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各国の電気事業(主要12か国)

スペイン

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1. エネルギー政策動向

急増する再エネ発電
スペインは化石燃料資源が乏しく、石油、天然ガスなどのエネルギーは輸入に依存してきた。そのため、1970年代には石油危機を契機にして、原子力開発、省エネ、国内炭の開発が推進された。しかし、1979年の米国スリーマイル島事故、さらには1986年のウクライナのチェルノブイリ事故で、原子力の新規開発はストップした。

代わって、政府は地球温暖化対策、エネルギーセキュリティの観点から、石油・国内炭からガスへの燃料転換を打ち出す一方、再生可能エネルギー(再エネ)開発の推進を打ち出し、その開発を進めている。その結果、2014年には発電(設備容量)でガス25%、石炭11%、石油3%とガスが火力の主力となった。また、再エネ発電は、従来からの水力(17%)に加えて、風力21%、太陽光4%、太陽熱2%、その他再エネ3%と、再エネ電源の合計が47%にまで拡大され、ガス火力と並ぶ重要な電源となっている。ただし、この再エネ電源の急増で電力会社は巨額の赤字を抱える事態に陥り、大きな経営問題となっている。

原子力発電は、前述のようにチェルノブイリ事故以降、新規建設はストップした。しかし既設の原子力発電設備ついては、社民党政権時代に一時、政府が発電比率を低減する方針を打ち出したこともあったが、現政権は既設の原子力発電所の運転は継続する方針を明らかにしており、今後も一定の水準を維持することが予想される。

2. 地球温暖化防止政策動向

温室効果ガス削減目標:2020 年までに2005 年比10% 削減
スペインは、京都議定書により、温室効果ガス(GHG)排出量を2008~2012年に1990年比で15%増(3億3,320万トン)削減することを義務付けられていた。削減目標が「増」となったのは、EU加盟国の中でスペインは経済発展の余地があると認められたことによる。

実際、排出量は2005年まで増え続けたが、その後は減少に転じ、2013年には3.4億トンとなった。これは省エネや再エネ開発、ガスへの燃料転換などの政策努力も寄与しているが2007年の不動産バブル崩壊や2008年のリーマンショックの影響により経済が停滞し、エネルギー消費が減少したことも一因と見られている。スペインの2008~2012年におけるGHG排出量合計は17億9,900万トン、5年間の平均は3億5,980万トンとなった。

スペインはさらなる排出量削減を目指し、2007年に閣僚会議で承認された「気候変動・クリーンエネルギー戦略」(EECCEL)に基づき今後も様々な施策を講じてゆく方針である。電力関連では、省エネ、再エネ開発推進、新設火力へのCCS(炭素回収・貯留設備)設置推進、需要管理(デマンドサイド・マネジメント)の推進、国家気候変動適応計画(NCCAP)の実施、京都メカニズムの活用、排出量取引の活用、森林などによるCO2吸収、などがある。

3. 再生可能エネルギー導入政策・動向

スペインは世界有数の再エネ発電国
前述のように、スペインは、早い時期から再エネ開発に積極的に取り組んできた。1992年に初めて再エネ電源の導入計画が策定されたのを皮切りに、その後、同計画は数年に一度改定され、新たな再エネ導入目標が設定されてきた。

2011年の「再エネ国家行動計画」(2011~2020年)では、2020年に陸上風力を2010年比で1.7倍の3,500万kWに、太陽光は同1.9倍の725万kW、太陽熱は同7.6倍の480万kW、バイオマスは同2.4倍の195万kWと大幅に増設する計画である。太陽熱は2007年に初めて導入と、太陽光に比べて導入開始は遅れたが、2020年には発電電力量では太陽光を上回ると予想される。また潮力は2016年、地熱は2018年からそれぞれ導入を開始し、段階的に増設して行く計画である。

その結果、多くの風力、太陽光、太陽熱発電所が設置され、太陽光の導入量は2008年にドイツに次ぎ世界第2位となるなど、スペインは世界有数の再エネ発電国となった。しかしその後、再エネ買取制度の見直し(後述参照)により再エネ電源の新設が徐々に減少し、再エネ導入目標の達成が疑問視され始めている。2014年現在、風力は2,300万kWで世界4位、太陽光は467万kWで世界7位、太陽熱は230万kWである。これらの再エネ電源は水力を含めてスペインの総発電設備の47%、また総発電電力量の39%を占める(2014年)。
FIT で開発を推進:電力会社には巨額の赤字
この再エネ導入量の増減をもたらしたのは、固定価格買取制度(FIT)である。スペインでは1994年から導入されており、電力会社に対して、再エネからの発電電力を高い価格で買い取ることを法律で義務付けた。

買取価格は、再エネ開発促進のため、2007年まで段階的に引上げられた。しかしそれ以降、買取価格が引下げられた他、買取期間の短縮や再エネ電源の導入制限などの措置が実施された。さらに2012年には、再エネ発電の買取を停止した。2014年6月には買取再開が決まったが、買取価格などの買取条件は大幅に変更され、買取を制限するものとなった。

このようにスペインが買取制度の見直しを実施したのは、政府が買取コストの電気料金への転嫁を認めないことから、電力会社が巨額の赤字を抱えるに至ったためである。

4. 原子力開発動向

電力需要の20%を賄う重要な電源
スペインでは2015年1月現在、7基739.7万kW(休止中のガローニャ発電所を除く)の原子力発電設備が運転中で、電力需要の約20%を賄う重要な電源となっている。これらの発電設備はスペイン大手電気事業者であるイベルドローラ、ENDESAなどが出資した合弁会社が運転しているが、運転状況は良好であり、近年の設備利用率は2013年82.5%、2014年83.3%と常に80%を超えている。

スペインの原子力開発政策は後述のように、海外での事故や政権交代で紆余曲折はあったが、現政権は今後も原子力発電を維持してゆく方針である。
石油危機で開発促進:外国での事故の影響で開発ストップ
石油など化石燃料資源に乏しいスペインは、早い時期から原子力開発を進めてきた。60年代後半から70年代初めにかけて、米国からは軽水炉を導入、またフランスからはガス炉を導入した。さらに、1973年の石油危機後は、「国家エネルギー計画」(PEN)が策定され、12基の原子力発電プラントを建設する計画が打ち出された。この計画に従い、80年代に7基運転を開始した。

しかし、1982年に誕生した社会労働党(PSOE)政権は、米国スリーマイル島事故を受け開発計画を大幅に縮小し、1983年のPENでは、建設中の5基の工事が中断あるいは凍結され、さらに1994年には法律によって5基の建設計画は最終的に中止とされた。また、運転中の発電所も1990年に1基閉鎖された。

さらに2004年に政権に就いたサパテーロ社会労働党政権は、既設の原子力発電所の段階的閉鎖を掲げ脱原子力に舵を切った。2005年には、政府は原子力比率(設備容量)を2011年までに23%から10~16.5%にまで低減する計画を発表し、電力会社が求めていたホセカブレラ発電所の2009年以降の運転延長申請を却下した。
現政権下で原子力維持に転換
続く2008年3月の総選挙でも、サパテーロ首相は、再度、脱原子力を掲げて首相に再選されたが、原子力なしではCO2削減目標が到底達成できないため、当選後、原子力発電所の運転期間延長には柔軟な姿勢に転じた。2009年には40年の運転期限を迎えたサンタ・マリア・デ・ガローニャ発電所(ガローニャ発電所)について、2013年7月まで4年間の運転延長を認めた。さらに政府は2011年、原子力発電比率とプラントの運転年限は、安全規制当局の意見、CO2削減やエネルギー面でのニーズを考慮して適宜決めるとの方針を明らかにした。

続く2012年1月に発足したラホイ国民党保守政権は、前政権の消極的な運転期間延長容認の姿勢から、積極的な原子力維持に政策転換した。政府は2012年7月、規制当局の結論に従い、ガローニャ発電所について、2013年7月までとする前政権下での決定を取り消し、それ以降も運転延長可能とした。その後、運転延長に必要な改修費用に加えて、政府が財政政策の一環として新たな課税措置を原子力発電にも導入したため、発電コストが大幅に増大し、ガローニャ発電所の運転延長は経済的に見合わなくなった。そのため同発電所は、運転期間の延長を申請せずに、運転期限を迎えた2013年7月に正式に閉鎖された。

しかし政府は2014年2月、最近停止した原子力発電所の運転期間更新の許可申請を、停止指示後1年以内であれば認める新たな政令案を承認した。これを受けて、ガローニャ発電所は2014年5月、運転期限を2031年までの60年に延長する申請を政府に提出した。

5.電源開発状況

再エネも原子力も一定比率
スペインでは、 起伏の多い地形を利用して早くから水力開発が進み、 1972年まで水力が総発電設備の50%以上を占めた。 しかしその後、安い輸入燃料を使用する石油火力が水力を抜き、 1975年には火力中心の電源構成となった。

1970年代の石油危機以降は、エネルギー輸入依存の軽減策から、原子力や国内炭を使用する石炭火力の開発が促進された。しかし、1979年の米国TMI事故、1986年のウクライナのチェルノブイリ事故を受けて、原子力開発にストップがかかったことから、1990年代以降はガス火力(CCGT)や再エネの開発が進んだ。特に、前述のように、2000年代に入っての再エネ電源の増大は目覚ましく、2014年現在、発電電力量の39%を占めるに至った。しかし前述の買取制度の見直しにより、今後、再エネ電源開発は以前ほど進展しないことが予想される。

6. 電気事業体制

自由化前から電気事業を集約、送電を分離
1875年から始まったスペインの電気事業は、経済成長と共に発展し、1960年には電力会社数が私営を中心に約3,000社に達した。しかし1970年代には巨額の原子力投資、 石油から石炭への燃料転換、通貨の下落などによって電力会社の財務状況が悪化した。

そのため、政府は送電系統の所有・給電指令の権限を国へ移管する一方、電力会社の統合を進めた。1985年には、送電系統を所有し給電指令を行うスペイン電力系統会社(REDESA、後にREEに改名)が設立された。

一方、企業統合は、エンデサなど大手電力会社が、 財務危機にあった小規模電力会社を次々と買収して行き、1995年には4大グループ(エンデサ、イベルドローラ、ウニオン・フェノーサ、イドロカンタブリコ)に集約された。特にエンデサとイベルドローラの両グループを合わせてシェアは、発電で80%という寡占状態が生まれ、電気料金も上昇した。
自由化で5 大電力会社に集約
政府はこの寡占を解消し競争を促進するため、2000年、自由化政策の一環として、大手電力会社の発電容量の増加制限など市場集中化防止措置を実施した。その結果、欧州の大手電力会社がスペインに進出し、スペイン大手も外国企業の傘下に入る企業が続出した。イドロカンタブリコはポルトガル電力会社EDPの支配下に、またENELヴィエスゴ 社(イタリアENELがエンデサ所有の一部の発電・配電会社を買収してできた会社)はドイツE.ONに買収された。また最大手の一つであるエンデサも、イタリア ENELに買収された。ウニオン・フェノーサは、スペイン大手ガス会社ガス・ナチュラルに買収された。

この結果、スペインでは、最大手のエンデサ、イベルドローラの2社に、ガス・ナチュラル・フェノーサ、イドロカンブリコ、E.ON エスパーニャの3社を加えた5大グループが電気事業の中心を形成していった。

しかし、政府が再エネ買取コストを電気料金に転嫁することを認めず、電力会社が巨額の赤字を抱えるに至ったため、最近は外国企業がこれら電力会社を売却する動きが見られる。ENELは2014年11月、エンデサの21.92%の株式2億3,207万株を売り出した。またE.ONは2014年12月、オーストラリア資本の金融機関マッコーリーやクウェートの投資ファンドであるKIAの子会社に、E.ONエスパーニャ社を25億ユーロで売却することで合意した。これにより、マッコーリーがE.ON エスパーニャの60%を、KIA子会社が同40%を所有することとなり、E.ON エスパーニャの社名はヴィエスゴに変更された。

しかし、このような株式所有者の変更に係らず大手5社体制は変わっていない。これら大手5社は、それぞれ発電会社、配電会社、供給会社を持つ垂直統合型の持ち株会社であり、5社で発電市場(発電電力量ベース)の約7割、また小売市場(供給量ベース)では規制料金市場の約10割、自由市場の約9割を占める(小売市場については後述参照)。
系統運用
送電系統運用は、前述のスペイン電力系統運用会社(REE)が独占的に行っている。REEの資本は国有化後、80%が一般公開されており、大手電力会社からは基本的に所有分離されている。一方、配電は大手5社が中心に行っている。これら大手の配電会社は法的分離された子会社である。

7.電力自由化動向

2003 年から全面自由化
1990年代にEU大の電力市場自由化の動きが始まると、EU加盟国の中でも電気料金が比較的高かったスペインは競争力の改善を迫られ、1996年に誕生した国民党政府は市場開放や卸市場の導入などを実施した。

市場開放では、EUの第一次電力自由化指令(1997年制定)で義務付けられている自由化の開始時期よりも1年早い1998年から自由化範囲を段階的に拡大し、2003年1月には家庭用需要家を含めた全面自由化を実施した。

卸市場では、前述のように、外国企業によるスペイン企業の買収などの電力再編が行われるとともに、卸電力取引所の創設が実施された。この卸電力取引所では、売り手側として発電会社、電力輸入会社、外資系会社、また買い手側として規制料金市場向け供給会社、小売会社(市場価格で自由市場需要家に電力供給する会社)、電力輸出会社、自由市場需要家が参加し取引を行っている。
自由化後も規制料金を維持
一方、スペインの小売市場は、全面自由化後も、自由市場と並行して規制料金市場が存在することが特徴である。自由化市場では、供給者を選択する権利を行使する「自由化市場需要家」が、小売会社や卸市場、電力輸入会社から、卸市場価格や相対取引価格で電力を調達している。一方、規制市場では、自由化市場への参加を望まない需要家(「規制料金需要家」)が、政府によって規制料金で電力を供給するよう義務付けられた規制料金市場向け供給会社から、規制料金で電力供給を受けている。この規制料金市場需要家は軒数で56%(2013年現在)を占めている。

スペインが規制料金を維持する狙いは、自由化などによる料金面での影響が需要家に過度に及ぶことを防止することにある。実際、スペインの電気料金は、輸入ガスに依存する火力発電、さらには高い買取価格による大量の再エネ電源導入コストによってEU加盟国の中でも高い部類に属する。前述のように、政府は料金の高騰を抑制するため、料金への再エネコストの全面的な転嫁を認めておらず、これが電力会社の収支悪化に繋がっている。

電力供給体制

(2016 年1 月更新)

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