海外電力調査会

データ集

インドの電気事業

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■経済発展でエネルギー、電力需要が急増

インドは中国に次ぐ世界第二位の人口約12億人を抱え、また、世界第7位の国土面積(日本の約9倍)を誇る世界的な大国の一つです。このインドは近年の急速な経済発展に伴い、エネルギー、電力需要が急増しています。五カ年計画を策定する国家計画委員会は、2030年までに、2006年度の5倍から7倍の需要が見込まれるとしています。一方で、電源開発は、資金調達、燃料調達、用地取得の難しさ、関連手続きの煩雑さなどの問題から、大きく遅れています。ここ10年間の発電設備容量の年平均伸び率は5%の規模にとどまっており、経済の急成長に追いつかない状態です。2012年4月にスタートする第12次五カ年計画では、2017年までに1億kWの電源開発目標を打ち立てています。

■深刻な電力不足

しかし、電気を使うことが出来る村落は未だ全体の90%に過ぎません(2011年3月現在)。また、2008年度の一人当たり消費電力量は734kWhと、日本の約10分の1となっています。また、電力不足も深刻で、年間の発電電力量で10%、最大電力で13%もの電力が不足しており、停電は各地で頻発しています。この電力不足のうち、約半分はムンバイなど工業都市の集まる西部地域に集中しています。電力不足は、経済成長を阻害している最大の障害のひとつと言われています。2011年は、燃料となる石炭不足などの理由から、9月から10月にかけて、デリーやムンバイなどの大都市をはじめとした各地で、広範囲にわたって1日数時間にも及ぶ負荷制限が行われました。

■電源は石炭火力が中心

このインドで電力供給の中心となっているのは石炭火力です。
インドには石油や天然ガスも腑存しますが、それほど大規模なものではありません。最も豊富なのは石炭で、その埋蔵量は2,672億トンと世界全体の約10%を占め、米国、ロシア、中国に次いで第4位です。そのため、電力供給の70%は石炭火力がカバーしています。
しかし、灰分含有率が40%程度と高く品質は高くありません。また、近年の急速な経済発展によるエネルギー・電力の需要増に伴い、石油輸入の増大に加えて、石炭についても国内炭だけでは間に合わず、輸入に依存するようになっています。現在、石炭の自給率は約90%にまで低下していますが、輸入炭を輸送するための鉄道や港湾の整備が遅れており、石炭火力がフル稼動できない状況にあります。前述のように、2011年は石炭不足から全国各地で深刻な電力不足が発生しました。また、インドの輸入増が世界の石炭需給に与える影響も小さくありません。
今後も石炭火力がインドの電源の中心であることは変わりません。2030年度までのエネルギー政策を示した政府の「総合エネルギー政策」(2006年)では、2030年時点でも引き続き石炭を電源の主力とすることを明確にしています。

■石炭火力の大規模開発を計画

その石炭火力の開発では、現在、「ウルトラメガパワープロジェクト」(UMPP)と呼ばれる総容量400万kW級の大規模石炭火力発電所を全国に16箇所建設する計画が進行しています。これらのうち6件のプロジェクトは、事業者(デベロッパー)の選定が終了しています。入札は国際入札を実施しましたが、結果として落札したのはすべて国内企業となりました。また、土地取得、燃料輸送や環境認可など手続きの遅れに加えて、資金調達が難航しているケース等が多々あり、全体として進行は予定よりも大きく遅れています。グジャラート州のムンドラに立地するUMPP最初の発電機が2011年10月から運転を開始する予定でしたが、2012年以降に延期となっています。

■CO2削減:自主目標を設定

インドのCO2排出量は2008年時点で14.2億トンであり、世界全体の約5%を占めます。これは日本を抜いて世界第4位です。また2030年には現在の2.5倍以上に膨れ上がると予想されています。一方で、人口が非常に多いため、一人当たりのCO2排出量に換算すると1.3トンと、BRICs諸国の中で最も少なく、世界平均の4分の1の水準に留まっています。また、省エネルギー努力により、GDP当たりのCO2排出量で見ると、2008年時点では1990年時点の21%減となりました。
世界の気候変動対策の国際交渉の場では、中国とインドも相応の負担をすべきとする流れがありますが、これに対してインドは「共通だが差異ある責任」の原則を主張し続けてきました。しかし、気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)の開催間近の2009年12月、中国がGDP当たりの温室効果ガス削減目標を打ち出したのに続き、インドもGDP当たりの温室効果ガス排出量を2020年までに20〜25%(2005年比)削減するという「自主目標」を打ち出しました。また、「クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ」(APP)にも加盟しています。

■再生可能エネルギー発電開発も促進

また、政府は2008年に国家気候変動対策行動計画を策定しています。その中では、特に再生可能エネルギー開発の促進が挙げられています。州毎に、「再生可能エネルギー買取基準」(RPS)制度や、「固定買取価格制度」(FIT)、補助金制度、税制優遇措置などが設けられています。
2011年9月現在の再生可能エネルギー発電の設備容量(2.5万kW以下の小規模水力を含む)は2,016万kWで全体の10%を超えるまで伸びています。この再生可能エネルギー発電設備容量の70%を占めるのは風力です。インドは南部・西部を中心に風況がよく、発電設備容量では世界第5位となっています。また、全土で日照条件に恵まれており、2009年に策定された「国家太陽エネルギー計画」では、太陽光を現在の1.2万kWから2020年に2,000万kWに拡大する等の野心的目標に向けた様々な促進策が打ち出されました。
再生可能エネルギーの拡大、省エネルギーの促進に加えて、前述のように石炭をエネルギー・電力供給の主体とするインドでは、石炭火力の発電効率の改善が、CO2排出削減の観点から大きな課題です。現在、電力部門からのCO2排出量はインドの総排出量の約50%を占めていますが、石炭火力の熱効率は約30%に過ぎません。今後は単機容量の大型化、超臨界圧技術の導入などを積極的に進め、熱効率の改善に努める計画です。

■原子力:米印原子力協定締結で大規模開発も可能に

また、原子力発電開発も、電力の安定供給、CO2削減の観点から重要と考えられています。
インドは原子力開発に早い時期から取り組んで来ましたが、2011年11月現在、20基478万kWの原子力発電設備によって、総発電電力量の約3%を賄うに過ぎません。これはインドが非同盟政策に従い核拡散防止条約(NPT)に加盟しなかったため、これまで外国から必要な原子燃料などの供給を受けることができなかったことが大きく影響しています。
しかし、2008年10月に米国とインドとの間で原子力協定が締結されたことで状況は大きく変わりました。この協定は、インドの原子力施設が国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れることを条件に、米国が原子燃料や原子力発電技術をインドに提供することを可能とするものです。この米印協定に続き、フランス、ロシア、カザフスタン、イギリス、カナダなどの国々とも相次いで協定が締結され、これらの国々は、今後15年間で14兆円の市場規模に拡大すると言われるインドの原子力ビジネスへ本格参入しようとしています。こうした事情を背景に、インド政府は今後、原子力発電開発を拡大する方針です。原子力庁(DAE)が発表した「電力成長戦略」(2004年)では、2022年までに2,900万kW、2032年までに6,300万kW、2052年までに2億7,500万kWに拡大する計画でしたが、各国と原子力協定が締結され、軽水炉とウラン燃料を大量に輸入することが可能となったことから、DAEは2050年には最大6億5,000万kWまで拡大できると予想しています。
外国の炉を導入した具体的な建設計画も開始されています。ロシアのロスアトムは2008年、インド原子力省とクダンクラム・サイトに4基建設で合意しましたが、さらに他のサイトと合わせ最大12基建設する予定です。また、フランスのAREVAは2010年、インド原子力発電公社(NPCIL)とジャイタプール・サイトでEPR6基を建設することで合意しました。さらに米国は2つのサイトでWHがAP1000を6基、GEがABWRを6基建設する予定です。
福島第一発電所事故後も、政府の原子力推進方針は変わっていません。しかし、新規の立地地点では住民や原子力反対派の反対運動も発生しています。

■電気事業の中心の州電力部門は財政赤字

いずれにしても、インドの電力不足は、これらの大規模な発電設備の建設だけでは解決できません。電力不足を解消するためには、インドの電気事業の中心である州電力局(SEB)および州電力会社の事業効率を向上させ、送配電部門などへの設備投資を増加させるとともに、電力損失の低減など効率的な電力供給を行う必要があります。州の電力部門はインドの発電電力量の約50%、販売電力量の約90%を担いますが、財政と電力供給の両面で逼迫した状態にあります。大半の州の電力部門は採算がとれておらず、2008年度の主要20州の電力部門のコスト回収率は76%程度で、営業損失は約7,360億円にも上りました。こうした州の電力部門の赤字を補填するため、毎年、州政府から多額の補助金が拠出されるとともに、産業用需要家から農業・家庭用需要家への内部相互補助が行われています。

■赤字の原因は政策料金と送配電ロスの多さ

この州電力部門の財政を悪化させている主な原因は、政策料金と送配電ロスの多さです。インドでは政策的に産業用・工業用料金を高く設定する一方、農業・家庭用電気料金を非常に低く抑えています。この農業・家庭用電力は消費量で全体の約50%を占めますが、この政策料金によって、電力供給コストのうち、料金収入で回収できた割合は約80%に留まっています。電力省が設置した電力部門改革委員会は、現行の電気料金制度を改訂し、補助金を削減することを電力部門改革の目玉としています。
また、インドは送配電ロス率が25%と高く、そのうち盗電および料金不払いの占める割合が非常に大きいのが特徴です。この背景には、低圧線の長さが高圧線の長さに比較して長いため盗電が容易なこと、電気料金を支払えない低所得者が多いこと、モラルが低いこと、検針器の性能が低く不正使用されやすいこと、料金請求率が低いことなどがあります。
このため、電気事業への投資は回収リスクが大きく、民間からの投資を妨げる大きな要因ともなっています。

■電気法制定で電力部門を改革

この事態を改善するため、電力部門の改革が行われています。2003年には電気法が施行され、電力市場の自由化と電気事業再編の枠組みが規定されました。同法では、州電力局(SEB)の分割、水力発電を除く発電部門でのライセンス制の廃止、送電・配電系統へのオープンアクセス(系統の開放)の実施、内部相互補助の削減と撤廃、電力取引の許可、地方電化の促進、検針の徹底、盗電の取り締まり強化など、電力改革の枠組みが示されました。この法律に基づき、2005年には国家電力政策、2006年には電気料金政策、農村電化政策などが打ち出されています。

電力供給体制

インド

 

(2012年1月更新)

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