委員会統計局(Eurostat)のデータによると、2017年上半期におけるフランスの家庭用電気料金は税込みで16.90ユーロ・セント(22.0円)/kWh、また産業用電気料金は税込みで11.98ユーロ・セント(15.6円)/kWhと、EUで最も安い部類に入る。
大口需要家への規制料金の廃止、EDFによる原子力発電を部分開放
 フランスでは全面自由化がすでに実施されているものの、供給先変更など自由化の権利を行使していない需要家については、政府が認可する「規制料金」が適用されている。一方で自由化の権利を行使した需要家(新規参入者に変更した需要家、既存事業者と交渉により再契約した需要家)は、卸電力市場価格の変動等が反映された「市場料金」が適用されている。しかし、「市場料金」よりも「規制料金」が割安であったため、EDFから新規参入者に乗り換える需要家は限定的な状況が続いていた。そのため欧州委員会は、大口需要家に対する規制料金によって小売市場での競争が歪められているとして、再三フランス政府に規制料金の廃止を求めてきた。

 これを受けて、2009年、フランス政府は36kVA超過の大口需要家への規制料金を2016年以降に廃止(家庭用および契約容量36kVA以下の業務用は継続)するとともに、新規参入事業者にEDFの原子力発電電力量の一部を売却する新しい卸電力制度を開始した。2010年の「電力市場新組織法」では、2025年まで年間1,000億kWh(EDF発電電力量の25%に相当)を上限としてEDFの原子力発電電力量を発電原価に基づく価格で小売供給事業者(フランス国内の需要家への供給分に限定)に卸販売することが規定された(ARENH制度)。原子力発電電力の売電価格については、現在は4.2ユーロ・セント(5.5円)/kWhが適用されている。2015年以降、卸電力市場価格がARENH価格を下回ったため、2016年のARENH制度への申込みはゼロとなったが、その後の卸市場価格の上昇に伴い、最近は再びARENHへの需要が増加しており、2017年の申込みは822億kWh、2018年は946億kWhとなっている。

 一方、家庭用および業務用に残っている規制料金については、欧州委員会や新規参入者から廃止を求める動きが続いている。また、家庭用部門を巡っては大手石油会社や大手スーパーに続いて、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの参入も取沙汰されており、今後はフランスにおいても家庭用部門での競争激化も予想される。

8. 電力供給体制図




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